2008年02月28日

ホンダカーズ中央神奈川の相澤賢二会長の講演を拝聴するの巻

ホンダカーズ中央神奈川(旧:ホンダクリオ新神奈川)という自動車販売会社がある。
同社は、日本屈指の販売実績と顧客満足評価(by JDパワー社)を達成している優秀自動車販売会社だ。

昨日、私は、同社の代表取締役会長を務める相澤賢二さんの講演(「『顧客満足』企業のための人づくり」)を拝聴した。
相澤さんの講演は数年前に一度拝聴しているものの、昨日の講演から気づかされたことは少なくなかった。
やはり、明確かつ合理的な(=一本スジが通った)経営哲学を持ち、それを日々やり切っておられる経営者の話は含蓄が深く、何回聴いても気づきが得られるものだ。

相澤さんのお話から得られたのは、気づきだけではない。
それは、講演終了後の個別質問を通じてのことだが、持論に対する揺ぎ無い自信だ。

その持論とは、「小売業、飲食業、サービス業における究極の競合優位は"人"と"店(※webも含む)"である」、ということ。
私は、日々、この持論を胸に、企業の経営支援業務(経営コンサルティング)を遂行している
以下の質問に対する相澤さんの回答は、この持論に対する大きな自信となった。
【質問】
昨今の自動車販売不振の主原因は、車の作り手と売り手と買い手のいずれにあるとお考えになりますか?

【回答】
主原因は売り手にあると思う。
事実、弊社の2007年販売実績は、(このような市場状況において)対前年102%を達成している。
営業マン一人当たりの販売実績は、平均値の倍の8台だ。

自動車販売業界は、これまでお客さまの満足に無頓着過ぎた。
お客さまがクルマを買わないのは、そうした業界のやり方に飽きを感じているからではないか。

お客さまは、どれが自分に最も合うかクルマなのかについて相談をしに販売店へお越しになっている。
つまり、お客さまは「(店舗スタッフから)構われたがっている」、ということだ。

ブランドイメージが与える影響は少なからずあるにせよ、いずれのメーカーのクルマも高品質であり、モノ自体(=機能&性能)の差は殆ど無い。
差があるのは、「構われたがっている」お客さまに心地良いサービスを提供しているか否か、つまり、店舗スタッフが提供するサービスの品質だ。

人(=店舗スタッフ)が提供するサービスの品質を担保することは、経営者にとって難事だ。
でも、これをやり切れれば、現状は十分打破できる。

私は、相澤さんのお陰で、多くの気づきと揺ぎ無い自信を得ることができた。
相澤さんには、この場を借りて、改めてお礼を申し上げたい。(敬礼)

気づきの源となった講話の一部を、以下掲載する。
あなたさまにも何かしらの気づきを与えることができれば、望外の喜びだ。


私は、経営者として、会社のあり方を以下のように考えている。
1.会社は家族。社員は親兄弟。
2.教育は、真剣に愛して、真剣に叱ること
3.会社は社員のもの。経理は公開する。
2の具体行動としては、私が社員宛に本人の良い所だけを書いた年賀状(→家族も読む)を出すことが挙げられる。
3の具体行動としては、毎日10時に前日の日時決算が完了し、全社員が事務所内で閲覧できることが挙げられる。

我が社は、社員の幸福、お客さまの満足、お取引先の繁栄を目的としている。

我が社は、どんなことでも、翌日にファックスで全社員に周知させることができる。

営業マンは、クルマを売ると、販売奨励金など追加給与が支給される。
が、経理やサービスを担当している店舗の女子スタッフは、担当業務の特性上、そうしたものが支給されない。
我が社は、クルマを買ってくださったお客さまのオイル交換を1,000円で引き受けている。
この金額は赤字なのだが、さらにその中の500円をストックし、まとまったら店舗の女子スタッフにボーナスとして支給している。
彼女たちは、その時とてもニコニコしている。

仕事と作業は別ものだ。
作業を仕事にするには、お客さまのこと、社員のこと、をトコトン考えるのが有効だ。
例えば、お客さまとの商談も、「このお客さまの安心安全なカーライフのお手伝いをしなければ!」と考えれば仕事になるし、さもなければ、作業に成り下がる。

マニュアルの類は一切無い。
先輩を見習えばいい。
我が社では、新入社員以外は全員がマニュアルだ。

拠点独立採算制度を実施している。
店長は経営者、工場長は共同経営者の位置づけだ。
ちなみに、本社は拠点(店舗)応援者の位置づけだ。
店長が書き入れ時の土日に事情があって休む際は、本社の役員やサービス課長が店長の代わりを務める。

「整理整頓」と書いた紙を壁に貼っている会社がある。
それだけでは、経営者の怠慢だ。
我が社は、そうした場合、「このままだと人員整理するよ!(笑)」と言って、社員に意味をちゃんと教えている。

トイレの掃除は、店長が素手とスポンジでやる。

社員は、全員早出して(※会社は早出手当てを支給)、店の周り半径2キロを掃除する。
社員が掃除している風景を見て、「この店はアフターサービスがいい」とか「この店は信頼できる」とお感じになり、クルマを買ってくださるお客さまは少なくない。

社員の中に、掃除に出かけたままいつになっても帰社しない者が居た。
事情を訊いてみると、「○○(※ファミリーレストラン名)の駐車場が汚かったので、ついでに掃除してきました」と返答された。
「バカもの!お前はどこの社員だ!」と叱ったが、このスタンスでいいと思っている。
掃除をやることから得られる気づきは多い。

女性社員は、花嫁に出せるよう躾をしている。
店舗の二階にお茶室を作り、先生を招き、礼儀作法と女性としてのたしなみ一式を学ばせている。
彼女たちは、30分もあれば、季節のテーブルクロスを作ることができる。

人は、人を指導しないと成長しない。
だから、我が社は、社員全員に部下が持てるよう努めている。

お客さまにサービスを提供する時は、スピードが欠かせない。
だから、女性は、ナースサンダルを履いている。
ヒールのある靴は動きにくく、また、音がするのでダメ。
一時、スニーカーも試してみたが、服とのマッチングが悪く、やめた。

社員は、身なりをキチンとさせている。
ロン毛、茶髪は禁止している。
というのも、お客さまとモノを売る人間の間には、れっきとした壁があるからだ。
お客さまは、たとえ自分がどんな身なりをしていても、営業マンにはきちんとした身なりを求めているものだ。
過去、髪の毛を紫色に染めているお客さまから、「この会社の社員は髪の毛が黒くていいね」と言われ、つくづくそう思った。

当社の親切とは、「お客さまが困らないようにすること」である。
困ってからの対応は、親切ではない。

お客さまは、「営業マンから売り込まれること」を望んでいない。
商談は相談。
お客さまに「売る」のではなく、お客さまの「相談」を受ける。
お客さまに気持ち良くしゃべっていただくことが欠かせない。

小売業は、女性社員の努力で決まる。
好例は、家族連れの商談。
奥さまは、必ず女性社員を念入りに見、買うべきか否か店を品定めしている。

採用では、知識よりも人柄を、性能(習得技術)よりも性格を重視している。
知識や技術は、入社後いくらでも習得することができる。
当社は、入社することは簡単だが、卒業するのは難しい。(笑)

お客さまは、社員を5分見る。
そして、それでいい人か否かを判断する。
お客さまは、その社員がいい人だと思わなければ、車を買わない。
だから、採用の面接は5分。

クレームをつけられた時は、すぐにすっ飛んでいって、真剣に詫びる。
100万円のクルマの持ち主であるお客さまにとって、1万円の故障は100万円の故障と同じだ。
だから、1万円ではなく、修理金額100万円の故障と思いながら詫びなければならない。
これができないと、お客さまは「見下げられた感(落差感)」を抱く。
そして、クレームがトラブルに変わる。
クレームはモノが作り、トラブルはヒトが作る。
モノよりもヒトを売らなくてはならない。

電化製品を買うことになった。
近所に電気屋さんが無くなってしまったので、大型量販店へ行った。
お目当ての品は買ったのだが、販売担当者は、最後まで笑顔も「ありがとうございます」も無かった。
この店は極端だとしても、最近の小売業は笑顔が無い。
お客さまにとって、笑顔に優るプレゼントは無い。

○○店を建てた時、資金繰りが厳しかった。
自動ドアではなく、手動ドアを採用した。
その店の女子社員は、お客さまがドアに近づくと、かけよって、ドアを開ける。
そもそも、お客さまは、人(店舗スタッフ)に構われることを望み、販売店へ訪れる。
だから、社員のそうした行為から自分が歓迎されていると感じ、喜ぶ。
自動ドアは、社員向けの合理的ツールだ。
できるだけ早い内に、いずれの店もドアを手動ドアにする予定だ。


aizawasan






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この記事へのコメント
クリオ新神奈川の社長さん。ここでいつか取り上げられると思っておりました。笑
著書は何度か読んだことがあります。なかなか参考になる事が多数取り上げられておりました。

そうそう、行きつけのディーラーは合併後に不穏なオーラが漂っております。給与カットが激しく営業マン&サービス担当者の士気が非常に危険な状態です。汗
これから買い換えをするっていうのに、どうしましょう状態です。

やれる人間は、できることは自分でやる。それがいろんな意味で最善の選択になりそうです。やれない人間はどうすればいいのでしょうか。mixiのコミュニティーももう少し考えて活性化しなきゃいけませんね。
Posted by ヤッシー at 2008年02月28日 22:20
ヤッシーさん

> ここでいつか取り上げられると思っておりました。笑
なんと、本記事はヤッシーさんにとって予想内だったのですね!
恐縮です。(礼・笑)

> これから買い換えをするっていうのに、どうしましょう状態です。
行きつけの販売会社は統合(合併?)の悪いパターンに突入しているようですね。
ユーザー&見込客であるヤッシーさんのご心中、拝察申し上げます。(礼)

> mixiのコミュニティーももう少し考えて活性化しなきゃいけませんね。
全くもって同意です。
何卒ご支援のほどよろしくお願い申し上げます。(礼)
Posted by at 2008年02月28日 22:54
堀さん、こんばんは。
こちらには初めてコメントします。

この会長の事については、
あのラーメン屋にご一緒した際
なかなか動かない行列に凍えている時に
お話をしてくださいましたね。

憶えております。

いやぁ、すばらしい。
たぶんここに働く人は、楽ではないでしょうけど、
充実感あふれる日々を送っていらっしゃるような気がします。

我が社は、また社長が交代するようです。
今度は、某自動車メーカーからの天下りではなく、
なんと銀行出身です。

どうなることやら・・・・。

Posted by 平八郎 at 2008年02月29日 22:31
平八郎さん

こんにちは、堀です。
ブログへ初めてコメントいただき感謝、感激です!

> 憶えております。
お話しした背景まで覚えていていただき、これまた感謝、感激です!(笑)

> たぶんここに働く人は、楽ではないでしょうけど、
> 充実感あふれる日々を送っていらっしゃるような気がします。
これ、ビンゴです。
平八郎さん、さすがです!

同社では、一旦退職したものの再入社なさる方が結構居られるようです。
ちなみに、現在の同社社長もそのお一人のようですよ。

> なんと銀行出身です。
あれまあ。
私の記憶では、銀行出身者さんが貴社社長になるのは初めてかと。
貴社が本当の意味でのリストラ(事業の再構築)を果たされるよう祈念しております。(礼)
Posted by at 2008年03月01日 07:34