2009年05月28日

「偽善エコロジー―『環境生活』が地球を破壊する(著:武田邦彦)」を読むの巻

私の母は、モノを大事する人だった。
炊飯器のご飯を最後によそう時は、数十分前に電源を切り、内釜の米粒を綺麗にはらっていた。
贈り物を頂戴した時は、包み紙や箱を取り置き、贈り物の包装に再利用していた。
出来合いのお惣菜を買った時は、入れ物を取り置き、出先で捨てられる簡易弁当箱として再利用していた。
私が学生で新しい靴下をおろす時は、予めつま先と踵に当て布を当ててくれた。

なぜ、母は、モノを大事にするようになったのか
残念ながら、今となってはわからない。
が、第二次世界大戦が始まる五年前に農家に生まれ、食べ物を創る大変さや「食べ物が食べられる」&「モノが使える」ありがたさを幼い時分に肌で感じたことは、少なからず効いているだろう。

私は、母の血を受け継いでいる。
さすがに、靴下に当て布を当てることはないが、数十分前に電源を切って炊飯器の内釜をはらうことは、家で夕食を取る時の日常事だ。(笑)

ただ、母から受け継いだ私の血は、妻にはあまり好まれていない。
妻は、該当する思考&行動習慣を、概して「ケチ」と一笑する。(苦笑)

かくいう妻の考えは、矛盾している。
昨年、「Around40/注文の多いオンナたち」というテレビドラマがあった。

Around40~注文の多いオンナたち~DVD-BOX
天海祐希
ポニーキャニオン
2008-10-01


妻は、準主役の藤木直人さんが好きでこのドラマを欠かさず見ていたのだが、イケメン藤木さん演じる岡村恵太朗が「エコ」に異常執着するのは「非ケチ」だという。(笑)

自分と妻の考えを客観してわかることがある。
「モノを大事にすること」と「ケチ」と「エコ」は、各々紙一重であり、主体や文脈によって好都合に解釈/活用されている、ということだ。

「モノを大事にすること」と「ケチ」と「エコ」は、各々手段としては社会的にコンセンサスが形成されているものの、目的としては形成されていない。
「なぜ、モノは大事にすべきなのか」、「なぜ、ケチであるべきなのか」、「なぜ、エコを志向すべきなのか」を正確かつ合理的に認識している日本人は、僅少だ。

目的を正確かつ合理的に認識しないまま手段のみ妄信/実行することは、無意味であり、かつ、時として現状を危うくするばかりか、取り返しがつかなくなる。
私は、親友のIさんが推奨してくれた「偽善エコロジー―『環境生活』が地球を破壊する(著:武田邦彦)」を読み、このことを再認識した。
「モノを大事にする」ということは、モノが有する本来価値を満喫することであり、モノの源を恵んでくれた地球に敬意/謝意/返報意向を表すことであり、モノを創造してくれた他者に敬意/謝意/返報意向を表すことであり、モノが使える幸運に謝意を表すことであり、地球と他者のお陰で生きている奇跡を自覚することだ。
「モノを大事にする」のは、地球で生を受け、先人と他者の偉業を基盤に業が成せる好循環と感謝の心を絶やさないためだ。

私たちが今モノを大事にしなくても、私たちや当面の後世は物質的には困らない。
だが、私たちが今「モノを大事にする」目的を正確かつ合理的に認識しないと、いかにモノをあてがおうとも、私たちの心はいよいよ病み、後世は物心両面から困り果てるに違いない。



★強く印象に残った箇所

かつてお茶碗職人の人たちは、それほどお金持ちではありませんでした。多くは中小企業で自分の家に小さな工場を持ち、そこで細々とお茶碗を作っていました。そして自分が作ったお茶碗を買いにくる人がいると、新聞紙にくるんで「大切に使ってください」と言って差し出します。買ったほうも大した金額でなくても、そのお茶碗を大事に使ったものです。
物を大切にする心は、高いお金で買ったから大事に使うとか、安いからすぐ捨てるというのではなく、高くても安くても自分が使っている生活をするものを、作ってくれた方への感謝、自然からの恵みに感謝して大事に使うことなのです。
お茶碗を作る職人は、お金持ちでも、高い教育を受けているとも限りませんが、それでも、販売したお茶碗を一回一回、割ってリサイクルに出してくれれば、売れる量が増えて裕福な生活ができることはわかっています。でも、リサイクルに出してくださいという代わりに、大切に使ってくださいと言って売ります。人間の大切なこと、もの作りの魂、自らの職業への忠誠心――そのようなものが、儲けより上位にあったのです。
人間の心は時に試されることがあります。本来は売ってはいけないものを売ろうとするとき、お客さんに出そうとしていた料理に少し汚いものがついたとき・・・そんなとき、誰も見ていないのですから、そのまま出してもかまわないのですが、そこでその人の魂が試されます。「お金のために私は生きているのではない。自分が作ったお茶碗だ、それがどんなに安価でも、大切に使ってほしい。自分が作ったものは自分の子供のようなものだから」などと考えられるかどうかです。
(P191)

私はペットボトルを買うと、同じものを何回か使いますが、それはペットボトルがもったいないからではありません。石油によって豊かな生活をしているのですから、石油に対して感謝する心、日本のメーカーがペットボトルのようにすばらしい容器を作ってくれ、そのために、どこでもお茶が飲める快適な生活をさせてくれる感謝の心から何回も使うのです。その結果、ゴミを減らすことにつながるのかもしれませんが、そうした結果より、ものに感謝する心が先です。
(P194)

ペットボトルにしても、紙にしても、家電リサイクルにしても、なぜ国が「お金がかかる方法」を選択するかというと、そのお金は国が出すのではなく、国民が税金として出すからです。そしてお金がかかればかかるほど、そのお金は、役人の知り合いの人や役人自身の天下り団体に行くので望ましいのです。国民は、家電リサイクルで、少しでも安い方法を選んでほしいのですが、国はできるだけ高い方法がよい、業界も同じということです。
環境問題は、見かけが善意や環境を守るといういかにも道義的なことなので、みんなが反対しにくいところを突いて、今まで不合理な方法がとられてきました。商売なら損をするのでこんな方法はとらないのですが、何しろ税金を徴収すればよいのですから簡単です。何とかして科学のことがわからない人をだませばよいとなるのです。そんなことを考えず、まじめに廃家電を処理するのがよいと私は思います。
(P200)

要は、心が満足すれば人間はそれほど多くの物を必要としませんが、心が貧弱であれば何とかして心の隙間を物で埋めようとします。物が増えるというのは、現代の工業生産が大量生産を目指しているところもありますが、現代社会が人間的ではなく、生き甲斐を見つけにくく、心が満足しないことが原因していると私は感じています。
(P221)

もう一つ、3R(リデュース、リユース、リサイクル)がイヤなのは、物に目がいっているからです。リユースする、リサイクルするというのは、目の前にある物が気になって仕方ないからです。新しい物を買いたい、でも何となく環境も気になる、それならリサイクルをすると言えば、心が軽くなるから新しい物を買うことができる・・・そういう心の動きになるのです。
「もったいない」という言葉があります。最近のように多くの人が物にとりつかれている社会では、物を節約するためにもったいないと子供に教えることになりますが、私が母から教えてもらった「もったいない」という言葉には、「せっかくお百姓さんが苦労してお米を作ってくださったのだから、残してはいけない」という感謝の気持ちであって、自分が生かされているのは自分を支えてくれる多くの人がいるからだ、という心kら出た言葉でした。決して、ご飯粒一つを残すと、ゴミが増える、などということではなかったと思っています。
「もったいない」は感謝の気持ちであり、その結果として「物を節約する」ことができますが、それはあくまでも結果であって、動機ではありません。
(P222)

愛用品を多く使う生活は、自分の周りにあるものが馴染んでいますから、ゆったりとした気分で生活をすることができます。その結果、物をあまり買わなくなるので、ゴミも減るのです。ゴミを減らすことを目的として生活をしているのではなく、心を満足させた結果、物が減るので、ゴミが出ない生活になります。
(P224)

すべての生活のことを、物を中心として考えていたこれまでを、心を中心に据えると、案外、物を買うことが少なくなります。だからゴミを減らそうとか分別しなければならないとか、二酸化炭素を減らそうなどといっさい考えなくても大丈夫です。
(P226)





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文系騙して印税ウハウハ
http://www.petbottle-rec.gr.jp/syoseki/index.html
http://homepage2.nifty.com/koshi-net/other/kaihou/73-2.htm
http://www.rakkousha.co.jp/books/ka_02.html
http://www.cneas.tohoku.ac.jp/labs/china/asuka/
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%AD%A6%E7%94%B0%E9%82%A6%E5%BD%A6

もう何から何までウソ
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1416150624
http://oshiete1.goo.ne.jp/qa3015591.html

そして・・・!!!
週刊文春2月12日号
「マイ箸は不要」「ペットボトルは燃やせ」のウソ 椎名 玲・吉中由紀
「エコ批判」武田教授に公開質問状

Posted by お前が騙されてんだよ at 2009年05月29日 11:33
お前が騙されてんだよさん

こんにちは、堀です。
初コメントを投稿いただきありがとうございます。

関連情報をご提供いただきありがとうございます。
参考にさせていただきます。
Posted by 堀 公夫 at 2009年05月29日 16:08