2010年07月20日

「音楽のチカラ/青春の言葉 風街の歌 作詞家松本隆の40年〜」を見て、松本隆さんの詞が時代を問わず多くの人の心をひきつける理由が改めてわかった気がしたの巻

一昨日、私は、作詞家の松本隆さんを取り上げた特番「音楽のチカラ/青春の言葉 風街の歌 作詞家松本隆の40年〜」の再々放送の録画を見ました。
5月の本放送、ならびに、6月の再放送をいずれも録画し損ねていたことが手伝い、とても真剣に見ました。(笑)

最も印象に残ったのは、「松本さんは人の心をひきつけることがとてつもなく巧い」ということです。
松本さんは松田聖子さんのヒット曲を松任谷由美さんと多数創られましたが、なんとそれは、松本さんが、松任谷さんの心をひきつけた成果でした。
私は、松任谷さんが呉田軽穂というペンネームを使って松田聖子さんの曲を書いておられたのは知っていましたが、このことはつゆも知らず、驚愕→感心しました。

松本さんは、多分というか間違いなく、“スーパー人たらし”(笑)でいらっしゃいます。
普遍の真理の語り部であることを心底希求し、他者が、今何を心の奥底で求めていて、自分が何を与えたら食いついてくれるかを絶えず考えている。
そんな松本さんが、“スーパー”人たらし“でいらっしゃるのは、当然かつ自然です。

私は、松本さんの詞が時代を問わず多くの人の心をひきつける理由が改めてわかった気がしました。
ついては、以下備忘録いたします。
あなたさまにもご参考になれば幸いです。

<1>「吹ける」ほど、自分の(潜在)能力に自信を持つ。
<2>アジェンダ・セッティングを対象顧客にとって非予定調和的に行う。
<3>時代の流れと対象顧客の本音/真のニーズを正しく理解する。
<4>普遍の真理(人間の本質)を熟知し、いつでも活用できる(→人たらしになれる)。
<5>普遍の真理をテーマにする。
<6>自己ベストを不断に尽くす&上げていく。
<7>要充電を感じた時は、潔く立ち止まり、キッチリ充電する。




<1>「吹ける」ほど、自分の(潜在)能力に自信を持つ。

【松任谷由美さん】
歌謡曲の一番最初はアグネス・チャン?

【松本さん】
そうだね。
「歌謡曲の詞なんて、いつでも書けるよ」って言ったら、「そんな軽々しく口をきくな」って怒られてさ。
「じゃ、やってみようじゃん」って言って。

松本さんが初めて歌謡曲の詞を書いたのは、アグネス・チャンさんの「ポケットいっぱいの秘密」でした。


アグネス・チャン_ポケットいっぱいの秘密_紅白 投稿者 azukitoast

アグネス・チャン ベストアルバム
アグネス・チャン
渡辺音楽出版株式会社
2006-12-10


松本さんは、翌年、太田裕美さんの「木綿のハンカチーフ」の詞を書き、作詞家として一躍トップに躍り出ます。


太田裕美 / 木綿のハンカチーフ--Full Ver. 投稿者 jrapaka2

DREAM PRICE 1000 太田裕美 木綿のハンカチーフ
太田裕美
ソニー・ミュージックハウス
2001-10-11


「歌謡曲の詞なんて、いつでも書けるよ」。
松本さんが、このように、他者からすると「吹いている」ように受け取れる言葉をつぶやかれなかったら、また、そうした言葉をつぶやけるほど自分の(潜在)能力に自信をお持ちでなかったら、「ポケットいっぱいの秘密」と「木綿のハンカチーフ」が今日動画サイトにアップされることは無かったのはもちろん、今日の松本さんも無かったと思います。


<2>アジェンダ・セッティングを対象顧客にとって非予定調和的に行う。

もうね、「木綿のハンカチーフ」ってタイトルだけで99%(イケルと思った)。
当時、(ハンカチの原材料は)ナイロンとかポリエステル、化学繊維の時代だったから、「いや、自然が一番だよ」ってちょっと言いたいなと思って、わざと木綿という死語を使って・・・

お客さまは、曲のタイトルから曲調や詞を想像し、期待値が一定を超えると、“その”曲を聞きたいと思うようになります。
曲のタイトルを決めるのは、「アジェンダ・セッティング」です。
アジェンダ・セッティングにおいて重要かつ不可欠なのは、対象顧客のアテンションをひくことです。
アジェンダ・セッティングを対象顧客にとって非予定調和的に行うのは、促した違和感を良い方へ収束させる根拠/自信がある限り、有効なアプローチです。


<3>時代の流れと対象顧客の本音/真のニーズを正しく理解する。

テクニックは要らないの。
あるに越したことはないけど、そんなもんじゃ詞つくれないから。
詞にとって大事なのは、何が表現したいか、その時の時代に、何が足りなくて、何にみんな飢えているか、何にみんな喉が渇いているか。
で、そういうものを、書いてあげればいいだけのこと。

昔の歌謡曲って、どうしても平面的なのね。
絵に描いたように、男と女で。
何とか立体にしたいなと、3Dに。(笑)
泣いてる後に笑ったり、純情なんだけど計算もしてるし。
そういう、割と人間って複雑じゃない。

〔ナレーション〕
「赤いスイートピー」。
松本さんと松任谷さんのコンビが聖子さんのために初めて作った歌です。
若い女性がどんどん奔放になっていくと言われた80年代初頭。
松本さんは、敢えてピュアな恋愛を描き、女性たちから大きな支持を得ます。


松田聖子 赤いスイートピー 投稿者 blackknights



時代と逆行しているのね。
当時は、もっと「進んでる」って言われてたのね。
だけど、僕は、そんなことなくて、クラスの大半の女の子は保守的なんじゃないかな、と思って。
「半年過ぎても(あなたって)手も握らない」って書いたしね。
同時に、恋人のことを「気は小さいけれどまあいいか」と思っているわけだよね。
女性の本質がそこにあるんだよね、多分。

「オトコは一路東京を目指し、オンナは地元で結婚する」という時代に、松本さんは、「木綿のハンカチーフ」で、就職で地方から東京に出て変わってしまうオトコと、地方に残って彼の帰りを待つオンナの気持ち(のすれ違い)と別れを表しました。
また、「オンナはオトコよりも進んでる」と言われた時代に、松本さんは、「赤いスイートピー」で、「やっぱりあなた(=オトコ)について行きたい!」というオンナの本音を表しました。
「木綿のハンカチーフ」と「赤いスイートピー」がヒットしたのは、松本さんが、当時の時代の流れと対象顧客の本音/真のニーズを正しく理解なさっていたことが大きいと思います。


<4>普遍の真理(人間の本質)を熟知し、いつでも活用できる(→人たらしになれる)

〔ナレーション〕
作詞だけでなく、作曲家の選定など、(松田)聖子さんのプロデューサー的役割を果たしていた松本さんは、1982年、松任谷由美さんを作曲家として自ら誘います。

【松任谷さん】
聖子ちゃんの作曲に誘われた時に、「ライバルに曲書かない?」・・・

【松本さん】
そんなこと言った?(笑)

【松任谷さん】
そうよ。(笑)

【松本さん】
もうね、「ディレクターが電話しても断られるから、松本さんからちょっとあの何とか一つ頼んでみて欲しい」って言って、電話するとさ、最初すごい冷たく・・・

【松任谷さん】
そうだっけ。

【松本さん】
「やりたくない」とか色んなこと言うの一時間くらいかけて説得して・・・

〔ナレーション〕
松任谷さんは呉田軽穂というペンネームと使うことで、松本さんの依頼を引き受けます。

【松任谷さん】
どうしてアレだったんですか。
私にご依頼くださったんですか?

【松本さん】
新しい女の子の像を自分の中で作ろうとしてて、それまでの歌謡曲の女の子っていうのはさ、ちょっと時代ともうズレてるかなって思ってさ。
僕が書いたのは男の理想なんだよね。
多分ね。
しとやかなんだけど、芯が強いっていう。
それはユーミンの力が必要だったんだよ、きっと。

【松任谷さん】
光栄ですね。
それは、名前を変えて書いたとしても、音楽の中にあるグルーブみたいなものが、松本さんが考えているそれまでのアイドル像、女の子像とは違うものを運んでくると踏んだのかしら?

【松本さん】
要するにさ、僕は別に、ユーミンっていう名前が欲しいわけじゃなくて、ユーミンの才能が欲しいわけだから。
で、名前はどっちでもいいわけ。

松本さんが松田聖子さんの曲を松任谷さんに初めて依頼した時、松任谷さんはシンガーソングライターとして頂点に居られました。
そんな松任谷さんに、松本さんは、「ライバルに曲書かない?」とおっしゃいました。
そして、今、松任谷さんに、当時のことを改めて、「僕は別に、ユーミンっていう名前が欲しいわけじゃなくて、ユーミンの才能が欲しいわけだから」とおっしゃいました。
「富や名声を収めた人が次に何を欲し、自分が何を与えれば受けとめてもらえるか」。
松本さんは、こうした普遍の真理(人間の本質)を熟知し、いつでも活用できるのだと思います。


<5>普遍の真理をテーマにする。

僕の詞は時を越えます。
全然平気。
なんかね、作っている時からいわれない自信があるんですよ。
今40年耐えたわけじゃないですか。
あとどれくらい耐えられるかね。
それは、歴史が答えを出すのは、僕が生きてない頃。(笑)
で、その時忘れられていたら、それはそれでしょうがないし・・・。
まあ、とりあえず今僕は臆病だから、未来のことも一生懸命考えるんだけど、まあ多分、未来に足らないものって何だろうなって。

松本さんの詞が「時代を超える」のは、普遍の真理をテーマになさっているからです。
私は、松田聖子さんの「制服」を聞くと、いつも、「失うときはじめてまぶしかった時を知る」というサビメロに感動します。


松田聖子 / 制服--Acoustic Ver. 投稿者 jrapaka2

Touch Me,Seiko
松田聖子
ソニーレコード
1987-11-21



<6>自己ベストを不断に尽くす&上げていく。

【堂本光一(KinKi Kids)さん】
まあ一般的には僕らはアイドルとして見られている方も多いと思うんですけども、そういう人に詞を書くにあたって、意識はされるものですか?

【松本さん】
少しはするけどね。
一応依頼は来るわけで、依頼する方は売れて欲しいわけだから。
でも、なんか、やっぱり、「売れればいい」っていうだけのものじゃないよね。
なんか、やっぱり、生きた証くらい残したい、みたいなさ。
君たちも残したいだろうし、僕も残したいから。
そしたら、やっぱり、「スワンソング」ってbeing(?)の極致だと思う。
鳥が死ぬ間際って、やっぱり美しいんだと思う。
一番綺麗でね、綺麗な声で鳴くっていう。
人間って一番大事なのはそういう時だよね
「終わりよければ全て良し」で、その時に後悔したくないじゃない。
あの曲は、僕のやりたいことのある意味極致だからさ。
最も美しいものをやってみたかったから。
っていうかさ、俺くらいの年になると、もう、何て言うんだろう、惰性じゃないわけ。
一個一個、「これが最後でいい」みたいなさ。
もう何かさ、同世代が二人この三年位でさ、車椅子になっちゃったわけ。
そういうことなわけさ、人間って。
そうすると、どれが最後でもいいように、自分のプライドをそこに注ぎ込まないといけない。
どれが遺作になっても構わないっていう。


【松任谷さん】
過去の自分が妬ましい時あるよね、ずっと続けていると。(笑)

【松本さん】
最近ひどいね。
二週間くらい平気で遅れるから。

【松任谷さん】
私もそうなんですけど。
自分のハードルを高くしているからかしら。
それを越えないと、やった気がしない。

【松本さん】
やっぱさ、自分の中で合格点があるじゃない。
それ守るよね。
そうすると、そのためには、なんかさ、二時間で書けてたものがさ、二週間くらいかかったりするよね。
でも、深さは違うと思う。
やっぱり、それは年齢分、深みとかさ、年輪が言葉に出るからさ。
だから、それはそれでいいんじゃない。

松本さんは、過去の栄光につゆもすがらず、目の前の仕事に現時点での自己ベストを尽くされます。
しかも、松本さんは、自己ベストを年々上げていかれます。
松本さんが、時代を問わず、多くの人の心をひきつける詞を書けるのは、仕事に対するこうしたご姿勢の賜物だと思います。


<7>要充電を感じた時は、潔く立ち止まり、キッチリ充電する。

〔ナレーション〕
1980年代、ナンバーワンヒットメーカーとして走り続けた松本さん。
90年代に入ると、突然表舞台から姿を消します。
ヒットチャートの戦争から一度身を引き、自分を見つめなおすためでした。

自分では「没落貴族」って言ってたけど。(笑)
毎日、歌舞伎見たり、能見たり、オペラ見たりっていう。
その時自分が足りないと思ってるものができちゃったんです。
それを補充しようっていう。
それが古典だったのかな。
「自分に足りないのは古典だな」って思って。

自己ベストを不断に尽くす&上げていくには、充電が不可欠です。
要充電を感じた時に充電を厭わないこと、潔く立ち止まれることが、松本さんの40年に渡る作詞家人生を作り上げたのだと思います。



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