2014年04月25日

セブン&アイ・ホールディングスの鈴木敏文会長のニュース番組生出演を見、近所のヨーカドーの商売替えに合点すると共に、再認識、再確信するの巻

私は、オヤジだが、ネットに加え実店舗でもイトーヨーカドーを比較的よく利用し、「ヨーカドーウォッチャー」を自負している。(笑)
その一番の理由は、やはり「近所&生活道路沿いに在るから」だが、「小売の勉強になる(参考情報に富んでいる)から」というのも甲乙付け難い。(笑)


月初、ふと出先でテレビに目をやると、珍しくセブン&アイ・ホールディングスの鈴木敏文会長がニュース番組に生出演されていた(4月1日放送分「BSニュース 日経プラス10」)。
鈴木会長の出演は、番組テーマの「本日施行の消費増税に企業はどう対処すべきか?」との問いに応える格好だった。
鈴木会長はこの問いに以下回答され、私はヨーカドーウォッチャーとして聞き入ってしまった。(笑)

〔1〕増税初日の自社(セブン&アイ・グループ)の売上は、やはり落ちた。しかし、落ち込みの度合いは、前回5%に増税した時と同レベルかつ想定の範囲内だった。これは他の企業も同様だろう。

〔2〕とはいえ、我々小売企業はタカをくくってはいけない。というのも、消費者心理は非常に繊細かつ移ろい易いからだ。3%の増税が消費者心理、ひいては、消費行動に与える負のインパクトは小さくない。

〔3〕我々が絶対に二の轍を踏んではいけないのは前回の時のように、売上減少の解決に短絡的に低価格路線を主導し、デフレ・スパイラルの先駆けとなること。これを繰り返しては、当座の試金石である2ヶ月後の6月の反転が危ういのは勿論、日本経済がまたダメになる。

〔4〕前回我々が主導した低価格路線により消費者は賢くなった。もはや、「安かろう、悪かろう」は通じない。消費者の内、「とにかく安ければ買う」層は減少し、「価値が高く、かつ、(金額換算)評価できれば、相応の高価格(=追加料金)を支払う」層が増加した。

〔5〕そもそも小売業は変化対応業だ。セブン&アイ・グループはこの消費者の変化に、主に二つのソリューションを展開して対応したい。

〔6〕その一つはセブンゴールド」に代表される、「高価値妥当高価格商品」の製販を推進すること。これにより、「価値が高く、かつ、評価できれば、相応の高価格を支払う」層と需要に対応する。

〔7〕もう一つは、デパートからコンビニに至るグループの実店舗、インフラを網羅的、横断的に活用し、リアルとネットの垣根を無くす「オムニチャネル」を構築すること。これにより、「商品の選択、購入はネットでしっかり比較、調査して行い、受取は近所のセブン-イレブンで済ませる」といった、商品の選択、購入、受取の各フェーズに関する多様な消費者ニーズに対応する。

※上記内容は全て意訳&私の理解

先ず、鈴木会長の回答で合点したのは、よく利用する近所のヨーカドーが、昨年来大きく商売替えをしたことだ。
たしかに、我々消費者は、企業の仁義無き低価格戦争(笑)の果て、「安物買いの銭失い」を幾度も経験し、価格と価値をシビアに紐付けるようになった。
ファーストリテイリングが先駆けた「アンダー1,000円ジーンズ」も、その根源価値はニュース性とサプライズ性だと理解したし、そもそも日本には買えるモノ、選択肢が余りまくっている。
そこで、このヨーカドーが卵の98円の叩き売り(笑)、もとい、所謂「特売/セール」をやめ、売り場の要所要所に以前より多くかつ見栄え良く試食展示コーナーを設け、「春の卵料理特集」といったタイムリーな企画提案(クロスマーチャンダイジング)とセブンゴールド」に代表される「高価値妥当高価格商品」の製販に精を出すよう商売を替えたのは、モノ余りの中、賢明に進化した消費者への小売店舗の対応として合理的だ。

そして、鈴木会長の回答で再認識したのは、トップの大義と決断が現場のモチベーションを大きく担保することだ。

たしかに、近所のヨーカドーのこの商売替えは合理的だ。
が、それはマクロ的、全社的(本部統括的)な視座でのことであり、ミクロ的、個別店舗的なそれでは、必ずしも合理的ではない。
なぜなら、店舗とその商圏には必ず個別の事情があり、本部の打ち出した全社統一施策は必ずしも全ての個別店舗に最適でないからだ。

それに、そもそも商売替えは「マーケティングの転換」という難事であり、店舗の現場部隊は歓迎しない。
マーケティングの本質は「餌付け」、即ち「啓蒙」と「習慣付け」だ。
「『特売』=『店へ駆けつけ、買い込む時』」と、商圏のお客さまを長い間餌付けしてきた現場部隊にとって、この鞍替えは餌付けのやり直しだ。
しかも、単なるやり直しではなく、餌を新しくする完全なやり直しだ。
商圏のお客さまからダメ出しされ、顧客(固定客)を競合店舗に奪取されるリスクもあり、実際、このヨーカドーは以前より来店客数が減少している印象がある。
来店客数の減少は、賑わいと売上の減少を招きかねない。
現場部隊にとって、この商売替えは厄介なばかりか死活の問題であり、仕事へのモチベーションを揺るがしかねない。

しかしながら、驚くほどに、このヨーカドーの現場部隊のモチベーションは揺るぎない。
馴染みのベテランレジスタッフさんのNさんも、非大口顧客の私(笑)に依然、「いつもご利用ありがとうございます〔・・・〕お気をつけてお帰りください」と、優れた手際と厚い心遣いを満面の笑みで披露くださる。

なぜ、彼らのモチベーションは揺るがないのか。
この商売替えが、目先の自社の利益より今後の日本の経済を優先した、経営トップの大義と決断と解釈できるからだ。
つまり、彼らは、この商売替えを、鈴木会長の鶴の一声、もとい(笑)、独断ではなく、日本の一大小売企業の使命として受容しており、然るに、いかに厄介かつ死活の問題であれ、彼らのモチベーションは揺るがないのだ。
トップの大義とその決断が現場に与えるモチベーション、即ち、動機付けは、外から見るより遥かに強大なのだ。

最後に、鈴木会長の回答で改めて確信したのは、日本人に新しい価値を、それも、非機能的かつ非周知、非権威付け(unauthorized)の価値を認知、評価させるのはとりわけ難しいビジネスだが、その分チャンス(opportunity)も多い、ということだ。

たしかに、先述の通り、このヨーカドーは商売替え以来、来店客数が減少している印象があり、それは店舗、現場部隊の双方にとって死活問題に違いない。
しかし、[売上=平均客単価×来店客数]、[利益=売上×付加価値率(≒粗利率)]であるからして、彼らが商売替えを全うし、来店客一人一人が付加価値率の高い企画提案と「高価値妥当高価格商品」を積極的に購入するようになれば、彼らも店舗も死に絶えるどころか、却って生き潤う。

しかも、近所のスーパーの内、このヨーカドーの様に特売でお客さまを釣らない店舗、企業は皆無であり、これは多分、他の商圏でもほぼ同様だろう。
よって、ヨーカドーが、確実に増加している「価値が高く、かつ、評価できれば、相応の高価格を支払う」層と需要の取り込みに大きく舵を切るのは、商圏を競合と不毛に喰い合う仁義無き低価格戦争のレッドオーシャンから一抜けし、ブルーオーシャンに移行できる、格好のチャンスに違いない。



また、鈴木会長も仰っている様に、ヨーカドーの様な一大小売企業がこのチャンスをゲットできれば、日本の小売ビジネス、日本の経済も生き潤うに違いない。

ところで、小売ではなく音楽、エンタメのビジネスの話だが、Yellow Magic Orchestra (イエロー・マジック・オーケストラ)の果たした実績、功績が未来永劫語り継がれるべきものであるのは、もはや議論を要しない。
しかし、YMOが作った「テクノ」という全く新しい音楽的価値、娯楽価値、非必需品価値、非機能的価値は、当初日本では全くと言って良いほど、認知も評価もされなかった。
彼らが日本で認知、評価され始めたのは、彼らが海外公演で絶賛されたのが報じられ、日本に帰国してからのことだ。






そもそも、なぜ、日本人に新しい価値を、それも、非機能的かつ非周知、非権威付けの価値を認知、評価させることは、かくも難しいのか。
もっと言えば、なぜ、日本の商品の作り手と売り手は、こうした価値を同胞の買い手に認めさせられないのか。
また、なぜ、日本の買い手は、同胞のこうした価値を認めようとしないのか。

主因は、「(費用対)機能に優れた既存のモノは『裏切らない』から」ではないか。
もっと言えば、前者は、「医者が専ら患者ではなく病気に興味関心を持ち、見てばかりいる様に、日本の作り手と売り手も、お客さま、及び、お客さまの人となりや事情/ニーズではなく、(費用対)機能が向上したモノに専ら興味関心を持ち、製販に忘我する嫌いがあるから」ではないか。
そして、後者は、「日本の買い手は、専ら予定調和と前例踏襲を選好し、失敗と自己責任を嫌悪、回避する嫌いがあるから」ではないか。

先述の通り、マーケティングの本質は「啓蒙」と「習慣付け」だが、これは実行主体にも当てはまる。
要するに、ミイラを取るには予めミイラ取りに成る必要があるが、それには先ず自分自身がミイラに成らなければいけない、ということだ。(笑)
ヨーカドーの商売替え、「マーケティングの転換」がどこまで、商品の作り手、売り手、買い手の全てを引っ括めたこうした日本人のひ弱な知見と習性を、ひいては、「精神のひ弱さ(⇔逞しさ)」を矯正するか、同胞の日本人として、また、ヨーカドーウォッチャーとして(笑)見届けたいし、可能な範囲で参画したい。



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