2006年05月30日
ザ・リッツ・カールトン・ホテル日本支社長、高野登さんの講話を聴くの巻
ザ・リッツ・カールトン大阪というホテルがある。
このホテルは、従業員が、リッツ・カールトン・ミスティーク(神秘性)と呼ばれる、お客様に感動を引き起こすもてなしを励行し、多くのリピーターと口コミを生み、業界トップの稼働率を達成していることで知られている。
私は、本日、IBMが主催するセミナーで、ザ・リッツ・カールトン・ホテル日本支社長の高野登さんの講話を聴いた。
昨年、高野さんの著書「リッツ・カールトンが大切にするサービスを超える瞬間」を読み、同ホテルが競合優位を創出するキーは、PR活動を含む採用活動と社内マーケティングの巧さにある、と考えていたが、それはあながち間違いではなかったようで安堵した。
このホテルは、従業員が、リッツ・カールトン・ミスティーク(神秘性)と呼ばれる、お客様に感動を引き起こすもてなしを励行し、多くのリピーターと口コミを生み、業界トップの稼働率を達成していることで知られている。
私は、本日、IBMが主催するセミナーで、ザ・リッツ・カールトン・ホテル日本支社長の高野登さんの講話を聴いた。
昨年、高野さんの著書「リッツ・カールトンが大切にするサービスを超える瞬間」を読み、同ホテルが競合優位を創出するキーは、PR活動を含む採用活動と社内マーケティングの巧さにある、と考えていたが、それはあながち間違いではなかったようで安堵した。
しかし、セミナーが終わった後、私は、ふと自問自答してみた。
それらの活動は、本来どのような企業でも重要であり、それらの活動にそれなりの解決技術とコストを投入している企業は決して少なくない・・。
にもかかわらず、なぜ、リッツ・カールトンだけが、殊の外、多くのお客様から支持され、良好な経営実績を果たしているのだろうか・・と。
私は以下の回答を案出した。
【1】創始者が定義した、企業理念、価値観、行動指針が、お客様と従業員の双方が満足できる、優れた内容だったから。
【2】マネジメント(経営者、事業執行責任者)が、上記の企業理念、価値観、行動指針を、時代や国境を越えてもなお、現場の末端まできっちり浸透させることに、頭と体をフルに使っているから。
いつか、高野さんにお会いできる機会があれば、これらについて正否のほどをうかがってみたい。(笑)
以下は、高野さんの講話の骨子と、印象に強く残った内容だ。
あなたさまの公私のお役に立てれば、望外の喜びだ。
★講話の骨子★
【1】リッツ・カールトンは、“リッツ・カールトン・ミスティーク(神秘性)”に代表される、ホスピタリティを核とするラグジュアリティを差別化された価値(競合優位)としている、ホテル事業会社である。
【2】リッツ・カールトンが優れた経営実績を達成しているのは、同社のマネジメント(経営者、事業執行責任者)が、【1】で述べた価値を高確率で創出する以下の仕組みを構築し、不断に実行しているからである。
<1>ホスピタリティマンになる確率の高い人格、品格を持っている人が入社する仕組み。(→ステークホルダーに対する効果的なPR活動。ステークホルダーへのお客様同等の対応。上記の人格、品格の持ち主が否か正確に判断できる評価システム。)
<2>従業員が、自社と自身のミッション、ビジョン、価値観を等しく理解、納得できる仕組み。(→入社後のオリエンテーション。クレド。ゴールドスタンダード。ラインナップ(朝礼)。)
<3>従業員が、スタンダード業務を均質的に遂行できる仕組み。(→業務遂行マニュアル。)
<4>従業員一人一人が、自分が創出し得る【1】に掲げた価値はないものか、非常識な観点からも不断に自問自答すると共に、創出可能と判断した価値を、従業員同士協力しながら、主体的に創出できる仕組み。(→クレド。ゴールドスタンダード。サティフィケーション(修了証書)。ラインナップ(朝礼)。顧客情報管理システム。2,000ドルの決裁権。)
★印象に強く残った内容★
リッツ・カールトンの創始者は、セザール・リッツと言う。
彼は、業界の慣習にとらわれない、非常識な発想を持ち、それを実行していた。
彼は、廊下に花を飾った。
彼は、顧客情報をストックし、次回宿泊時に利用した。
彼は、ホテル側のお仕着せメニューではなく、お客様自身が食べたいものをオーダーできるよう、アラカルトを設けた。
彼は、各客室にシャワーを設けた。
これらの行動を生んだ彼の非常識な発想は、リッツ・カールトンの伝統、体質、DNAとして、今もなお継承されている。
リッツ・カールトンというホテルカンパニーを立ち上げる際、五人のマネジメントメンバーは、リッツ・カールトンがホテルとして世の中に存在する意味があるか否か議論した。
結論は、意味はない、だった。
そこで、彼らは次のことを議した。
「では、リッツ・カールトンがホテルカンパニーとして世の中から認められるには、どうしたら良いのか?」。
結論は、新しいラグジュアリーな価値観、ブランドを創ること、だった。
テーマパークにおける、ワクワク感、という価値は、ディズニーランドによって創られた。
舞浜にディズニーランドができる前とできた後とでは、テーマパークに対する世の中の考え方、価値観が180度変わっている。
大阪にリッツ・カールトンができる前と後とで、ホテルやホテル産業に対する世の中の意識は変わったか?
その答えは、お客様のリピート率や口コミ比率、及び、従業員の業務遂行におけるワクワク感で評価すればわかる。
評価の結果が、変わった、であれば、リッツ・カールトンは、世の中に対して価値を創ったと言えよう。
リッツ・カールトンは、自分達が世の中に対して価値を創出しているか否か評価できる仕組みを持っている。
そして、その評価結果に基き、様々な取り組みを不断に実行している。
リッツ・カールトンのビジネスサイクルの起点は、従業員であり、企業ではない。
従業員が、リッツ・カールトンという媒体を通じて、世の中に対して価値を創出すると、その一部が利益として企業へ還ってくる。
そして、その利益の一部が、インカム(給与)として、従業員へ還ってくる。
この考えに基くと、従業員が自身のインカムを増やすためにすべきことは、ただひとつ、リッツ・カールトンという企業体を通じて、世の中へ価値を創出することとなる。
世の中へ創出した価値が評価され、リッツ・カールトンの利益が増えれば、自分のインカムも増える。
リッツ・カールトンは、「どうやって企業利益を生み出すか?」、ではなく、「どうやって従業員一人一人が世の中に対して価値を創出するか?」、からビジネスを考えている。
概して、トップはとても熱い。
しかし、その温度は、なかなか末端には伝わりにくい。
企業は、ミッション、ビジョン、価値観を従業員に伝える際、よくそれらを明文化する。
しかし、それはそれで有効だが、それだけでは、従業員は納得しないし、末端まで浸透しない。
リッツ・カールトンのマネジメントは臆病だ。
従業員が、あちこち異なる方向を見るのを怖れる。
そこで、リッツ・カールトンは、クレド、ゴールドスタンダードといった、誰でもわかる行動指針、言わば羅針盤を作り、従業員が必ず一日に一度それを読むようにしている。
従業員は、企業の哲学や価値観を理解しても、早い人で三日経つと忘れてしまう。
だから、それらを真に理解、納得してもらうには、毎日再インストールする作業が欠かせない。
世の中に対して価値を創出するのに重要なのは、まず、誰がそれをやるか、即ち、「人をどう採用するか?」、だ。
リッツ・カールトンにおいて、雇用という言葉はない。
リッツ・カールトンは、雇用を、相互選択、と解釈している。
それは、「どういう人にリッツ・カールトンを選んでもらえるか?」、と、「リッツ・カールトンはどういう人を選ぶか?」、という考えによるものだ。
この考えに基くと、リッツ・カールトンがなすべきことは二つある。
リッツ・カールトンが一番目になすべきは、世の中の人に、リッツ・カールトンを選んでもらうことだ。
だから、リッツ・カールトンは、潜在志願者に、「リッツ・カールトンなら、自分の力を何らかの形で発揮できるかもしれない」と感じてもらえるよう、然るべきプロセスを通じて、伝えている。
伝えなければ、世の中に存在しないのと一緒だ。
プロセスにはいくつか種類がある。
こうして私がみなさんにお話ししているのも、プロセスのひとつだ。
私の話を聞き、「ホテル業界は、リッツ・カールトンは面白そうだな!」と思ってもらえれば、リッツ・カールトンに志願する人も増える。
実際にホテルに来ていただいた時、「このホテルはどこか雰囲気が違うな、温かみがあるな!」、と思ってもらうのもプロセスだ。
パートナー(業者さん)を大事にすることもプロセスだ。
先だって、ある30歳の女性が、リッツ・カールトンへ入社した。
彼女がリッツ・カールトンを志願したキッカケは、お父さまからの勧めだった。
「ホテル業界へ行くなら、リッツへ行け。」。
彼女のお父さまは、宅配会社のセールスドライバーとして、リッツ・カールトンに出入りしておられた。
リッツ・カールトンの従業員は、「こうやったら、この人はきっとハッピーになるだろう!」と考え、それを実行する習慣を持っている。
だから、従業員は、この習慣のひとつとして、手が空いている時は、セールスドライバーの荷物の上げ下ろしを手伝ったり、寒い時など温かいお茶を出している。
彼女は、リッツ・カールトンにこうした習慣があることを知った上で志願し、入社した。
彼女は、今、リッツ・カールトンでこの習慣を実行している。
リッツ・カールトンが二番目になすべきは、志願者がホスピタリティマンの原石か否か、即ち、ホスピタリティマンとして世の中に価値を創出する可能性が高い人か否かを見極めることだ。
企業の温度は、どういう人が一緒に働いているか、で決まる。
これはどういうことか、以下は例示だ。
電車に優先席がある。
今、優先席に座っている人の大半は五体満足で、本来そこに座るべき人ではない。
ともあれ、何らかの理由で優先席に座ろうとする際、何のためらいもなく座る、周囲に座るべき人が居ないかどうか確かめてから座る、周囲を確かめた上携帯の電源を切ってから座る、の三つの方法があったとする。
これらの中で、最もリッツ・カールトンと親和性が高い方法は、もちろん三番目だ。
この方法で座る習慣を持っている人が300人集まったら、リッツ・カールトンの温度は非常に高くなり、すごいことができる。
リッツ・カールトンは、なぜここまで温度を高めることにこだわるのか。
理由はふたつある。
一つ目の理由は、トップの熱い温度が下がるのを防ぎたいから、だ。
先に述べたように、トップの温度は熱い。
その温度が、末端へ行くに従って下がっていくのは致し方ない。
が、それを極小化する仕組みを作り、実行することは、企業の温度を高くする上で有意義だ。
リッツ・カールトンは、採用をその仕組みのひとつとして考え、多くの時間とコストをかけている。
二つ目の理由は、現代は、キャッシュディスペンサーに代表されるように、ビジネスのみならず私生活も、非接触的だから、だ。
人と接する機会、環境の絶対量が減っている以上、リッツ・カールトンは、ホテルカンパニーとして、温度を高めることに積極的にならなければいけない。
リッツ・カールトンは、外部のコンサルティング会社と作った採用システムを持っている。
リッツ・カールトンは、この採用システムを介して、スキルが高いか否かよりも、ホスピタリティマンとして磨き上げることができる人格や品格があるか否か、を評価している。
採用の面接は、「面接の達人」をいくら読んでも無駄な内容だ。
なぜならば、正解があり得ないからだ。
正解があり得ない質問とは、どういう質問か。
例えば、次のような質問だ。
「あなたは、ここ二週間の中で、大事な人を喜ばせる人のために、どのようなことをしましたか?」。
リッツ・カールトンがこの質問を通じて知りたいのは、「この人は、大事な人を喜ばせる、という価値観、感性、習慣がどの程度あるか」、だ。
すごい人を見た時、「どんなトレーニングをしているのか?」ではなく、「普段どのような生活をしているのか(=どのような習慣を持っているのか)?」という視点で見ると良い場合が少なくない。
リッツ・カールトンは、新入社員に対してオリエンテーションを二日間催している。
このオリエンテーションの目的は、彼らに、リッツ・カールトンの哲学、価値観、理念を頭で理解、納得してもらい、受け入れてもらうこと、そして、「入社前に思っていたことと同じだ」と安堵してもらうことだ。
その際、「今まで培ったものを捨てろ」ではなく、「パソコンのOSのように(WIN98なら2000へ、WIN2000ならXPへ)バーションアップしようよ!」のスタンスで、新入社員と徹底的に話し合う。
オリエンテーションを受けた新入社員は、現場へ配属される。
リッツ・カールトンは、彼らが、リッツ・カールトンの哲学、価値観、理念を心で納得できるよう、コーチング、モデリング、ティーチングの手法を使った仕組みを持っている。
従業員は、ラインナップ(朝礼)において、木曜は、本社から提示されたcommitment to quality(クレドの具体的な行動指針であるゴールドスタンダードの一事項)を題材にするほか、月曜と金曜は、サクセスストーリー(従業員の賞賛業務)を題材にして、全世界の各職場でほぼ同時刻に話し合いを行う。
ラインナップを終えた従業員は、サクセスストーリーを創った従業員に対して、国の垣根を越えて、「Congratulations!」というメールを送る。
従業員は、ラインナップを通じて、クレドとゴールドスタンダードに関する理解を深めると共に、従業員同士の連帯感、リッツ・カールトンへの帰属感、自分自身に対する誇りを高める。
従業員は、実際業務において、クレドを思い起こしながら、自分が何か価値を創れないか習慣的に考え、実行する。
以下は例示だ。
あるルームキーパーが部屋を掃除した。
余談だが、日本人に部屋の掃除を任せると高確率で綺麗にできるが、外国人に任せるとそうはいかず、仕上がりに大きなバラツキができてしまう。
これだと、お客様にプロダクトの品質を保証できないので、掃除ひとつにしてもマニュアルを作成し、ルームキーパーは、それに沿って掃除を行う。
掃除のマニュアルは、ノックの仕方から始まって、全88工程から成る。
話を本題に戻す。
あるルームキーパーは、マニュアルに沿って、掃除をし終えた。
当然、そのルームキーパーは、クレド(↓)を毎日読んでいる。
「リッツカールトンホテルは
お客様への心のこもったおもてなしと
快適さを提供することを
もっとも大切な使命とこころえています。
私たちは、お客様に心あたたまる、くつろいだ
そして洗練された雰囲気を
常にお楽しみいただくために
最高のパーソナル・サービスと施設を
提供することをお約束します。
リッツカールトンでお客様が経験されるもの、
それは、感覚で満たすここちよさ、
満ち足りた幸福感
そしてお客様が言葉にされない
願望やニーズをも先読みしておこたえする
サービスの心です。」
すると、そのルームキーパーは、クレドに書かれている自分のミッション(使命)を思い起こす。
そして、「クレドに『お客様が言葉にされない願望やニーズを先読みしておこたえする』とあるが、今、何か自分にできることはないか?」と考え、フロントへ連絡し、部屋を利用するお客様の過去情報やリクエストを確認する。
フロントは、そのルームキーパーに対し、そのお客様は、過去、部屋で仕事をするため、明るい電球に替えていることを告げる。
そのルームキーパーは電球を替える。
リッツ・カールトンのフロントマンは、宿泊予定客がチェックインする前に、過去情報を確認する。
これも、クレドに書かれている、『お客様が言葉にされない願望やニーズを先読みしておこたえする』、を実行するために他ならない。
あるフロントマンが、今晩宿泊されるあるお客様はブランデーが好き、という情報を確認した。
そして、そのフロントマンは、次のウェルカムメッセージをお客様のコールボックス(留守電)に入れた。
「○○さま、今日も一日お仕事お疲れさまでした。・・・お風呂上りにブランデーはいかがでしょうか?・・・。」。
リッツ・カールトンは、ルームサービスをオーダーテーカーとは考えていない。
過去情報やニーズをもとに、こちらから適宜勧めるべきものと考えている。
こうしたルームサービスのとり方は、ホテル業界からすると非常識だが、リッツ・カールトンのDNA(=常識にとらわれない)に基く、良い取り組みだと考えている。
この勧め方はエモーショナルアタッチメントであり、販売機会の損失を極小化できるばかりか、口コミを誘発することもできる。
私は、口コミこそ最強のビジネスモデルだと思っている。
リッツ・カールトンは、現在、利用客の60%が口コミだが、やり方次第で、70%まで行くと私は考えている。
リッツ・カールトンは、従業員がクレドに基き、非常識に行動できる仕組みを持っている。
それは、2,000ドルの決裁権だ。
リッツ・カールトンは、オリエンテーションを受け、試験に合格した従業員に対して、サティフィケーション(修了証書)と2,000ドルの決裁権を付与し、「今から、何かあったら、自分の判断で、どんなことでもやっていいよ!」というお墨付きを与えている。
私自身、これを付与された時、思わず体が震えたものだ。
というのも、金額が、20ドルや200ドルではなく、2000ドルだからだ。
20ドルや200ドルでは大事に使おうとは思わないが、2,000ドルとなると話は別だ。
私は、「この2,000ドルは、使う時は大事に使わなければいけない。苦情処理などに使うべきものではない。」と思った。
私は、この2,000ドルもの決裁権から、会社の本気度を強く感じた。
2,000ドルの決裁権は、会社と従業員の信頼関係を高め、従業員に価値創出の広い選択肢を与える。
従業員は、2,000ドルの決裁権を付与され、行動の選択肢が広がったことにより、思い切り、楽しく仕事ができる。
従業員は、だんだん、付与された2,000ドルを使わなくなる。
従業員は、お金ではなく、知恵を使うことに勤しむようになる。
2,000ドルの決裁権を使った事例に次のようなことがあった。
ある大学の先生がご宿泊された。
先生は、講演の資料を部屋に忘れたまま、大阪を発ち、東京の講演会場へ向かわれた。
従業員は、どうしようかと考えた。
まず、資料を講演の会場へファクスで送る方法を案出した。
が、自分以外の人に講演の資料が見られるのは、先生にとって気分の良いものではない、と考え、その案は却下した。
色々考えた結果、新幹線を使って、自分が東京まで届けに行くのが最善の方法だと確信し、実行した。
先生は感動なさった。
先生は、講演が終了した後、懇親会で、リッツ・カールトン大阪のことを参加者に話してくれた。
先生は、以後、リッツ・カールトン大阪の常連になってくださった。
ある時には、本来であれば数十万円の謝礼を渡すところ、先生は、謝礼を受け取らずに、東京大阪間ののぞみの往復チケット代金だけで、リッツ・カールトン大阪の講演会へお越しいただき、その件を話してくださった。
リッツ・カールトンは、2,000ドルの決裁権は、単なる費用ではなく、口コミをもたらす投資と考えている。
リッツ・カールトンは、チームワークを重視し、バントの名人を作っている。
ホームランを打つ人は要らない。
それぞれの従業員がバントを打ち、それが繫がれば、チームは勝てる。
リッツ・カールトンの従業員は、各自が、前のバントの内容を正しく把握し、自分はそれを受けてどのようなバントを打って次の人に繋げたらいいか考えている。
リッツ・カールトンの従業員は、(自分ができること、自分がすべきことを)コツコツやっている。
従業員がチームワークを励行している事例を紹介する。
ある従業員が、お客様から次のリクエストを頂戴した。
「夜、ビーチでプロポーズをしたいんだ。だから、ビーチに椅子をひとつ残しておいてもらえないか?」
その従業員は、「椅子を準備するだけでなく、もっとできることがあるのではないか?」、と考えた。
そして、ビーチに椅子と花を飾り、テーブルクロスを敷いたテーブルを置き、その上にシャンパンクーラーとシャンパンを置き、自分がタキシードをまとって、カップルにシャンパンを注ごう、と考えた。
リクエストを頂戴してからそのアイデアを実行するまでの時間は僅かで、花やタキシードのアテはなかった。
しかしながら、彼のアイデアを知った従業員が、手分けをして花とタキシードを短時間で調達し、彼のアイデアは日の目を見、お客様は最高のプロポーズを果たした。
リッツ・カールトンに、「花なんて、シャンパンなんて知らないよ」と言う従業員は居ない。
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伊那経営フォーラムに参加して、「未知の人同士でモノを教示し合う時は、細心の注意が必要である」ことをとりわけ気づかされるの巻
「リッツ・カールトンの究極のホスピタリティ(著/四方啓暉さん)」を読み、「ホスピタリティ」の本質を心得るの巻
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それらの活動は、本来どのような企業でも重要であり、それらの活動にそれなりの解決技術とコストを投入している企業は決して少なくない・・。
にもかかわらず、なぜ、リッツ・カールトンだけが、殊の外、多くのお客様から支持され、良好な経営実績を果たしているのだろうか・・と。
私は以下の回答を案出した。
【1】創始者が定義した、企業理念、価値観、行動指針が、お客様と従業員の双方が満足できる、優れた内容だったから。
【2】マネジメント(経営者、事業執行責任者)が、上記の企業理念、価値観、行動指針を、時代や国境を越えてもなお、現場の末端まできっちり浸透させることに、頭と体をフルに使っているから。
いつか、高野さんにお会いできる機会があれば、これらについて正否のほどをうかがってみたい。(笑)
以下は、高野さんの講話の骨子と、印象に強く残った内容だ。
あなたさまの公私のお役に立てれば、望外の喜びだ。
★講話の骨子★
【1】リッツ・カールトンは、“リッツ・カールトン・ミスティーク(神秘性)”に代表される、ホスピタリティを核とするラグジュアリティを差別化された価値(競合優位)としている、ホテル事業会社である。
【2】リッツ・カールトンが優れた経営実績を達成しているのは、同社のマネジメント(経営者、事業執行責任者)が、【1】で述べた価値を高確率で創出する以下の仕組みを構築し、不断に実行しているからである。
<1>ホスピタリティマンになる確率の高い人格、品格を持っている人が入社する仕組み。(→ステークホルダーに対する効果的なPR活動。ステークホルダーへのお客様同等の対応。上記の人格、品格の持ち主が否か正確に判断できる評価システム。)
<2>従業員が、自社と自身のミッション、ビジョン、価値観を等しく理解、納得できる仕組み。(→入社後のオリエンテーション。クレド。ゴールドスタンダード。ラインナップ(朝礼)。)
<3>従業員が、スタンダード業務を均質的に遂行できる仕組み。(→業務遂行マニュアル。)
<4>従業員一人一人が、自分が創出し得る【1】に掲げた価値はないものか、非常識な観点からも不断に自問自答すると共に、創出可能と判断した価値を、従業員同士協力しながら、主体的に創出できる仕組み。(→クレド。ゴールドスタンダード。サティフィケーション(修了証書)。ラインナップ(朝礼)。顧客情報管理システム。2,000ドルの決裁権。)
★印象に強く残った内容★
リッツ・カールトンの創始者は、セザール・リッツと言う。
彼は、業界の慣習にとらわれない、非常識な発想を持ち、それを実行していた。
彼は、廊下に花を飾った。
彼は、顧客情報をストックし、次回宿泊時に利用した。
彼は、ホテル側のお仕着せメニューではなく、お客様自身が食べたいものをオーダーできるよう、アラカルトを設けた。
彼は、各客室にシャワーを設けた。
これらの行動を生んだ彼の非常識な発想は、リッツ・カールトンの伝統、体質、DNAとして、今もなお継承されている。
リッツ・カールトンというホテルカンパニーを立ち上げる際、五人のマネジメントメンバーは、リッツ・カールトンがホテルとして世の中に存在する意味があるか否か議論した。
結論は、意味はない、だった。
そこで、彼らは次のことを議した。
「では、リッツ・カールトンがホテルカンパニーとして世の中から認められるには、どうしたら良いのか?」。
結論は、新しいラグジュアリーな価値観、ブランドを創ること、だった。
テーマパークにおける、ワクワク感、という価値は、ディズニーランドによって創られた。
舞浜にディズニーランドができる前とできた後とでは、テーマパークに対する世の中の考え方、価値観が180度変わっている。
大阪にリッツ・カールトンができる前と後とで、ホテルやホテル産業に対する世の中の意識は変わったか?
その答えは、お客様のリピート率や口コミ比率、及び、従業員の業務遂行におけるワクワク感で評価すればわかる。
評価の結果が、変わった、であれば、リッツ・カールトンは、世の中に対して価値を創ったと言えよう。
リッツ・カールトンは、自分達が世の中に対して価値を創出しているか否か評価できる仕組みを持っている。
そして、その評価結果に基き、様々な取り組みを不断に実行している。
リッツ・カールトンのビジネスサイクルの起点は、従業員であり、企業ではない。
従業員が、リッツ・カールトンという媒体を通じて、世の中に対して価値を創出すると、その一部が利益として企業へ還ってくる。
そして、その利益の一部が、インカム(給与)として、従業員へ還ってくる。
この考えに基くと、従業員が自身のインカムを増やすためにすべきことは、ただひとつ、リッツ・カールトンという企業体を通じて、世の中へ価値を創出することとなる。
世の中へ創出した価値が評価され、リッツ・カールトンの利益が増えれば、自分のインカムも増える。
リッツ・カールトンは、「どうやって企業利益を生み出すか?」、ではなく、「どうやって従業員一人一人が世の中に対して価値を創出するか?」、からビジネスを考えている。
概して、トップはとても熱い。
しかし、その温度は、なかなか末端には伝わりにくい。
企業は、ミッション、ビジョン、価値観を従業員に伝える際、よくそれらを明文化する。
しかし、それはそれで有効だが、それだけでは、従業員は納得しないし、末端まで浸透しない。
リッツ・カールトンのマネジメントは臆病だ。
従業員が、あちこち異なる方向を見るのを怖れる。
そこで、リッツ・カールトンは、クレド、ゴールドスタンダードといった、誰でもわかる行動指針、言わば羅針盤を作り、従業員が必ず一日に一度それを読むようにしている。
従業員は、企業の哲学や価値観を理解しても、早い人で三日経つと忘れてしまう。
だから、それらを真に理解、納得してもらうには、毎日再インストールする作業が欠かせない。
世の中に対して価値を創出するのに重要なのは、まず、誰がそれをやるか、即ち、「人をどう採用するか?」、だ。
リッツ・カールトンにおいて、雇用という言葉はない。
リッツ・カールトンは、雇用を、相互選択、と解釈している。
それは、「どういう人にリッツ・カールトンを選んでもらえるか?」、と、「リッツ・カールトンはどういう人を選ぶか?」、という考えによるものだ。
この考えに基くと、リッツ・カールトンがなすべきことは二つある。
リッツ・カールトンが一番目になすべきは、世の中の人に、リッツ・カールトンを選んでもらうことだ。
だから、リッツ・カールトンは、潜在志願者に、「リッツ・カールトンなら、自分の力を何らかの形で発揮できるかもしれない」と感じてもらえるよう、然るべきプロセスを通じて、伝えている。
伝えなければ、世の中に存在しないのと一緒だ。
プロセスにはいくつか種類がある。
こうして私がみなさんにお話ししているのも、プロセスのひとつだ。
私の話を聞き、「ホテル業界は、リッツ・カールトンは面白そうだな!」と思ってもらえれば、リッツ・カールトンに志願する人も増える。
実際にホテルに来ていただいた時、「このホテルはどこか雰囲気が違うな、温かみがあるな!」、と思ってもらうのもプロセスだ。
パートナー(業者さん)を大事にすることもプロセスだ。
先だって、ある30歳の女性が、リッツ・カールトンへ入社した。
彼女がリッツ・カールトンを志願したキッカケは、お父さまからの勧めだった。
「ホテル業界へ行くなら、リッツへ行け。」。
彼女のお父さまは、宅配会社のセールスドライバーとして、リッツ・カールトンに出入りしておられた。
リッツ・カールトンの従業員は、「こうやったら、この人はきっとハッピーになるだろう!」と考え、それを実行する習慣を持っている。
だから、従業員は、この習慣のひとつとして、手が空いている時は、セールスドライバーの荷物の上げ下ろしを手伝ったり、寒い時など温かいお茶を出している。
彼女は、リッツ・カールトンにこうした習慣があることを知った上で志願し、入社した。
彼女は、今、リッツ・カールトンでこの習慣を実行している。
リッツ・カールトンが二番目になすべきは、志願者がホスピタリティマンの原石か否か、即ち、ホスピタリティマンとして世の中に価値を創出する可能性が高い人か否かを見極めることだ。
企業の温度は、どういう人が一緒に働いているか、で決まる。
これはどういうことか、以下は例示だ。
電車に優先席がある。
今、優先席に座っている人の大半は五体満足で、本来そこに座るべき人ではない。
ともあれ、何らかの理由で優先席に座ろうとする際、何のためらいもなく座る、周囲に座るべき人が居ないかどうか確かめてから座る、周囲を確かめた上携帯の電源を切ってから座る、の三つの方法があったとする。
これらの中で、最もリッツ・カールトンと親和性が高い方法は、もちろん三番目だ。
この方法で座る習慣を持っている人が300人集まったら、リッツ・カールトンの温度は非常に高くなり、すごいことができる。
リッツ・カールトンは、なぜここまで温度を高めることにこだわるのか。
理由はふたつある。
一つ目の理由は、トップの熱い温度が下がるのを防ぎたいから、だ。
先に述べたように、トップの温度は熱い。
その温度が、末端へ行くに従って下がっていくのは致し方ない。
が、それを極小化する仕組みを作り、実行することは、企業の温度を高くする上で有意義だ。
リッツ・カールトンは、採用をその仕組みのひとつとして考え、多くの時間とコストをかけている。
二つ目の理由は、現代は、キャッシュディスペンサーに代表されるように、ビジネスのみならず私生活も、非接触的だから、だ。
人と接する機会、環境の絶対量が減っている以上、リッツ・カールトンは、ホテルカンパニーとして、温度を高めることに積極的にならなければいけない。
リッツ・カールトンは、外部のコンサルティング会社と作った採用システムを持っている。
リッツ・カールトンは、この採用システムを介して、スキルが高いか否かよりも、ホスピタリティマンとして磨き上げることができる人格や品格があるか否か、を評価している。
採用の面接は、「面接の達人」をいくら読んでも無駄な内容だ。
なぜならば、正解があり得ないからだ。
正解があり得ない質問とは、どういう質問か。
例えば、次のような質問だ。
「あなたは、ここ二週間の中で、大事な人を喜ばせる人のために、どのようなことをしましたか?」。
リッツ・カールトンがこの質問を通じて知りたいのは、「この人は、大事な人を喜ばせる、という価値観、感性、習慣がどの程度あるか」、だ。
すごい人を見た時、「どんなトレーニングをしているのか?」ではなく、「普段どのような生活をしているのか(=どのような習慣を持っているのか)?」という視点で見ると良い場合が少なくない。
リッツ・カールトンは、新入社員に対してオリエンテーションを二日間催している。
このオリエンテーションの目的は、彼らに、リッツ・カールトンの哲学、価値観、理念を頭で理解、納得してもらい、受け入れてもらうこと、そして、「入社前に思っていたことと同じだ」と安堵してもらうことだ。
その際、「今まで培ったものを捨てろ」ではなく、「パソコンのOSのように(WIN98なら2000へ、WIN2000ならXPへ)バーションアップしようよ!」のスタンスで、新入社員と徹底的に話し合う。
オリエンテーションを受けた新入社員は、現場へ配属される。
リッツ・カールトンは、彼らが、リッツ・カールトンの哲学、価値観、理念を心で納得できるよう、コーチング、モデリング、ティーチングの手法を使った仕組みを持っている。
従業員は、ラインナップ(朝礼)において、木曜は、本社から提示されたcommitment to quality(クレドの具体的な行動指針であるゴールドスタンダードの一事項)を題材にするほか、月曜と金曜は、サクセスストーリー(従業員の賞賛業務)を題材にして、全世界の各職場でほぼ同時刻に話し合いを行う。
ラインナップを終えた従業員は、サクセスストーリーを創った従業員に対して、国の垣根を越えて、「Congratulations!」というメールを送る。
従業員は、ラインナップを通じて、クレドとゴールドスタンダードに関する理解を深めると共に、従業員同士の連帯感、リッツ・カールトンへの帰属感、自分自身に対する誇りを高める。
従業員は、実際業務において、クレドを思い起こしながら、自分が何か価値を創れないか習慣的に考え、実行する。
以下は例示だ。
あるルームキーパーが部屋を掃除した。
余談だが、日本人に部屋の掃除を任せると高確率で綺麗にできるが、外国人に任せるとそうはいかず、仕上がりに大きなバラツキができてしまう。
これだと、お客様にプロダクトの品質を保証できないので、掃除ひとつにしてもマニュアルを作成し、ルームキーパーは、それに沿って掃除を行う。
掃除のマニュアルは、ノックの仕方から始まって、全88工程から成る。
話を本題に戻す。
あるルームキーパーは、マニュアルに沿って、掃除をし終えた。
当然、そのルームキーパーは、クレド(↓)を毎日読んでいる。
「リッツカールトンホテルは
お客様への心のこもったおもてなしと
快適さを提供することを
もっとも大切な使命とこころえています。
私たちは、お客様に心あたたまる、くつろいだ
そして洗練された雰囲気を
常にお楽しみいただくために
最高のパーソナル・サービスと施設を
提供することをお約束します。
リッツカールトンでお客様が経験されるもの、
それは、感覚で満たすここちよさ、
満ち足りた幸福感
そしてお客様が言葉にされない
願望やニーズをも先読みしておこたえする
サービスの心です。」
すると、そのルームキーパーは、クレドに書かれている自分のミッション(使命)を思い起こす。
そして、「クレドに『お客様が言葉にされない願望やニーズを先読みしておこたえする』とあるが、今、何か自分にできることはないか?」と考え、フロントへ連絡し、部屋を利用するお客様の過去情報やリクエストを確認する。
フロントは、そのルームキーパーに対し、そのお客様は、過去、部屋で仕事をするため、明るい電球に替えていることを告げる。
そのルームキーパーは電球を替える。
リッツ・カールトンのフロントマンは、宿泊予定客がチェックインする前に、過去情報を確認する。
これも、クレドに書かれている、『お客様が言葉にされない願望やニーズを先読みしておこたえする』、を実行するために他ならない。
あるフロントマンが、今晩宿泊されるあるお客様はブランデーが好き、という情報を確認した。
そして、そのフロントマンは、次のウェルカムメッセージをお客様のコールボックス(留守電)に入れた。
「○○さま、今日も一日お仕事お疲れさまでした。・・・お風呂上りにブランデーはいかがでしょうか?・・・。」。
リッツ・カールトンは、ルームサービスをオーダーテーカーとは考えていない。
過去情報やニーズをもとに、こちらから適宜勧めるべきものと考えている。
こうしたルームサービスのとり方は、ホテル業界からすると非常識だが、リッツ・カールトンのDNA(=常識にとらわれない)に基く、良い取り組みだと考えている。
この勧め方はエモーショナルアタッチメントであり、販売機会の損失を極小化できるばかりか、口コミを誘発することもできる。
私は、口コミこそ最強のビジネスモデルだと思っている。
リッツ・カールトンは、現在、利用客の60%が口コミだが、やり方次第で、70%まで行くと私は考えている。
リッツ・カールトンは、従業員がクレドに基き、非常識に行動できる仕組みを持っている。
それは、2,000ドルの決裁権だ。
リッツ・カールトンは、オリエンテーションを受け、試験に合格した従業員に対して、サティフィケーション(修了証書)と2,000ドルの決裁権を付与し、「今から、何かあったら、自分の判断で、どんなことでもやっていいよ!」というお墨付きを与えている。
私自身、これを付与された時、思わず体が震えたものだ。
というのも、金額が、20ドルや200ドルではなく、2000ドルだからだ。
20ドルや200ドルでは大事に使おうとは思わないが、2,000ドルとなると話は別だ。
私は、「この2,000ドルは、使う時は大事に使わなければいけない。苦情処理などに使うべきものではない。」と思った。
私は、この2,000ドルもの決裁権から、会社の本気度を強く感じた。
2,000ドルの決裁権は、会社と従業員の信頼関係を高め、従業員に価値創出の広い選択肢を与える。
従業員は、2,000ドルの決裁権を付与され、行動の選択肢が広がったことにより、思い切り、楽しく仕事ができる。
従業員は、だんだん、付与された2,000ドルを使わなくなる。
従業員は、お金ではなく、知恵を使うことに勤しむようになる。
2,000ドルの決裁権を使った事例に次のようなことがあった。
ある大学の先生がご宿泊された。
先生は、講演の資料を部屋に忘れたまま、大阪を発ち、東京の講演会場へ向かわれた。
従業員は、どうしようかと考えた。
まず、資料を講演の会場へファクスで送る方法を案出した。
が、自分以外の人に講演の資料が見られるのは、先生にとって気分の良いものではない、と考え、その案は却下した。
色々考えた結果、新幹線を使って、自分が東京まで届けに行くのが最善の方法だと確信し、実行した。
先生は感動なさった。
先生は、講演が終了した後、懇親会で、リッツ・カールトン大阪のことを参加者に話してくれた。
先生は、以後、リッツ・カールトン大阪の常連になってくださった。
ある時には、本来であれば数十万円の謝礼を渡すところ、先生は、謝礼を受け取らずに、東京大阪間ののぞみの往復チケット代金だけで、リッツ・カールトン大阪の講演会へお越しいただき、その件を話してくださった。
リッツ・カールトンは、2,000ドルの決裁権は、単なる費用ではなく、口コミをもたらす投資と考えている。
リッツ・カールトンは、チームワークを重視し、バントの名人を作っている。
ホームランを打つ人は要らない。
それぞれの従業員がバントを打ち、それが繫がれば、チームは勝てる。
リッツ・カールトンの従業員は、各自が、前のバントの内容を正しく把握し、自分はそれを受けてどのようなバントを打って次の人に繋げたらいいか考えている。
リッツ・カールトンの従業員は、(自分ができること、自分がすべきことを)コツコツやっている。
従業員がチームワークを励行している事例を紹介する。
ある従業員が、お客様から次のリクエストを頂戴した。
「夜、ビーチでプロポーズをしたいんだ。だから、ビーチに椅子をひとつ残しておいてもらえないか?」
その従業員は、「椅子を準備するだけでなく、もっとできることがあるのではないか?」、と考えた。
そして、ビーチに椅子と花を飾り、テーブルクロスを敷いたテーブルを置き、その上にシャンパンクーラーとシャンパンを置き、自分がタキシードをまとって、カップルにシャンパンを注ごう、と考えた。
リクエストを頂戴してからそのアイデアを実行するまでの時間は僅かで、花やタキシードのアテはなかった。
しかしながら、彼のアイデアを知った従業員が、手分けをして花とタキシードを短時間で調達し、彼のアイデアは日の目を見、お客様は最高のプロポーズを果たした。
リッツ・カールトンに、「花なんて、シャンパンなんて知らないよ」と言う従業員は居ない。
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