2006年06月25日
撤去された自転車を取りに行って感動するの巻
その際、最寄駅ではないものの、行けない距離ではないことから、同線が停車する北千住駅へ自転車で乗りつけた。
これまで、北千住駅を利用したことは数える位しかない。
よって、同駅界隈の実情については無知そのものだった。(笑)
20時頃、私は北千住へ舞い戻った。
が、駅前商店街に停めた私の自転車は消え去っていた。
愕然とした。
自転車を撤去されるのは、これで二度目だ。
ちなみに、一度目は、日本の最高学府が立地する区だ。(笑)
運転中、タイヤが突然バーストしてしまい、時間に追われていた為、「故障中」のメモ紙を貼り付けてやむなく路上に停めておいたところ、その甲斐も無く撤去されてしまった。(涙)
今回は、前回とは異なり、全て自分が悪い。
ゆえに、引き取りコスト(=撤去費用+引き取り時間&交通費)というペナルティを甘受することに、異議は全く無かった。
が、引き取りに行くのは、正直、憂鬱だった。
なぜならば、前回の引き取り時に、駐車の理由が理由だった為、思考停止状態で業務を”捌く(さばく)”現場担当者と空しい議論をしており、もしかすると、駐車理由が異なるとはいえ、同様のハメになるのではないかと危惧したからだ。
そして、今朝、重い腰を独力で立ち上げて、撤去された自転車を引き取りに行った。
結論から言うと、先述の危惧は杞憂に終わり、かつ、ペナルティは素晴らしい啓発機会となり、しかも、感動してしまった。
なぜ、上述の危惧は杞憂に終わったのか?
それは、現場担当者が全員、お客さま(※現場監督者のSさんは、自転車を引き取りに来た人のことを終始こう呼んでいた)の気持ちを汲み取りながら、放置の再発を促すべく、様々な取り組みを、自己判断のもと、「ここまでやるか!」と思うくらい真摯かつキビキビと実行していたからだ。
その品質は、その辺のファミリーレストランや自動車販売店の社員のそれを遥かに凌いでいた。
それを目の当たりにした私は、先述の「ここまでやるか感」を、ひいては、「このような人に顔向けが出来ない恥ずべき行為(=自転車を路上に放置すること)は止めよう感」を抱いた。
なぜ、ペナルティは素晴らしい啓発機会になったのか?
それは、それは、以下の二事項を再認識できたからだ。
1.「ここまでやる」ことは、人の心を確実に良い方へ動かす。
2.チームリーダーが自らの信念を具体化した行動を不断に「ここまでやる」ことは、早晩、チームメンバーの気持ちと行動を変える。
これら二事項の再認識を果たす契機となった<彼らの現場での取り組み>及び<現場監督者との会話の内容>は以下の通りだ。
私が感動した理由も、多分におわかりいただけると思う。
現場監督者のSさんには感謝、感謝である。(礼)
【私】
(放置自転車移送所に入る。)
【全現場担当者】
おはようございます!
(入り口付近に居る人はみな、私の顔を見ながら大きな声で挨拶する。)
【私】
あの〜昨日、北千住駅で撤去された自転車を取りに来たのですが・・・。
【現場担当者(A)】
ご苦労さまです。
どうぞこちらへ!
(自転車が集積されている場所へ私をいざなう。)
色は何色になりますか?
【私】
白です。
(集積されている自転車をチェキする。)
あっ、これです。
【現場担当者(A)】
こちらの自転車ですか。
今、出しますね。
【私】
はい、お願いします。
(盗難の可能性も想定していたので、ひとまず安堵する。)
【現場担当者(B)】
どうぞこちらへ。
(諸手続きを行うテーブルへ私をいざなう。)
【私】
あっ、どうもです。
(テーブルへ着座し、財布から撤去料2,000円と免許証を出す。)
【現場担当者(B)】
(テーブル前の事務所の中で、私の分の請求書(?)を発行している。)
【現場担当者(A)】
(私の自転車のサドルや車体をウエスで拭いたり、エアをチェックしている。)
【私】
(チームワークの良さと「ここまでやる」取り組み内容に驚愕する。)
【現場担当者(A)】
(切断したチェーンロックを目の前に差し出す。)
こちらは切断させていただいた鍵になります。
こちらで処分させていただいてもよろしいでしょうか?
【私】
はい、お願いします。
もう使えませんしね。(笑)
【現場担当者(A)】
了解しました。
では、そうさせていただきます。
【現場担当者(B)】
今日はご苦労さまでした。
こちらにご住所、お名前、お電話番号をご記入いただけますか。
(請求書(?)を目の前に出す。)
【私】
はい。
じゃ、これ、撤去料と免許証です。
(担当者に2,000円と免許証を手渡す。)
【現場担当者(B)】
ありがとうございます。
【私】
(住所、名前、電話番号を記入する。)
いやぁ、久しぶりに北千住駅を使ったら、トンだことになっちゃったなぁ〜。(笑)
【Sさん・現場監督者(※後に判明)】
どちらにお住まいなのですか?
(請求書に書いた住所を見る。)
お住まいは荒川区なのですか。
これは遠いところ、ご苦労さまです。
帰り道はおわかりになりますか?
【私】
はい、大丈夫です。
この辺は、そうは来ませんが、そこそこ明るいので。
【現場監督者】
そうですか。
帰路はくれぐれも気をつけてお帰りください。
不幸中の幸いと言ってはナンですが、足立区で良かったですね。
荒川区は、引き取り料が5,000円ですから。(笑)
【私】
そうなんですか。
それは初耳です。
荒川では撤去されたことが無いですから。
それに、荒川だと最寄り駅まで徒歩で行かれるので、自転車が撤去される心配は無いんです。(笑)
昨日はたまたま昼過ぎに用事があって、普段使っていない北千住駅を使った訳です。
【現場監督者】
そうだったんですか。
それは大変でしたね〜。
【私】
まあ、自分が悪いので致し方ありませんが。(笑)
ちなみに、撤去したのは何時頃だったのですか?
【現場監督者】
(記録紙を見る。)
2時半に一度確認し、5時半に撤去しました。
【私】
たしかに、その頃私は北千住界隈に居ませんでした。(笑)
【現場監督者】
私どもは、区から委託されてこの仕事をしているのですが、さすがに、確認してすぐに撤去してはいません。
条例からするとそれでもいいのですが、それではあんまりですからね。
【私】
なるほど。
【現場監督者】
だから、一度確認した後、少し時間を空けて再度確認し、それでもまだ放置されているようであれば、撤去するようにしています。
【私】
なるほど。
(請求書の必要事項を記入し終え、現場担当者(B)へ声をかける。)
こちら、これでよろしいですか?
【現場担当者(B)】
はい。
ありがとうございます。(礼)
【現場監督者】
ありがとうございます。(礼)
【私】
(現場監督者に対して話しかける。)
しっかし、みなさん、すごくハートフルなサービスをされますよね。
以前一度だけ他の区に引き取りに行きましたが、こちらとは大違いで、すごく酷かったです。
ちょっとお尋ねしてもよろしいですか?
【現場監督者】
はい、何でしょう。
【私】
こちらへ入ってくるなり大声で挨拶をしたり、自転車を引き渡す前にサドルを拭くなど、みなさんチームワーク良く動かれていますが、そうしたことをするよう、区もしくは会社から指示されているのでしょうか?
【現場監督者】
いえ、そういった指示は全くありません。
全て、自分達が自主的にやっていることです。
【私】
自主的にやっておられることなんですか。
それは、すごいですね。
これまで、みなさん、接客業をしておられたとかなのでしょうか?
【現場監督者】
他の者の職歴は詳しく知りませんが、少なくとも私は違います。
現役の時は、公務員をしていましたから。(笑)
【私】
公務員をなさっていたのですか。
失礼ですが、そんな風には全く見えません。
公務員というと・・・。
【現場監督者】
机とにらめっこしている・・・といった感じですよね。(笑)
たしかに、そういう者は多かったですね。
ただ、私は、当時から、そういうのはダメで、(お客さまと)話ばかりしていました。(笑)
【私】
(胸に付いている名札を確認する。)
Sさんのような方が公務員にも居るんですね。
驚きました。
でも、そうなると、元々接客業を生業としておられた訳ではないにも関わらず、みなさんがあのような素晴らしいサービスをなさるのはなぜなのでしょう?これまた失礼な言い方ですが、みなさんのお仕事は撤収された自転車を引き渡すことであって、あのようなサービスは必ずしもやる必要がないじゃないですか・・・。
【Sさん】
たしかに、そうですね。
やる必要性は無いですね。
ただ、この仕事はトラブルが付き物なんですよ。
【私】
トラブルと言うと?
【Sさん】
ここに来られるお客さまは、基本的にカッカしていますし、色々なお考えをお持ちです。
「俺の自転車を勝手に持っていきやがって、お前らドロボーだ!」とか、「撤去料が2,000円もするなんて、お前ら儲けてやがって!」とか、「2,000円をまけてくれないか?」などなど、色んなことを言われます。
ここで働いている者は、子供じゃありません。
みんな、自分で考え、行動できます。
だから、私たちは、そうしたカッカした気持ちを荒立てないように雑談口調で話すほか、お客さまの気持ちを汲んで、各自、自主的に行動しているだけです。
特に「これをやろう!」と取り決めていることはありませんが、みんなでこうしていると、お客さまの多くは高ぶっていた気持ちが和らぎ、笑顔で帰られます。
きっと、そういうお客さまは、「もう自転車を放置するのはやめよう」と思ってくれているでしょう。
【私】
なるほど、みなさん、すごいお考えですね。
お客さまの気持ちをなだめつつ、2,000円を払うに足る価値を創ろうと自助努力されている訳ですね。
すごく感心させられました。
そうそう、今おっしゃったことでひとつ確認させてもらってもいいですか?
【Sさん】
はい。
何でしょう?
【私】
みなさんをあのようなサービスに駆り立たせる最も強い思いは、「カッカしているお客さまの気持ちをそれ以上カッカしないようなだめたい」という思いなのでしょうか?それとも、「放置行為の再発を防ぎたい」という思いなのでしょうか?
【Sさん】
再発を防止する方ですね。
みんなが住み易くなるよう、ルールを守ってもらいたいですからね。
【私】
そうですか。
素晴らしい志をお持ちですね。
そのような志があるから、あのようなすごいサービスができるんですね。
【Sさん】
いえいえ、そんな大したものではありません。
私は、今、66歳です。
定年退職した後、働きたくて、「お金は二の次でいいから、是非働かせて欲しい!」と言って、いくつの企業にも応募しました。
でも、どこも、年齢でひっかっかってダメでした。
今勤めている会社の社長は、「年齢ではなく、本人のやる気と能力を重視する」という考えを持っています。
そう何度もお会いしたことはありませんが、素晴らしい方だと聞いています。
折角、仕事ができる環境を与えてもらった以上、「一所懸命やって、恩に報いたい!」、という気持ちはあります。
【私】
Sさんは、うかがえばうかがうほど、素晴らしいお考えをお持ちですね。(笑)
ちなみに、他の方も同じお考えなのでしょうか?
【Sさん】
今は、そうです。
【私】
「今は」ということは、最初はそうじゃなかったんですね?
【Sさん】
はい、そうです。
ここの所長をやっているあの者を除くと、他の者は結構若いんです。
私は、お陰さまで、ここを含む数ヶ所の移設所の管理を任されています。
でも、だからと言って、ふんぞり返ったりしません。
みんなに、さっき申し上げた(放置)再発防止のことや、「お客さまにとって、自転車は財産だ。我々はその財産を一時お預かりしているのだから、大事に預かり、綺麗にしてお返ししなくてはいけない。」と言いながら、「その為にできることは何かないか?」と常に考えながら動いています。
サドルを拭いたり、タイヤの空気を足すのは、そうしていたら生まれたアイデアです。
【私】
なるほど、なるほど。
【Sさん】
あと、嫌なことこそ率先してやるようにしています。
それに元々私は、「やる以上はしっかりやらないと、自分の身にならない。」と考える性質なんです。(笑)
そんな思いで、あの所長と二人で頑張っている内に、若いみんなも一緒に色々とやるようになってくれました。
【私】
やっぱり、リーダーは、自分を信じ、自らの信念を行動にし、それをやり続けるべし、ということですね。
いやいや、もうすっかり感動しちゃいました。
このような素晴らしいお話をうかがうことができ、私、放置自転車として撤収されて良かったです。(笑)



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それは、現場担当者が全員、お客さま(※現場監督者のSさんは、自転車を引き取りに来た人のことを終始こう呼んでいた)の気持ちを汲み取りながら、放置の再発を促すべく、様々な取り組みを、自己判断のもと、「ここまでやるか!」と思うくらい真摯かつキビキビと実行していたからだ。
その品質は、その辺のファミリーレストランや自動車販売店の社員のそれを遥かに凌いでいた。
それを目の当たりにした私は、先述の「ここまでやるか感」を、ひいては、「このような人に顔向けが出来ない恥ずべき行為(=自転車を路上に放置すること)は止めよう感」を抱いた。
なぜ、ペナルティは素晴らしい啓発機会になったのか?
それは、それは、以下の二事項を再認識できたからだ。
1.「ここまでやる」ことは、人の心を確実に良い方へ動かす。
2.チームリーダーが自らの信念を具体化した行動を不断に「ここまでやる」ことは、早晩、チームメンバーの気持ちと行動を変える。
これら二事項の再認識を果たす契機となった<彼らの現場での取り組み>及び<現場監督者との会話の内容>は以下の通りだ。
私が感動した理由も、多分におわかりいただけると思う。
現場監督者のSさんには感謝、感謝である。(礼)
【私】
(放置自転車移送所に入る。)
【全現場担当者】
おはようございます!
(入り口付近に居る人はみな、私の顔を見ながら大きな声で挨拶する。)
【私】
あの〜昨日、北千住駅で撤去された自転車を取りに来たのですが・・・。
【現場担当者(A)】
ご苦労さまです。
どうぞこちらへ!
(自転車が集積されている場所へ私をいざなう。)
色は何色になりますか?
【私】
白です。
(集積されている自転車をチェキする。)
あっ、これです。
【現場担当者(A)】
こちらの自転車ですか。
今、出しますね。
【私】
はい、お願いします。
(盗難の可能性も想定していたので、ひとまず安堵する。)
【現場担当者(B)】
どうぞこちらへ。
(諸手続きを行うテーブルへ私をいざなう。)
【私】
あっ、どうもです。
(テーブルへ着座し、財布から撤去料2,000円と免許証を出す。)
【現場担当者(B)】
(テーブル前の事務所の中で、私の分の請求書(?)を発行している。)
【現場担当者(A)】
(私の自転車のサドルや車体をウエスで拭いたり、エアをチェックしている。)
【私】
(チームワークの良さと「ここまでやる」取り組み内容に驚愕する。)
【現場担当者(A)】
(切断したチェーンロックを目の前に差し出す。)
こちらは切断させていただいた鍵になります。
こちらで処分させていただいてもよろしいでしょうか?
【私】
はい、お願いします。
もう使えませんしね。(笑)
【現場担当者(A)】
了解しました。
では、そうさせていただきます。
【現場担当者(B)】
今日はご苦労さまでした。
こちらにご住所、お名前、お電話番号をご記入いただけますか。
(請求書(?)を目の前に出す。)
【私】
はい。
じゃ、これ、撤去料と免許証です。
(担当者に2,000円と免許証を手渡す。)
【現場担当者(B)】
ありがとうございます。
【私】
(住所、名前、電話番号を記入する。)
いやぁ、久しぶりに北千住駅を使ったら、トンだことになっちゃったなぁ〜。(笑)
【Sさん・現場監督者(※後に判明)】
どちらにお住まいなのですか?
(請求書に書いた住所を見る。)
お住まいは荒川区なのですか。
これは遠いところ、ご苦労さまです。
帰り道はおわかりになりますか?
【私】
はい、大丈夫です。
この辺は、そうは来ませんが、そこそこ明るいので。
【現場監督者】
そうですか。
帰路はくれぐれも気をつけてお帰りください。
不幸中の幸いと言ってはナンですが、足立区で良かったですね。
荒川区は、引き取り料が5,000円ですから。(笑)
【私】
そうなんですか。
それは初耳です。
荒川では撤去されたことが無いですから。
それに、荒川だと最寄り駅まで徒歩で行かれるので、自転車が撤去される心配は無いんです。(笑)
昨日はたまたま昼過ぎに用事があって、普段使っていない北千住駅を使った訳です。
【現場監督者】
そうだったんですか。
それは大変でしたね〜。
【私】
まあ、自分が悪いので致し方ありませんが。(笑)
ちなみに、撤去したのは何時頃だったのですか?
【現場監督者】
(記録紙を見る。)
2時半に一度確認し、5時半に撤去しました。
【私】
たしかに、その頃私は北千住界隈に居ませんでした。(笑)
【現場監督者】
私どもは、区から委託されてこの仕事をしているのですが、さすがに、確認してすぐに撤去してはいません。
条例からするとそれでもいいのですが、それではあんまりですからね。
【私】
なるほど。
【現場監督者】
だから、一度確認した後、少し時間を空けて再度確認し、それでもまだ放置されているようであれば、撤去するようにしています。
【私】
なるほど。
(請求書の必要事項を記入し終え、現場担当者(B)へ声をかける。)
こちら、これでよろしいですか?
【現場担当者(B)】
はい。
ありがとうございます。(礼)
【現場監督者】
ありがとうございます。(礼)
【私】
(現場監督者に対して話しかける。)
しっかし、みなさん、すごくハートフルなサービスをされますよね。
以前一度だけ他の区に引き取りに行きましたが、こちらとは大違いで、すごく酷かったです。
ちょっとお尋ねしてもよろしいですか?
【現場監督者】
はい、何でしょう。
【私】
こちらへ入ってくるなり大声で挨拶をしたり、自転車を引き渡す前にサドルを拭くなど、みなさんチームワーク良く動かれていますが、そうしたことをするよう、区もしくは会社から指示されているのでしょうか?
【現場監督者】
いえ、そういった指示は全くありません。
全て、自分達が自主的にやっていることです。
【私】
自主的にやっておられることなんですか。
それは、すごいですね。
これまで、みなさん、接客業をしておられたとかなのでしょうか?
【現場監督者】
他の者の職歴は詳しく知りませんが、少なくとも私は違います。
現役の時は、公務員をしていましたから。(笑)
【私】
公務員をなさっていたのですか。
失礼ですが、そんな風には全く見えません。
公務員というと・・・。
【現場監督者】
机とにらめっこしている・・・といった感じですよね。(笑)
たしかに、そういう者は多かったですね。
ただ、私は、当時から、そういうのはダメで、(お客さまと)話ばかりしていました。(笑)
【私】
(胸に付いている名札を確認する。)
Sさんのような方が公務員にも居るんですね。
驚きました。
でも、そうなると、元々接客業を生業としておられた訳ではないにも関わらず、みなさんがあのような素晴らしいサービスをなさるのはなぜなのでしょう?これまた失礼な言い方ですが、みなさんのお仕事は撤収された自転車を引き渡すことであって、あのようなサービスは必ずしもやる必要がないじゃないですか・・・。
【Sさん】
たしかに、そうですね。
やる必要性は無いですね。
ただ、この仕事はトラブルが付き物なんですよ。
【私】
トラブルと言うと?
【Sさん】
ここに来られるお客さまは、基本的にカッカしていますし、色々なお考えをお持ちです。
「俺の自転車を勝手に持っていきやがって、お前らドロボーだ!」とか、「撤去料が2,000円もするなんて、お前ら儲けてやがって!」とか、「2,000円をまけてくれないか?」などなど、色んなことを言われます。
ここで働いている者は、子供じゃありません。
みんな、自分で考え、行動できます。
だから、私たちは、そうしたカッカした気持ちを荒立てないように雑談口調で話すほか、お客さまの気持ちを汲んで、各自、自主的に行動しているだけです。
特に「これをやろう!」と取り決めていることはありませんが、みんなでこうしていると、お客さまの多くは高ぶっていた気持ちが和らぎ、笑顔で帰られます。
きっと、そういうお客さまは、「もう自転車を放置するのはやめよう」と思ってくれているでしょう。
【私】
なるほど、みなさん、すごいお考えですね。
お客さまの気持ちをなだめつつ、2,000円を払うに足る価値を創ろうと自助努力されている訳ですね。
すごく感心させられました。
そうそう、今おっしゃったことでひとつ確認させてもらってもいいですか?
【Sさん】
はい。
何でしょう?
【私】
みなさんをあのようなサービスに駆り立たせる最も強い思いは、「カッカしているお客さまの気持ちをそれ以上カッカしないようなだめたい」という思いなのでしょうか?それとも、「放置行為の再発を防ぎたい」という思いなのでしょうか?
【Sさん】
再発を防止する方ですね。
みんなが住み易くなるよう、ルールを守ってもらいたいですからね。
【私】
そうですか。
素晴らしい志をお持ちですね。
そのような志があるから、あのようなすごいサービスができるんですね。
【Sさん】
いえいえ、そんな大したものではありません。
私は、今、66歳です。
定年退職した後、働きたくて、「お金は二の次でいいから、是非働かせて欲しい!」と言って、いくつの企業にも応募しました。
でも、どこも、年齢でひっかっかってダメでした。
今勤めている会社の社長は、「年齢ではなく、本人のやる気と能力を重視する」という考えを持っています。
そう何度もお会いしたことはありませんが、素晴らしい方だと聞いています。
折角、仕事ができる環境を与えてもらった以上、「一所懸命やって、恩に報いたい!」、という気持ちはあります。
【私】
Sさんは、うかがえばうかがうほど、素晴らしいお考えをお持ちですね。(笑)
ちなみに、他の方も同じお考えなのでしょうか?
【Sさん】
今は、そうです。
【私】
「今は」ということは、最初はそうじゃなかったんですね?
【Sさん】
はい、そうです。
ここの所長をやっているあの者を除くと、他の者は結構若いんです。
私は、お陰さまで、ここを含む数ヶ所の移設所の管理を任されています。
でも、だからと言って、ふんぞり返ったりしません。
みんなに、さっき申し上げた(放置)再発防止のことや、「お客さまにとって、自転車は財産だ。我々はその財産を一時お預かりしているのだから、大事に預かり、綺麗にしてお返ししなくてはいけない。」と言いながら、「その為にできることは何かないか?」と常に考えながら動いています。
サドルを拭いたり、タイヤの空気を足すのは、そうしていたら生まれたアイデアです。
【私】
なるほど、なるほど。
【Sさん】
あと、嫌なことこそ率先してやるようにしています。
それに元々私は、「やる以上はしっかりやらないと、自分の身にならない。」と考える性質なんです。(笑)
そんな思いで、あの所長と二人で頑張っている内に、若いみんなも一緒に色々とやるようになってくれました。
【私】
やっぱり、リーダーは、自分を信じ、自らの信念を行動にし、それをやり続けるべし、ということですね。
いやいや、もうすっかり感動しちゃいました。
このような素晴らしいお話をうかがうことができ、私、放置自転車として撤収されて良かったです。(笑)
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通常、このような施設では考えられないくらいホットなサービスだと思います。基本的に移送所でのサービスというものがあること自体驚きました。
>あの所長と二人で頑張っている内に、若いみんなも一緒に色々とやるようになってくれました。
上記の内容をを実戦することは相当難しい事だと思います。
Sさんが信頼でき、また尊敬できる人だから、若い皆さんが一緒になってくれるのでしょう。
Posted by kazz at 2006年06月27日 22:45

素敵な出会いですね。
椅子の上の座布団にも現れてますね、想いが。
Posted by ミヤモト at 2006年06月28日 00:50

kazzさん(その1)
この記事は、必ずやkazzさんの参考になると思って書きましたので、コメントを頂けて嬉しいです。(笑)
> Sさんが信頼でき、また尊敬できる人だから、若い皆さんが一緒になってくれるのでしょう。
現在、現場の若い担当者の方々が、Sさんを尊敬&信頼し、Sさんと一緒になって頑張っておられる、というのは間違いないと思います。
が、彼らは、必ずしも最初からSさんに対し、同様の心情を抱いてはいなかったのではないか、と私は想像しています。(→以下へ続く)
(※コメントが長くなったので、三分割させていただきます。)
Posted by 堀 at 2006年06月28日 07:59

kazzさん(その2)
Sさんが、自分の信念をひとつひとつ行動化していった過程には、きっと、多くの失敗や焦りがあったと思います。
でも、Sさんは、それでも凹み過ぎることなく、またひとつ、またもうひとつ、とアイデアを出しては行動に移していったのだと思います。
そうした孤軍奮闘&悪戦苦闘の中で、お客さまが満足する(=お客さまが笑顔になる)アイデアが、ひとつ、またひとつ、増えていった。
彼らは、この過程(=プロセス)を見ているうちに、Sさんを尊敬&信頼するようになり、結果、Sさんと考え&行動を一緒にするようになっていったのではないか、と私は想像しています。(→以下へ続く)
Posted by 堀 at 2006年06月28日 08:02

kazzさん(その3)
尊敬や信頼とは、プロセス、即ち、「自分の生き様」を肯定評価してもらえた人に抱いてもらえる心情です。
ゆえに、他者から尊敬や信頼を得たいと心底思うのであれば、自分がやるべきプロセスを貫徹することが何より大事である、と私は考えます。
蛇足が極めて長くなり、すみません。
ご異論があれば、またコメント願います。(笑)
Posted by 堀 at 2006年06月28日 08:10
ミヤモトさん
> 椅子の上の座布団にも現れてますね、想いが。
想いは、何らか形になりますよね〜。
ミヤモトさんにも想いを感じていただけて、嬉しいです。
> 椅子の上の座布団にも現れてますね、想いが。
想いは、何らか形になりますよね〜。
ミヤモトさんにも想いを感じていただけて、嬉しいです。
Posted by 堀 at 2006年06月28日 08:16