2006年09月16日

はてなの近藤淳也社長のシリコンバレー移住を大いに支持するの巻

私は、はてなの社長を務める近藤淳也さんが好きだ。
なぜならば、近藤さんは、私が好み、かつ、志向する、「ヘンな」人だからだ。(笑)

私が近藤さんを初めて「ヘンな」人だと思ったのは、今年の5月のこと。
当時、近藤さんは、「カンブリア宮殿」というテレビ番組に出演し、視聴者から寄せられた、「『起業する』と口では言うものの一向に行動しない、最近ヒモっぽくなってきている彼と別れた方が良いか否か?」という悩みに、以下の旨を回答した。
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そうした一連の行動は、あなたが彼をボーイフレンドとして認め続けるべきか否かの判断基準にならない。
それはそれとして、彼は、「起業する」と言っている以上、早々に起業すべきだ。
もし、それができないのであれば、「起業する」と言ってはいけない。
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近藤さんの回答は、回答になっていない。(笑)
というのも、「彼と別れた方が良いか否か?」という問いに、何も回答していないからだ。
それどころか、問いそのものがナンセンス、即ち、成立し得ないのではないか、と提起している。
このような回答は、ややもすると、「論理的思考力やコミュニケーション力が欠けている表われ」と評される。
不特定多数が視聴するテレビ番組の中でこのような回答した近藤さんは、「ヘンな」人だ。(笑)

しかしながら、私は、近藤さんの回答にとても得心させられた。
他人の問いに回答する際に最も大事なのは、問いに対して合理的に回答することではなく、問いを生じせしめた真因に意見すること、即ち、真因の解決行動を提案することだ。
近藤さんの回答には、彼ならではのロジック(哲学)と意見がある。

連席していたミクシィの笠原健治社長は、以下の旨を回答した。

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別れた方がいい。
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笠原さんは、問いをそのまま受け入れ、「普通の」回答を述べた。(笑)
近藤さんが「ヘンな」人に思えたのは、笠原さんの回答があまりに「普通」だったから、というのもあったりする。(笑)

ちなみに、これまで私が使ってきた「普通の」と「ヘンな」という言葉の意味は、以下の通りだ。

●普通の→ありきたりの、前例に忠実な、想定内の考えや行いをする、大多数の考えに盲従する、「こんなものだ」と言われている考えに忠実な、新しいものや考えに関心が低い
●ヘンな→唯一無比の、前例にとらわれない、想定外の考えや行いをする、大多数の考えに盲従しない、「こんなものだ」と言われている考えに挑戦する、新しいものや変考えに関心が高い

過日、私は、近藤さんの7月14日付ブログに付された「ITMediaインタビュー(※音声ファイル)」を聞いた。
そして、近藤さんが「ヘンな」人であることを確信すると共に、近藤さんが益々好きになった。(笑)

私が近藤さんを「ヘンな」人であることを確信したのは、近藤さんが、はてなの成長が鈍化することを想定した上で、ITの聖地であるシリコンバレーへ最低2、3年移住する(自らが米国の子会社を設立する)ことを決心したからだ。

近藤さんは、以下をシリコンバレー移住理由として述べている。

1.「スター・ウォーズ・エピソード3」を観て、30歳の今、東京で「ヌクヌク」しているのは、能力開発的かつ精神的に良くない、と思ったから。

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20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
2005-11-23


2.英語を使ったサービスを始めたいから。
3.googleyahooといった優れたIT企業と親交を深めたり、アライアンスを本格的に組みたいから。
4.日本発の、世界で通用するインターネットサービスの先駆けとなりたいから。

これらの中に、過ちと呼べるものは無い。
が、経営トップが不在である以上、はてな本社の成長は高確率で鈍化しよう。
近藤さんはこれを同意した上で、以下の旨を述べている。

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株式上場を果たす場合、その時期は遅れるかもしれない。
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なぜ、近藤さんは、成長の鈍化を想定していながら、シリコンバレーへの移住を決断できたのか。
近藤さんをシリコンバレーへ向かわせた最大のエンジンは、一体何なのか。

それは、自身が経営するはてなが「ヘン」な会社であり続けることに対する強烈な危機感、ではないだろうか。
近藤さんは、その危機感を払拭するには、経営者である自身が「ヘンな」人であり続けなければならず、ついては、自身の「ヘンな」人度合いを高確率で研鑽できるシリコンバレーへ移住するのが現時点での最適解である、と考えたのではないだろうか。

私がこのように推量したのは、近藤さんが、以下の二つを強く案じていたからだ。

1.はてなが、大きな会社になるにつれて、「ヘンな」会社から「普通の」会社へ変わってしまうこと。
2.自分が、このまま本社がある東京で働き続けることで、「ヘンな」人から「普通の」人に変わってしまうこと。
(※これらの旨を述べた近藤さんのインタビューコメントは、文末に転載。)

私は、これらを大いに支持する。
なぜならば、会社の存在価値は、詰まるところ、保有している競合優位の内容と品質で決まり、そして、それらは、会社、即ち、経営者と社員の「ヘンな」度合いで決まるからだ。
「ヘンな」人が経営し、「ヘンな」社員が多い、「ヘンな」会社は、社外マーケティングさえミスしなければ、特定のお客さまに必ず愛されるものだ。

私は、近藤さんほど、「ヘンな」会社、「ヘンな」人であり続けることに自助努力している人を知らない。
私は、近藤さんのシリコンバレー移住が、はてなの、そして、ご自身の長期的成功を果たす好機となるよう祈念すると共に、キャタリストと自分を、もっともっと、「ヘンな」会社、「ヘンな」人にするよう自助努力に励む所存だ。


追伸)近藤さん、自分も近藤さんと同じ理由で、電車が嫌いです。(笑)





【ご参考】

近藤さんが強く案じていることその1〜はてなが、大きな会社になるにつれて、「ヘンな」会社から「普通の」会社へ変わってしまうこと。

はてなへ転職してきてくれた人は、次のようなことが楽しいと言ってくれる。

★動きが早いこと。
★意思決定プロセスが柔軟なこと。
★色んなことに意見が言えること。

だから、私は、はてなの経営者として、こうしたことができる風土を守りたいと思っている。
しかしながら、周りから、次のように脅される。(笑)

◆はてなも、会社の規模が大きくなれば、「普通の」会社にならざるを得ない。

ちなみに、私が抱いている「普通の」会社のイメージは、以下の通りだ。

▲組織はピラミッド構造。
▲何かを決めようと思ったら、上司から何度もはんこをもらわなくてはいけない。
▲社員は、みんなつまらなそうに働いていて、上司に文句ばかり言っている。

でも、私は、先の脅しは違うと思う。
「普通の」の会社になるか否かは、経営者のやり方次第なのではないだろうか。

それが証拠に、googleのような会社もあるではないか。
googleは、大きな会社になったが、今尚、僕らから見ても良いと思う製品を出してくる。
これは、googleには良い組織、風土がある、ということだ。
社員が「僕、こんな面白いものを創ったんだけど」と言い、上司がそれに対して「それでいくら儲かるんだ」と詰問し、挙句潰してしまうような組織、風土であれば、そのような製品は出てこない。
きっと、経営者が、社内にそうした力学が働かないよう、組織や風土を整備しているに違いない。

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近藤さんが強く案じていること2〜自分が、このまま本社がある東京で働き続けることで、「ヘンな」人から「普通の」人に変わってしまうこと。>

シリコンバレーに行くと、「君のビジネスはなんだ〜い。ちなみに、僕はこういうことをやっているんだよ〜。」と言ってくる人が多い。
でも、東京だと、そういう人は滅多に居ない。

東京で働いていてつくづく思うのは、嫌そうに生きている人が多い、ということだ。
特に、電車に乗った時、それを痛感する。
だから、私は、電車が苦手だ。(笑)

電車に乗っている人の多くは、つまらなそうな、不満そうな顔をしている。
私は、つまならいと思うことが殆ど無いので、そうした人を見ると、怖いし、悲しい気持ちなる。

私は、怖い顔をして電車に乗るのは軽犯罪だと思う。(笑)
というのも、そういう顔を見ると、傷つくからだ。(笑)
電車に乗る時は、予め相当心構えをしておかないと、負ける、というか、落ち込んでしまう。

車内に居る人は、お互い、憎み合って生きている、マイナスの感情を持って生きているように見える。(笑)
満員電車を降りる時、お互いがぶつかっても、「すいません」、という人が居ない。
ぶつかっても、「私はあなたにとって障害物なんだな」、としか思っていない。
それは、人間らしくない、と思う。

私は、豊かさとは、人に与えられることだと思う。
与えられるということは、余っている、つまり、自分が必要な分以上に持っているということだ。
東京は豊かだと言われているが、果たして本当にそうなのだろうか。
私はそう思わない。
というのも、電車の中で行われていることが、「与える」ではなく、「奪っている」だからだ。
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