2006年10月11日

ブレインゲイトの酒井光雄社長の講話を聴くの巻

夜、私は、マーケティングコンサルティング会社、ブレインゲイトの代表である酒井光雄さんが講師を務める「日経MJセミナー」に参加した。
私は、酒井さんの講話から再認識を頂戴した一方、誠に恐縮ながら、違和感をいくつか抱いた。

講話の内容は以下の通りだ。
1.マーケティング「8つのウソ」
(1)調査データがないものは信用しない!
(2)お勉強のできる人材ほど、仕事ができる!
(3)顧客の不満を解消すれば、売れる!
(4)キャンペーンや販促とは、顧客を見つけるためのワナだ!
(5)こうすれば儲かる!
(6)うまくいかないのは、業界や市場のせいだ!
7)新聞の広告は効かない!
(8)顧客は浮気性だ!

2.マーケティング「8つのホント」
1)自分が顧客になる
(2)顧客の心をつかめる人が、顧客を創造する
(3)顧客の潜在欲求を掘り起こす
(4)キャンペーンや販促は、顧客が望んでいることをニュースにすること
(5)利益を生む源泉は、顧客
(6)消費の優先順位を向上させる
7)顧客を明確に特定すれば,新聞広告は届く
(8)男性こそ最高の顧客

3.ビジネスチャンスを発見するために、見えないものを見る力を発揮する「5つの方法」
(1)顧客の視点とプロの視点で体験し、複眼で顧客の行動を見て、考える
(2)自分で皮膚感覚がない顧客を相手にビジネスするなら、徹底的に観察して、深層心理をつかむ
(3)ネットではトライ&エラーを繰り返して、ノウハウを積む。
(4)判断基準を高度化させ、業界のワナにハマっている点を見つける。
(5)異世代や女性と積極的に交流し、世代や性差による商品選択基準と選択方法の違いを知る

上記の内容の内、私が、強く再認識したのは、2(1)だ。

酒井さんは、2(1)を、以下の旨にて説明された。

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新商品を開発、販売する際、定量調査の結果よりも、「商品として流通された時、自分がその商品を買いたい(=その商品を開発した会社の顧客になりたい)と思えるか?」という視点を大事にすべきだ。
これから開発、販売しようとする商品がこの視点に則っている時、それら業務プロセスに対する社員の関与度合いは非常に高くなる。
今、この視点に則って開発、販売されている商品は、結構ヒットしている。

ヴァージン・グループの会長のリチャード・ブランソンさんは、ヴァージンの飛行機が発着する●●空港へ行くのに、水陸両用車でテムズ川を渡れないか、と考えた。
そして、彼は、自分と同じことを考えている空港利用者が必ずや居、その方は水陸両用車が開発、販売されれば買うのではないか、と考えた。
彼は、水陸両用車アクアダを創り、自ら第一号顧客となった。


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商品の開発と販売において最適行動を選択することは、非常に難しい。
だからこそ、それらを行う際、作り手や売り手の視点のみならず、買い手の視点に即すことが欠かせない。
なぜならば、とかく、商品の作り手や売り手は、最適行動の選択基準を、以下の事項に集中してしまう嫌いがあるからだ。

1.それは、自分達を、早期に儲けさせてくれるか?
2.それは、自分達にとって、コスト負担が少なくて済むか?
3.それは、自分達にとって、リスク負担が少なくて済むか?
4.それは、競合企業のそれと比べて、見劣りしないか?
5.それは、競合企業のそれと比べて、優れているか?

これらはいずれも大事なことだ。
しかしながら、「商品の開発と販売が成立する」、即ち、「対象顧客に開発した商品を買っていただく」ためには、以下の事項が欠かせない。

6.それは、競合優位を持っているか?
7.それは、どうしたら、競合優位性を高める(=お客さまに競合企業のそれよりも価値が優れていると強く認識していただく)ことができるか?

報道によると、現在、トヨタのレクサス事業は苦戦している。
もし、レクサスの事業を開発しておられる方が、1〜5のみならず、6と7を正しく認識すると共に、それらを達成する然るべき社外マーケティングプランを案出、実行しておられたら、営業スタッフは、現車説明の折、やみくもに膝を床につけなかったのはもちろん、販売実績の目標達成率は、今よりも高くなっていたのではないだろうか。

講話の内容の内、私が、強い違和感を抱いたのは、1(7)2(7)だ。

酒井さんは、いずれの内容を説明する際にも、以下のように述べた。
ターゲットやアプローチを適正化することで、マスメディアとしての新聞は、高い広告宣伝効果を発揮する」。

本セミナーの主催企業は、日本経済新聞社だ。
酒井さんの、クライアントに対するロイヤリティの高さは、見習うべきものだ。(笑)

それはそれとして、私は、このメッセージそのものは”ホント”であると考え、何の違和感も抱かなかった。
私が強い違和感を抱いたのは、このメッセージの論拠として挙げた、新聞とインターネットのメディア性に関する以下の旨の私見だ。

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新聞は公器であり、信頼性が高いメディアだ。
新聞購読者、即ち、有料情報を積極的に収集する人は、ショッピングに対しても積極的だ。

インターネットは、信頼性が高いメディアとは言えない。
インターネットユーザー、即ち、情報は無料で収集できると思っている人は、ショッピングに対して非積極的だ(=モノを買わない)。


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私は、酒井さんの私見を全否定こそしない。
が、酒井さんの私見が当てはまる人は、酒井さんと同じ50代、並びに、その上の世代の方だと思う。

今や、40代以下のビジネスマンであれば、情報発信者が制限されていたり、特定の利害関係者と結託しているメディアの情報は、有料であるか否かの別なく、玉石混交の「石」に出くわす確率こそ低いものの、信頼性に限りがあることを知っている。
彼らは、なぜ、新聞各社が、政治の意思決定に関して、それぞれ異なる解釈にてメッセージングをしているか、知っている。
彼らは、なぜ、新聞各社が、トヨタを筆頭とする大広告主に対して、ネガティブなメッセージングをあまりしないか、知っている。

今や、40代以下のビジネスマンであれば、情報発信者が制限されていない、特定の利害関係者と結託していないメディアの情報は、玉石混交の「石」に出くわす確率が高いものの、合理性や妥当性を自らが能動的に評価すれば、既存メディアを遥かに凌ぐ高い信頼性を達成することを知っている。
彼らがgoogleYahooを愛用するのは、使用料金がチャージされないから、だけでなく、時間や労力をさほど取られずに、自分が信頼できる情報を収集できる確率が高いから、である。
彼らがamazonを愛用するのは、既存書店の対応が非顧客本位的だから、とか、ワンクリックで注文できることによって購買コストが低減されるから、だけでなく、カスタマーレビュー(=ユーザーの書評)を読み比べることによって該当商品の価値が予見でき、結果、自らの手で有益な情報を収集できた嬉しさと相まって、購買意欲がいや増されるから、である。

私は、酒井さんの私見を、先のお言葉を受け、僭越ながら以下のように再解釈した。

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新聞は、以下の人から支持、信頼を得ているメディアであり、これらの人を対象顧客とする商品の広告宣伝効果は相応にある。

1.収集情報が信頼できるか否かの判断を、他者(権威や普遍性)に委ねる人。
2.情報の合理性や妥当性を能動的に評価する習慣や能力が乏しい人。
3.新聞というメディアと親和性が高い人。
4.インターネット関連の技術に習熟していない、又は、習熟したいと思っていない人。

インターネットは、以下の人から支持、信頼を得ているメディアであり、これらの人を対象顧客とする商品の広告宣伝効果は相応にある。

1.収集情報が信頼できるか否かの判断を、必ず自分で行う人。
2.情報の合理性や妥当性を能動的に評価する習慣や能力がある人。
3.既存のマスメディア(が提供する情報の品質)に懐疑を抱いている人。
4.インターネット関連の技術に習熟している、もしくは、習熟したいと思っている人。

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いずれにせよ、今日、酒井さんから多くの再認識を頂戴したのは、間違いない。
私は、マーケティングコンサルタントの大先輩である酒井さんに、この場を借りて改めてお礼を申し上げたい。(礼)



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