2008年01月23日

佐藤康光さんが出演した「情熱大陸」の録画を見るの巻

昨日、将棋棋士の佐藤康光さんが出演した「情熱大陸(2007年12月16日放映分)」の録画を見た。
私は、「なぜ、佐藤さんは強いのか?」、「なぜ、佐藤さんは強いながらもタイトルに恵まれないのか?()」をうかがい知ると同時に、佐藤さんの生き方に強い共感を覚えた。
なぜ、佐藤さんは強いのか?
それは、プロセスを「この程度でいい」と考えない(←佐藤さん談「『この程度でいいかな』という思想は持ちたくない」)から、だ。
例えば、佐藤さんは、他の強豪棋士よりも遥かに多くの手を深く読む。
それは、あたかも、数学で言う「場合の数」を全て洗い出しているように思えた。
過去の経験や直感に依存せず、可能性を合理的かつトコトン探求するのだから、最善手を見出せる確率は自ずと高くなる。

なぜ、佐藤さんは強いながらもタイトルに恵まれないのか?
それは、プロセスを「この程度でいい」と考えないから、だ。
例えば、佐藤さんは、タイトル戦であっても、他の強豪棋士よりも遥かにユニークかつリスキーな手を選好する。
それはあたかも、「対戦相手」ではなく、「過去の自分」に勝とうとしているように思えた。
「対戦相手」に勝つことを優先すべき時に「過去の自分」に勝つことを志向しているのだから、タイトルを獲得する確率は自ずと低くなる。

これらのことから言えるのは、「プロセスに『妥協しない』というのは両刃の剣である」、ということだ。
正の効用は、「プロセスの質と量が高まること」であり、ひいては、「目的の達成確率が高まること」だ。
負の効用は、「プロセスを目的と誤認してしまうこと」であり、ひいては、「プロセスにのめり込み過ぎてしまうこと」だ。

私が佐藤さんの生き方に強い共感を覚えたのは、佐藤さんが、負の効用を甘受しながら、プロセスに「妥協しない」生き方を積極選択しているようにうかがえたから、だ。
佐藤さんが、「この程度でいい」という考えを持たないよう、あえてユニークかつリスキーな手を指しているさまは、男の私でも惚れ惚れした。

ただ、もしかすると、佐藤さんの場合、プロセスに「妥協しない」ことがもたらす負の効用は無いのかもしれない。
なぜなら、佐藤さんは、ご自身の棋士という職業を、天職や命に例えたから、だ。
佐藤さんにとってプロセスは、タイトルを獲得するためのものではなく、天命を全うするためのものなのかもしれない。

ちなみに、私にも天命がある
私も、佐藤さんに負けないよう、自らの天命を全うしたい。


)タイトルの獲得数と登場数(2007年10月3日現在)
1位:大山康治さん→50、112
2位;羽生善治さん→67、86
3位:中原誠さん→64、91
4位:谷川浩司さん→27、57
5位:米長邦雄さん→19、48
6位:佐藤康光さん→11、30



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この記事へのコメント
3
以前、羽生さんの記事に投稿させていただいた、もえもえです。
その投稿当時、A級順位戦で低迷していた羽生さんですが、なんと現在7勝1敗で単独首位です!
ビックリドッキリメカ発進!という感じでしょうか。
このまま名人戦まで突っ走って、是非とも永世名人を!と思いますね。

因みに本記事に登場した佐藤康光棋聖は、A級順位戦でまさかまさかの2勝6敗で、B級降格ギリギリ。
初戦から6連敗というのも凄いですが、佐藤棋聖らしいと言えば、らしいですかねぇ。

因みに、堀さんの書かれている「この程度でいい」という概念が将棋では特に重要なため、まだコンピュータよりもプロ棋士の方が優位であるという話も、耳にした事があります。(羽生さんは、何かの書籍で「捨てる」という表現を使われていたように記憶していますが)
Posted by もえもえ at 2008年02月06日 22:04
もえもえさん

こんにちは、もえもえさん。
堀です。
羽生さんの記事に引き続き、考えさせられるコメントをありがとうございます。(礼)

羽生さんの永世名人成りは、私も「是非とも!」と思って止みません!
佐藤さんの2勝6敗は、「この程度でいい」と考えないことによる一時的&過渡期的な結果なのでしょうね。
「強いこと」と「勝つこと」が必ずしもリンクしないところにも、将棋の魅力があるのかもしれません。
Posted by at 2008年02月07日 07:43
ご存じかもしれませんが、本日の読売新聞朝刊1〜2面に、羽生さんが登場してます。(大局観について述べられておられます)
また、明日の22時から、NHKの「プロフェッショナル 仕事の流儀」で、羽生さんの回が再放送されるようです。
生放送される「将棋界の一番長い日」に向けて、NHKも準備万端という感じでしょうか。
では、また。
Posted by もえもえ at 2008年02月25日 21:50
「将棋LOVE」&「将棋情報通」のもえもえさん(笑)

有意義な情報をありがとうございます。(礼)
読売新聞の記事と「将棋界の一番長い日」については存じておりませんでしたので、心から感謝です。(敬礼)

「将棋界の一番長い日」は生放送とのこと。
いつ放送されるのか、どのような内容になるのかわかりかねますが、ファンとしてはとても楽しみです!
Posted by at 2008年02月26日 08:12