2008年10月01日

福岡ソフトバンクホークスの王貞治監督が今期で監督を退くのが寂しい理由を考えるの巻

先週、福岡ソフトバンクホークスの王貞治監督が今期で監督を退く旨を発表なさった。
私は、王さんが下した意思決定にとても驚いた。

同時に、私は、「来るべきものが来た感」を抱いた。
なぜなら、胃がんを患ってからの王さんは、頬がこけ、「人間サンドバック」である監督業を全うするには素人目でも辛そうだったからだ。

王さんの意思決定について、マスメディアは、連日、「野球界の損失である」旨コメントすると共に、「野球ファンの多くが寂しさを感じている」旨報じている。
正直私も、ユニフォーム姿の王さんが金輪際グラウンドで見られないのは、寂しい。(涙)

なぜ、私たち日本人野球ファンは、王さんの意思決定から寂しさを感じるのか。
誤解を恐れずに言えば、つまるところ、「王さんに抱いたのと同レベルの肯定感情が、この先一生抱けない怖れを直感するから」、だと思う。
私たち日本人野球ファンが王さんに抱いた肯定感情の源は、王さんならではの専門性と人となりだ。
王さんの専門性が格別なのは言うまでもないが、王さんの人となりも格別だ。

王さんは、一本足打法を、荒川博コーチと自助努力を尽くし切って創り上げた。
また、王さんは、巨人の監督を事実上更迭された時も、戦力も士気もどん底のダイエーホークスでCクラスを温めていた時も、他者を批判したり、他者へ責任を転嫁したりしなかった。
王さんは、ライバルや味方は多数居たものの、敵は居なかったに違いない。

王さんは、50年もの間、野球を通じて私たちに、「プロフェッショナルであること、あり続けることの意義と喜び」、「ナンバーワン(他者に勝つこと)を志向すること、志向し続けることの意義と喜び」、「問題の原因を他者ではなく自分に見出すことの重要性」、を教示くださった。
2006年のWBCで王監督から薫陶を受けたイチロー選手が、今年213本安打を実現しペドロイア(ボストン・レッドソックス)と並んで安打数トップを達成したものの、「一番になりたかった。僕はナンバーワンになりたい人。オンリーワンの方がいい、なんて言っている甘い奴が大嫌い。競争の世界に生きている者としてはね」とコメントした(※)のも、これらの教示と無関係ではなかろう。

王さんに匹敵する専門性と人となりを有し、王さんの後継者となり得る野球人は誰か。
やはりイチローさんだろう。
残念ながら、日本の野球界では見当たらない。
私たち日本人野球ファンが先述の怖れを直感するのは、自然だ。

もちろん、「王貞治という不世出の名野球人を失ってしまうから」、という率直な思いもある。
が、そもそも人の体力や生命は有限であり、王さんの後継者たる野球人が見当たれば、私たち野球ファンがこの思いを引きずることはなかったに違いない。

ちなみに、衰退企業(組織/チーム)の特徴の一つは、デキる後継者を輩出する仕組み(システム)が無かったり、有っても機能していなかったりすることだ。
該当企業では、デキる経営者や上司が勇退を意思決定すると、残った者が寂しさや喪失感ばかり延々感じ、歓送会ならぬ惜別会を催していたりする。

チームマネージャーだった王さんには申し訳ないが、経験に基づく推量では、ホークスはこのクチだ。
なぜなら、王さんとはいかなくとも、かつて黄金時代を築いた秋山選手(※次期監督)や城島選手や松中選手らの後継者さえ見当たらないからだ。

王さんの意思決定を尊重すること。
王さんに「長い間本当にお疲れさまでした&ありがとうございました」と謝意を表すこと。
自らが所属する組織の<デキる後継者輩出システム>の存在と機能度合いを確認すること。

王さんの意思決定を聞いた私たち大人の(笑)日本人野球ファンが、ひとまず今すべきこと。
それは、これらではないだろうか。


(※)2008年9月30日付スポーツ報知の記事↓より引用
http://hochi.yomiuri.co.jp/mlb/news/20080930-OHT1T00083.htm









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