2008年10月05日

報道記事<TDL成人式:「経費1人6,270円」浦安議会で疑問の声>を自戒の念を込めて総括するの巻




【1】物事を行う際は予め目的を明確にすべし!

成人式というイベントは、地方自治体が、自らの市町村に居住する成人男女を対象するサービスだ。
ゆえに、成人式を実施する際先ず明確にすべきは、「どこでやるか?」(=実施場所)ではなく、「なぜやるか?」(=実施目的)だ。

「浦安市に居住し、当年成人となる男女に成人式へ参加いただき、○○という気持ちになってもらい、××までに△△という行動を起こしてもらいたいから」。
これはあくまで例示だが、地方自治体である浦安市は、成人式というサービスを実施する目的をこのように明らかにしてこなかったのではないか、と私は推量する。

この推量がアタリであれば、この問題の元凶は、ここにある。
目的が明確に定義されていない行動は、成功しない。

なぜ、浦安市は、成人式の実施目的を明確に定義してこなかったのか。
それは、つまるところ、浦安市役所の意思決定権者の思考が、「浦安市は、他の地方自治体と同様、毎年成人の日に、浦安市に居住する成人男女を対象とする成人式なるイベントをやればいい」旨停止しているから、だと私は推量する。

「目的が明確に定義されていないイベント」は、参加者の立場からすると「参加すべき理由(参加するといい理由)が見えない」→「参加意欲が湧かない」イベントだ。
浦安市に限らず、昨今成人男女が成人式へ参加しなくなったのは、「参加すべき理由が見えない」&「思考停止オヤジのルーティンワーク臭漂う」イベントだから、だと私は思う。

余談だが、堀江貴文さんが社長を務めていた時のライブドアは、4月の入社式を実施していなかった。
その理由の多くは、同社が通年採用を実施していたからだと聞いているが、当時堀江さんが入社式を実施すべき目的(=新卒社員を対象とする入社式を実施した際の「ライブドアにとって良い理由」&「新入社員にとって良い理由」)を見出せなかったから、というのも相応にあるのではないか、と私は推量している。
実施目的が見出せない入社式を廃した堀江さんの経営判断は、正しい。

実施目的が明確に定義されていないことは、どのような弊害をもたらすか。
それは、主に二つある。

一つ目。
それは、目的を達成する最善手段が策定できないことだ。

当然、実施場所として東京ディズニーランドを選択することの是非など、判断できない。
数多ある市内の実施可能場所をさしおいて、東京ディズニーランドで成人式を実施すべき理由は何か。
該当記事からは見えないし、実施目的が明確に定義されていない以上存在する訳がない。

断っておくが、参加率や“荒れない”率の向上は、東京ディズニーランドで実施すべき理由ではない。
そもそも「対象者が参加しない」とか「参加者が進行を妨げる」というのは、成人男女が浦安市の提供する成人式というサービスに期待を抱いていない、即ち、不要と判断している、ということだ。
その部分にメスを入れることなく、参加率や“荒れない”率の向上を理由に東京ディズニーランドを実施場所として選択することは、被弾した弾を摘出せず表皮に絆創膏を貼るようなものであり、「成人式」を「成人男女向け東京ディズニーランド無料招待イベント」へ貶めることと同義だ。

二つ目。
それは、費用対効果を計画&検証できないことだ。
これについては、以下【2】で述べたい。


【2】費用が無駄か否かは客観的に判断すべし!

該当記事は、実施費用(770万円)が参加者一人当たり換算(6,270円)で他の地方自治体を大きく上回っているからして、東京ディズニーランドで成人式を行うのは無駄である旨報じている。
私は、この考え(ロジック)はナンセンスだと思う。

というのも、成人式は、地方自治体が、自身の財源を活用し、自身の市町村に居住する成人男女を対象とするサービスであるからだ。
なぜ、人口&マーケット特性や財務状況が異なる他の地方自治体と足並みをそろえたり、釣り合いや公平性を重視しなければいけないのか、私は合理的に解釈することができない。

この考え(ロジック)は、例えるなら、収益が良い企業が、収益が悪い企業の決算書を見て、「弊社は、ヨソの会社と比べて社員一人当たりの研修費が突出しており、無駄なので次年度から社内研修を廃止する」、と言っているようなものだ。
たしかに、このようなナンセンスな経営判断が行われている企業はゼロではないが、該当企業は高確率で衰退していっている。

なぜ、浦安市は、他の地方自治体との足並みや釣り合いを重視するのか。
それは、つまるところ、浦安市役所の意思決定権者が、責任やリスクを回避したがっているからか、思考停止のまま単に前例にならっているからか、のいずれかか両方だ、と私は推量する。

なぜ、彼らは、こうした考えや行動習慣を固持するのか。
それは、つまるところ、地方自治体としての浦安市が、過去から現在に至る業績評価制度を通じて、同市に居住する成人男女の満足よりも自分の保身を優先するインセンティブ(誘因)を彼らに与えてきたから、だと私は推量する。
人は、評価されない方向や基準に自らを行動せしめたりしない。

また、東京ディズニーランドで実施する費用が無駄である旨を、総額や参加者一人当たりの金額だけピックアップし、感情的に結論づけるのは、非合理的であるのはもちろん、恣意的であり、乱暴的である、と私は思う。
物事が何であれ、費用が無駄か否かは、客観的に判断すべきだ。

そもそも「無駄」とは何か。
「無駄」とは、「期待収益を高確率で上回る行動及び該当費用」である。

地方自治体のサービスは、市町村民の税金に拠るものである。
ゆえに、物事を実施する際は、予め、該当費用のみならず、期待収益も算出されて然るべきだ。
東京ディズニーランドで実施する成人式の費用が無駄である旨結論づけるのであれば、期待収益が高確率で実施費用を下回るのを証明しなければならない。

ちなみに、部外者ゆえ証明はできないが(笑)、私は、東京ディズニーランドで成人式を実施する費用は無駄にならない、と考える。
なぜなら、相応の明確な目的と合目的な内容にて実施すれば、「地方自治体に対する成人男女の帰属意識の醸成」と「勤労意欲の増進」を高確率で強く促せるから、だ。

地方自治体であれ何であれ、組織が存続するには収益が欠かせない。
地方自治体の主たる収益拠出者は、納税者、即ち、自らの市町村に居を構える企業と成人だ。
該当企業と成人は、地方自治体にとって、「顧客」だ。
成人式の対象となる成人男女とは、これから本格的に就職→所得獲得→納税をする人のことだ。
彼らは、納税者を「顧客」とする地方自治体にとって、「見込客」だ。
「見込客」である彼らを「顧客」にするには、現在居住している市町村に継続居住してもらうこと、そして、所得を獲得してもらうことが欠かせない。

私は、地方自治体にとっての成人式を「ご当地マーケティング」&「就業教育」の機会と考える。
この考えに則れば、浦安市にとって東京ディズニーランド成人式は、「浦安市マーケティング」&「浦安市成人向け就業教育」の好機だ。
浦安市に対する帰属意識の醸成は、同市に居住する成人男女が継続居住を希求するインセンティブ(誘因)になり得る。
勤労意欲の増進は、彼らが所得獲得を希求するインセンティブになり得る。
ディズニーランド成人式の参加者一人当たり費用は6,250円とのこと。
この費用は、彼らが成人式参加後も浦安市に居住し、就職すれば、早期に回収できる。


【3】マーケティングの要所はリスクを賭したユニークネスの創造にあると認識すべし!

マーケティングとは、対象とする人が満足するであろうモノ(※有形無形は不問)を創造し、彼らの興味を引き、数多ある競合者をさしおいてそのモノを選択せしめ、満足を提供する、一連及び個別の活動のことだ。
もちろん、本活動は、不確実性を伴い、リスクに満ちている。
ただ、高確率で競合者が存在するため、成功率を高めるには、リスクを賭して、「競合者と差別化を図ること」、つまるところ、「ユニークネス(唯一性)を創造すること」が欠かせない。

この考えは、ご当地マーケティングである成人式にも当てはまる。
ユニークネスを創造するのに、市町村固有のリソースを活用することは有効であり、かつ、欠かせない。

他の地方自治体からすると、東京ディズニーランドは、利用したくても利用できない、喉から手が出るほど欲しいリソースなのではないか、と私は推量する。
この推量がアタリであれば、東京ディズニーランドという実施可能場所を非合理的かつ乱暴的に却下するのは、ユニークネスの創造確率をいたずらに低下させるだけだ。

ユニークネスを創造する障害は何か。
最たるものは、<1>でも述べた。
そう、組織の意思決定権者が、責任やリスクの回避を志向したり、思考停止状態のまま前例を踏襲したりする行動習慣だ。

マーケティングのゴールは、先述の通り、創造物と対象者満足を交換することだ。
脳に汗をかかず、リスクフリーで人から満足を得ようとするのは、土台無理な話だ。


【4】オヤジは既得権者特有のロジックで若者へ横暴を働かない!

該当記事によれば、ジャーナリストの大谷昭宏さんは、東京ディズニーランド成人式に否定の態度を示しており、理由として、「後期高齢者医療制度やガソリン税で世の多くの人が経済的に困窮している」旨を挙げておられる。
人生の先輩に対して恐縮だが、この理由づけ(ロジック)はナンセンスだ、と私は考える。

後期高齢者医療制度やガソリン税による経済的困窮は、これから成人式を迎える若者ではなく、我々オヤジ(苦笑)の過失だ。
全体最適、連帯責任、公平のロジックで彼らにもケツを拭かせようとするのは、オヤジ、ひいては、既得権者の横暴だ。

この考え(ロジック)は、例えるなら、企業の経営者が、前年度の決算が計画外の赤字となったことを受け、新入社員に向かって、「前年度の決算が想定外の赤字になったので、本年度は恒例の社外研修を中止する」、と言うようなものだ。
たしかに、このようなナンセンスな経営判断を行っている経営者はゼロではないが、該当経営者が経営する企業は高確率で衰退していっている。

若者は、到底この考え(ロジック)に納得できない。
彼らは、自分はオヤジから「大事にされていない」感や「期待されていない」感を抱く。
そして、オヤジと心身共に距離を置き、高確率で無気力に時を過ごし始める。
無気力に時を過ごす中で、ユニークネスなど創造できる訳がない。
彼らが所属する企業や社会は、早晩衰退する。

そもそも、人が真に評価するのは、結果よりもプロセスだ。
結果は悪くとも、プロセスが納得できれば、結果を受容するし、必要に応じて再チャレンジするものだ。

「若者は(自分が若い頃に比べて)ドライだ」と言っているオヤジの声をよく聞く。
が、若者は、「不合理な考えを既得権に任せて一方的に押し付けてくるオヤジに対しては、ドライに(冷たく)接する」のであって、「心情を汲み、かつ、合理的な理由を付しながら指示&意見するオヤジに対しては、裏表無く気持ち良く接してくれる」、と私は感じている。

人は、自らが生まれてくる時節と場所を選べない。
だから、親も選べなければ、上司もオヤジも選べない。
オヤジは、それに付け込み、既得権者特有の不合理なロジックで、ユニークネスの創造主体となる若者へ横暴を働いてはならない。


<報道記事原文>TDL成人式:「経費1人6270円」浦安議会で疑問の声

若者の成人式離れを止めようと千葉県浦安市が地元の東京ディズニーランド(TDL)で毎年開いている成人式の昨年度の経費が、1人当たり6270円(総額約770万円)に上り、他都市を大きく上回っていることが分かった。浦安市では、公共料金の値上げが相次ぎ、公金支出に厳しい目が向けられており、議会でも疑問が出始めている。【袴田貴行】

TDLでの成人式は02年に始まった。入場料の4930円(1000人以上の団体料金)は市の全額負担で、式後は園内のアトラクションを楽しむことができるため出席率も70%超と高く、「荒れる成人式」の抑制効果もあった。

一方、他都市の1人当たりの経費は、大阪市560円▽名古屋市850円▽福岡市1400円▽札幌市750円など。同様に遊興施設「としまえん」を会場に使う東京都練馬区でも1480円で、浦安市は突出している。

同市では10月から、体育館などの公共施設の使用料や住民票、印鑑登録証の取得手数料が引き上げられる。25日に閉会した市議会9月定例会でも、東京メトロ浦安駅前などの市営自転車駐輪場使用料を来年度から1カ月310円から470円に値上げする条例改正案が提案され、可決されたが、本会議で反対討論を行った広瀬明子市議(無所属)は、成人式の経費を引き合いに「市民生活に密着した部分を値上げする前に、チェックすべき公金支出がある」と批判した。

市教委生涯学習課によると、今年1月の成人式には1228人が出席し、開催経費の約770万円は過去最高。宮木規男課長は「(会場選定などは)新成人の意向を尊重しており、初めからTDLありきというわけではない」と説明。

TDLでの成人式に参加した会社員、田中裕子さん(25)は「浦安育ちの若者にとって、ディズニーには特別な思い入れがあり、『今日だけ思いっきり騒いで、明日からまた仕事や学校を頑張ろう』という気分になれた」と話す。

これに対し、ジャーナリストの大谷昭宏さんは「後期高齢者医療制度やガソリン税などで皆が悲鳴を上げている時に、700万円もの血税を成人式に使うべきではない。ディズニーに思い入れがあれば個人的に行けばよく、行政が若者に擦り寄る必要はない」と指摘している。

※2008年9月29日付livedoorニュース(提供:毎日新聞)より転載
http://news.livedoor.com/article/detail/3838008/(livedoorニューズ)
http://mainichi.jp/select/today/news/20080929k0000e040061000c.html)(毎日新聞)



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この記事へのコメント
こんにちは。
浦安市が東京ディズニーランドで成人式を開催するようになったのは、2002年からですが、その経緯として次のように広報されております。
http://www.city.urayasu.chiba.jp/a012/b001/d00500497.html

浦安市(および市民)にとって、東京ディズニーランドというのは、単なる遊園地以上に、地元密着で愛着のある場所…と言うことを念頭におかないといけません。
(浦安市民病院へミッキーマウスが慰問する。市民マラソンの開会式にミッキーマウスが応援にかけつける…などというイベントもあったりします。)
Posted by 浦安市民 at 2008年10月22日 16:06
浦安市民さん

こんにちは、堀です。
初コメントをありがとうございます。(礼)

> 地元密着で愛着のある場所
> (浦安市民病院へミッキーマウスが慰問する。
浦安市民さんにとってディズニーランドは第二の故郷(?・笑)なのかもしれませんね。
とにもかくにも、素敵な情報をありがとうございます。(礼)
こういう情報こそマスメディアはもっと流布しなければいけませんね!
Posted by at 2008年10月24日 10:32