2008年10月12日

「フリーコピーの経済学―デジタル化とコンテンツビジネスの未来」を読み、企業における決定的な競合優位について再考&再認識するの巻

世の中には、「話がわかり難い人」と「話がわかり易い人」が居る。
後者の特徴の最たるものは、論理的であり、かつ、抽象的であることだ。

論理的であることはさておき、なぜ抽象的であると話がわかり易いのか。
それは、話者の趣旨、即ち、論旨が明確になるからだ。
これは、自分の持つ専門性が話者のレベルよりも低い場合、とりわけ助かる。

企業が方法論やマニュアルの類をもてはやしてきたのは、この為だ。
方法論やマニュアルとは、特定の思考や行動を抽象化したものだ。
流れや手順に基づいて表記され、初心者や発展途上人の「まねび」を促す。

なぜ、方法論やマニュアルが促しているのは、「まなび」ではなく、「まねび」なのか。
それは、方法論やマニュアルの大半は、思考や行動の概念や感性を「まなぶ」ことよりも、思考や行動そのものを「まねぶ」、即ち、「真似する」とか「コピーする」ことに重きを置いているからだ。

思考や行動が抽象化されていて、わかり易く、真似&コピーし易い。
ゆえに、方法論やマニュアルは、企業にとって一定の競合優位になる。

なぜ、方法論やマニュアルは、決定的な競合優位にならないのか。
それは主に二つ理由がある。

一つ目の理由。
それは、概念や感性の「まなび」を端折った「まねび」は、競合企業に容易に真似&コピーされてしまうからだ。
「真似&コピーし易い」というのは、両刃の剣だ。

二つ目の理由。
それは、インターネットが発展し、情報の収集性が飛躍的に向上したからだ。

「インターネット革命とは、技術的に言えば、デジタル革命である」。
「インターネットの父」と称される慶應大学の村井純教授(※現理事)は、こうおっしゃっている。
デジタルとは、事物を1と0の数字に置換、即ち、抽象化する技術のことだ。
インターネットとは、デジタルの技術で複製されたオリジナルと同一のデータを、ネットワーク内のユーザー間でシェアする技術のことだ。
インターネットが発展し、私たちは、自分が必要とする情報を、いつでも、どこでも任意に収集できるようになった。
方法論やマニュアルの賞味期限ならぬ「競合優位期限」は、決定的と言うには短か過ぎる。

企業にとっての決定的な競合優位は何か。
ヒントは、「抽象化&デジタル化&真似&コピーされない」モノ。
そう、お客さまの感動を積極企図する感性であり、かつ、その感性が刹那に創り出した最善行動だ。
だから、私は、「小売業、飲食業、サービス業における究極の競合優位は、“人(=社員の接客姿勢/技術)”と”店(=店舗及びホームページの作り/対応)”である」、と考えていたりする。

以上の内容は、「フリーコピーの経済学―デジタル化とコンテンツビジネスの未来(編:新宅純二郎/柳川範之)」という書籍を読んで再考&再認識したことだ。
前置きがかなり長くなってしまったが、何卒お許しいただきたい。(礼)

断っておくが、本書は、経済学の書籍だ。
ゆえに、私が再認識した内容に関して、直接的には言及していはいない。
本書が直接的に言及しているのは、以下の二つだ。
【1】デジタルとインターネットの技術的発展が、コピー費用の劇的な低減をもたららし、いかに音楽、映像、ゲームに代表されるコンテンツビジネスの収益構造(ビジネスモデル)を変容せしめているか。

【2】コンテンツビジネス企業は、自らの収益構造(ビジネスモデル)をいかに変容すべきか。

その他、私が本書で強い共感を覚えたのは、「なぜ私的コピー(※)は売上を減らさないか」についての主張だ。(P135)
(※著作権無視の所謂不正コピーではなく、ファイル共有ソフトyoutubeによるものを想定)

同書はこれについて、以下三事項(※)を理由として挙げており・・・
(※主観をもとに若干編集しています)

<1>私的コピーと正規品は代替関係に無い。
<2>私的コピーは正規品の宣伝効果を果たしている。
<3>正規品と同品質の私的コピーの利用者の絶対数は少ない(=私的コピーの絶対的流通量は少ない)。

・・・<1>の関する以下の説明(P136)は、とても説得的に感じた。

言い換えると、正規品を買う人々は、私的コピーが利用可能でも買うし、逆にコピー品で済ます人は、コピーが禁じられたからといって、正規品を買いに行くわけではないということです。
この区別は作品単位でもいえます。
ユーザーがコピーで済まそうと思っている作品は、コピーが禁じられたからといって、買いにはいかない。
また、ユーザーが正規品を購入しようと思っている作品には私的コピーがあるからといって、購入を控えることはないということです。
両者は別の市場を形成しているというのがこの説明です。

本書は、アカデミックな方々が書いた経済書であるものの、表現は平易だ。
あなたさまが、直接的か間接的かは置いといて、これらの内容に惹かれたなら、本書の一読をお勧めしたい。

ちなみに、私は、タイトルに惹かれただけで読んでいたりする。(笑)






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