2009年05月23日

「現役力(著:工藤公康さん)」を読むの巻

横浜ベイスターズの工藤公康投手が今春上梓なさった「現役力」を読んだ。
工藤さんの著書を読むのは「僕の野球塾―考える力こそ最強の武器」に続いて二冊目だったが、本書からも教示を多々授かった。
工藤さんは、「なんだかんだいっても、ぼくは教えることが大好きなんでしょうね(P184)とおっしゃりながら、「プロフェッショナルの自覚を強く持ち、『敵を知り、己を知らば、百戦危うからず』の精神/想像/自問を絶やさず、自分の頭で正解を案出→実行→検証しなければいけない」旨を繰り返し繰り返し提唱くださる。
本事項は当たり前と言えば当たり前だが、昨年来の経済不況の元凶がアメリカ金融のクラッシュではなく本事項の未遂であり、かつ、ポテンシャルに恵まれながらも実績が出せず引退していった数多の先輩/同僚/後輩を見てきた工藤さんの無念な思いが見え隠れして、私は改めて納得いや得心した。
そして、本事項に見る思考&行動習慣が、競合優位の持続的な創造を旨とする私たちビジネスマンのto doであるのことに、改めて気づかされた

同時に私は、以下の箇所から、コーチのto doも改めて気づかされた。

妻もこう言ってくれます。
「結婚したことで、お父さんの何かが変わったかというと、そうじゃないと思うよ。ただたんに、本来自分がやりたかった方向へ転換する理由づけが、まわりに対してできたから、堂々と自分のしたいことをするように変わったんじゃないかな」
(P70)

工藤さんの奥さまがおっしゃっていることは、正にその通りであるばかりか、言い得て妙だ。
工藤さんの奥様の言語説明力は、工藤さんを「言葉のキャパが少ない(P73)」と一刀両断するだけあり(笑)、なるほど高い。
御年46才になられる工藤さんが現役力を持ち続けていられるのは、ご自身が先の思考&行動習慣を不断に実行なさっていることに加え、最愛のコーチから優れた教訓を授かれることの賜物である、と私は断言しよう。(笑)



★印象に強く残った箇所

自分でなんとかしようと突っ張ってみる強情さ。それがいいプライド(自尊心)なわけです。また、そのために、それまでの成功体験をいったん捨てて、使えそうなものはなんでも取り入れようと虚心坦懐になる。それは、いい謙虚さなのです。
そうして成功をつかみ取る人たちというのは、どこか孤高の精神があって、決して努力は表に見せず、自分の実力のほどをしっかりとかみしめて、認識している。たんに人に擦り寄るわけでもない。かといって、天狗のままでいるわけでもないんです。
(P107)

プロ野球界は、なんでも最先端のものを追求しているのかと思いきや、よくいえば保守的で、世の中で認められてはじめて、ようやくその理論を導入しようとするけれども、それまでは腰が重い。「みんなが言っているから、じゃあ必要なんだろう」くらい後手後手なのです。
ぼくが股関節と体幹の勉強を始めたのは、いまから十年以上も前です。
人は未知のものに対しては、メリットが明確でないと、なかなか動こうとしません。なぜ、これをやらなければいけないのか、やったらどうなるのか、はっきりとした解答が欲しい。
ぼくも理論を勉強するにあたり、筑波大学の白木先生に、根掘り葉掘りその効用を尋ねました。すぐに結果として見えるわけではありませんが、こういう効果が得られるのか、身体のこういう動きが安定するんだ、と、イメージを膨らませることができた。
新しいものに挑戦するには、そうすることによって、自分がいかによくなれるかを、どれだけ強くイメージできるかがカギを握っています。新しい試みを続けることで、最初の段階でこのくらい、次の段階ではこれくらいのことができるようになり、最終的には「理想の自分」に近づいている・・・。
ある程度、先がイメージできれば、チャレンジを継続するモチベーションが保てます。
(P114)

「なぜ、もっと速い球を打とうとしないの?」
理由を聞くと、「投げるピッチャーもいないし・・・」と、みんな口をそろえる。そこで、思考が止まってしまっているのです。
「速い球を打てるようになったら、遅い球なんか簡単に打てるだろう。なぜ、そう考えないのかな?」
「ピッチャーがいないんだったら、どうしたらいいんだろう。どこで考えることが大切なんだ。プロになりたかったら、自分で壁を乗り越えようとしなければならないよ」
「大人だからとか、子供だからとか、身体が大きい小さいとか、そんなの関係ないんだよ」
「考える人間はきっとうまくなるけど、考えない人間は絶対にうまくはならないよ」
そしてぼくは、決まってイチローくんの例を出す。イチローくんはバッティングセンターで、いちばん速いボールを投げるマシンで練習して、それ以上、速いマシンがなかったら、自分がマシンに近づいて打っていた。
「ここまで試してみてはじめて考えたことになるし、挑戦したことになるんだ。君たち小学生のうちから、こういう工夫を忘れないこと」
(P134)

現役力 (PHP新書)
工藤 公康
PHP研究所
2009-03-14




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