2009年07月04日

伊那経営フォーラムに参加して、「未知の人同士でモノを教示し合う時は、細心の注意が必要である」ことをとりわけ気づかされるの巻

先週の土日、私は、生まれて初めて伊那(長野県)という土地を訪れた。
親友のIさんから「伊那経営フォーラム」にお誘いいただき、長野に在住のこれまた親友のYさん共々参加するためだ。

当日の伊那は、真夏だった。
私は、現地で初めて車から降りると、正直ゲンナリした。
Yさんからご縁を授かって数年経つも、いまだ「長野県=避暑地」のイメージにどっぷりつかっているようだ。(笑)

ちなみに、私は、このことをtwitterでharadaさんから以下指摘され・・・

長野の件は一つの地域だけで全体をイメージしてしまう典型的な事例ですな。
自分もそう思ってました。木を見て森を観ず。
https://twitter.com/harada/status/2380166395

・・・以下コメントバックさせていただいていたりする。(笑)

長野の件、コメントをありがとうございます(礼)。
「木を見て森を観ず」。まったくおっしゃるとおりです。
「戦略は細部に宿る」なので(?・笑)、以後気をつけたいと思います。
https://twitter.com/kimiohori/status/2384455268

伊那経営フォーラムの登壇者は、リッツカールトン(ホテル)の高野登さん千房(お好み焼き屋)の中井政嗣さん、伊那食品工業(寒天製販)の塚越寛さん、バグジー(美容院)の久保華図八さん、トヨタネッツ南国(自動車販売)の横田英毅さん、四国管財(ビルメンテナンス)の中澤清一さん、人と経営研究所(経営コンサルティング)の大久保寛司さんなど、顧客&従業員満足に基づく企業経営を執行し、収益向上を持続的に実現なさっている名経営者さんだ。
顧客&従業員満足に基づく企業経営を支援する私は、登壇者さんのお話を拝聴し、気づかされることが多々あった。

とりわけ気づかされたのは、登壇者さんのお話とは直接関係ないのだが(笑)、「未知の人同士でモノを教示し合う時は、細心の注意が必要である」、ということだ。
「細心の注意」を具体的に言うと、以下のようになる。
●未知の人にモノを教示する時は・・・
「正確に話す。抽象的な言葉は明確に定義する」
「合理的に話す。主張には背景/理由/要件を添える。時間の流れや論理の展開は一方向にする(行きつ戻りつしない)」
「『自分の歴史/信条/心情』、『自分が手がけた仕事の目的(趣旨)/方法(プロセス)/例示』を各々明確に分けて話す」。

さもないと、相手に誤解を与えたり、誤行動を促しかねない。

●未知の人からモノを教示される時は・・・
「目的(趣旨)の理解に最善努力する」
「目的(趣旨)/方法(プロセス)/例示を、各々履き違えて入力/理解/得心しない」
「↑が実行できる入力回路と知見を予め陶冶しておく」
「相手の話や言葉を、響き/印象/インパクトから単純に真に受けない」。

さもないと、授かった教示がムダ&アダになってしまう。

たとえば、リッツカールトンの高野さんが、リッツカールトン大阪のレストランが新型インフルエンザの流行が危ぶまれた時分想定外的に繁盛した事例をお話しくださった(※文末に該当話のブリーフィングを掲示)。
恐縮だが、私は、誤解を恐れず吐露すると、聴衆の多くが紙や心に留めたのは、「メニュー(に該当するモノ)を毎日清掃すれば(orさせれば)儲かる」ということのようにうかがえた。

たしかに、高野さんがしてくださったこの話は、インパクトがあった。
が、この話は、あくまで例示だ。
高野さんが一番おっしゃりたかったこと(=目的/趣旨)ではない。
「メニュー(に該当するモノ)を毎日清掃する」目的(趣旨)を紙や心に留めずに、自分が「メニュー(に該当するモノ)を毎日清掃したり」、部下に「メニュー(に該当するモノ)を毎日清掃させても」、ココロを欠いたカタチだけのプロセスゆえ、高まる顧客&従業員満足は知れているし、最悪下がる。

ちなみに、私は、この話の目的(趣旨)/方法(プロセス)/例示を、各々以下理解した。

【目的/趣旨】
企業がいかなる外部環境に置かれても(=持続的に)収益を獲得するには、対象顧客に企業の競合優位とその創造プロセスを不断に肯定評価いただくことが有効である。

【方法/プロセス】
対象顧客に企業の競合優位とその創造プロセスを不断に肯定評価いただくには、企業人全員が各々の立場から、対象顧客が競合優位として肯定評価できるであろうことを、企業が存続できる(=手持ちのキャッシュが尽きない)範囲でコストを惜しまず、積極的/効果的/不断に発見→創造→プレゼンすることが有効である。

【例示】
リッツカールトン大阪のレストランスタッフは、対象顧客に「リッツカールトンならではの高次の安心安全」という価値(競合優位)を提供するべく、励行可能なto doとして、顧客が利用する毎にメニューを綺麗に拭き上げてきた。
対象顧客は、スタッフのこの行動(価値創造プロセス&姿勢)を何気なくではあるが、日頃いつも見、創造する価値共々肯定評価していた。
対象顧客は、インフルエンザの流行が危ぶまれる中、スタッフのこの行動が創造する価値を思い出し&一層肯定評価し、安心安全の価値が享受できる稀有なレストランとしてリッツカールトン大阪へ大挙なさった。

なぜ、私は、ある意味当たり前のことである本事項に、とりわけ気づかされたのか。
先述の内容と重なるが、「登壇者の奇異又は印象的な例示はすぐ反応&メモするも、話の目的(趣旨)や本当に大事なことはあっさりスルーしている聴衆が多い旨うかがえたから」、だ。

それと、もちろん、「私自身、未知の人同士でモノを教示し合う機会が多いから」、だ。
今後は、「教示する時」も「教示される時」も、先述の「細心の注意」を払う所存だ。
「細心の注意」がうかがえない時は、遠慮なくその旨直言いただきたい。(礼)



★報道記事「人と絆を強さに 伊那JC経営フォーラム」

伊那青年会議所(原隆実理事長、伊那JC)は27日、6月公開例会として今年で5年目を迎えた伊那経営フォーラム(長野日報社ほか後援)を伊那市の県伊那文化会館で開いた。全国から1000人を超えるJC関係者や企業経営者らが参加。今回は「人と絆を強さに変える経営−この危機を乗り越えるために」をテーマに、対談や講演、パネル討議を通して「人づくり」について学んだ。

開会に先立ってあいさつに立った原理事長は「伊那JCは明るい豊かなまちづくりを進めるために経営品質という理念で取り組んでいる。すべての原点は人と人との営みにある」と呼び掛け、フォーラムでの学びを今後に生かすことを訴えた。

フォーラムは3部構成。第1部では「絆が生まれる瞬間」をテーマに、人と経営研究所の大久保寛司所長と、ザ・リッツカールトン・ホテル・カンパニー日本支社長の高野登さんが対談。第2部では大阪・道頓堀のお好み焼き屋「千房」の中井政嗣社長が「人育ては自分育て」と題して講演した。第3部は高野さんら2人に、地元を代表して伊那食品工業の塚越寛会長がパネリストとして加わり、大久保所長をコーディネーターに「人づくりが未来の成長につながる」と題してパネル討議を行った。

パネル討議で中井社長は、「大きな目標も大事だが、その前に小さな目標を達成していくことが大事」と強調。6年前にそれまではなかった徹底した接客マニュアルを作ったことについては「現在は家庭、学校、地域すべての教育がなっていない。すべて基礎があってこそ個性が認められるが、基礎教育ができていないからマニュアルで徹底的にたたきこまねばならない」と述べた。

高野支社長も「マニュアルがないと基礎体力がつかない」と同意し、塚越会長は中井社長が講演の中で紹介した戦前の修身の教科書に関連して「自由の裏には責任、権利の裏には義務があることを忘れて、戦後派自由と権利だけを主張してしまった」などと指摘していた。

伊那JCのフォーラム終了後は、同じ会場で信州伊那・地域経営研究会主催の勉強会も開かれた。

※2009年6月28日付長野日報から転載
http://www.nagano-np.co.jp/modules/news/article.php?storyid=14707


★気づきを促してくださった登壇者のお話(※お話の順番&文語に編集しています)

【リッツカールトン(ホテル)/高野登さん】

我々がいくら「リッツカールトンは、こういうホテルですよ、こういうことをやりたいんですよ、こういうホスピタリティや価値を提供したいんですよ!」と思っていても、それが相手に伝わらなければ、存在していないのと一緒だ。
だから我々は、いつも、「お客さまとの間にどれだけコミュニケーションの機会が作れるか」や、「自分たちがやっていることを、どれだけ、押し付けるのではなく、相手に何となく、さりげなく伝えるか」を考えている。
少し前、大阪に新型インフルエンザが直撃した。
大阪のホテルは、みな結構打撃を受けた。
リッツカールトン大阪とて、例外ではなかった。
そんな中、リッツカールトン大阪では面白い現象が起きた。
レストランが混み、席が取れない状況が続いたのだ。
現場は、そうなることを全く想定していなかった。
(新型インフルエンザによる集客減を想定し)シフトを柔らかめに組んでいたところ、お客さまがどんどんいらっしゃった。
私も、そんなことは全く想定していなかった。
そして、彼らに「閑古鳥の慰めの電話」を入れたのだが、「今忙しいんで!」とすぐに切られてしまった。(笑)
(想定外の出来事の原因を確かめるべく)スタッフがお客さまに来店理由を尋ねた。
すると、「こういう時でもリッツなら大丈夫だと思って」という答えが返ってきた。
レストランの中で一番非衛生なモノは、メニューだ。
色んな人が触るし、食べ物がはねたりするからだ。
そのメニューを、私たちはお客さまが利用する度、綺麗に拭いている。
お客さまは、普段それを見てくださっていたのだ。
普段はそれで終わりだが、今回新型インフルエンザという非常時性が手伝って、「(あんなことをあそこまでやる)リッツなら大丈夫だろう!」と思ってくださったのだ。
こうした小さいことは、コストはかかるものの、得られる結果は必ずしも大きくない。
が、お客さまとの間に大きな絆を生むことが少なくない。
だから、「得られる結果が最小かもしれないであろうものに対しても最大の努力を惜しまない」という価値観を全員で共有し、普段から小さいことをおろそかにしない。
そして、そのこととその自分たちの思いを、お客さまに伝えなければいけない。

「リッツカールトンならではの思いをお客さまに伝える」。
この考えを末端まで浸透させるには、大事なことが二つある。
一つは、自分たちの思いを共有できる人を探すことだ。
リッツカールトンには、「自分たちの思いを共有できる人が集まってくれることによって、組織が強くなる」、という考えがある。
開業の時に「450人必要だ!」としても、「では、(誰でもいいから)450人集めよう!」ということにはならない。
実際、リッツカールトン東京がオープンした時、スタッフの数は足りていなかった。
60人くらい足りなかった。
これは、「自分たちの思いを共有できる人が探し切れなかった」、ということだ。
現場は結構大変だったが(譲らなかった)。
二つ目は、「自分たちの思いを共有して、こういう組織を創るんだ!」とトップが腹を括る(=コミットする)ことだ。
トップが腹を括っていると、現場は迷わない。
彼らは、「お客さまのためにこれをしていいんだ!」と、安心して仕事ができる。


【人と経営研究所(経営コンサルティング)/大久保寛司さん】

「どんな思いを軸に組織運営をするか」が大事だ。
伊那食品の塚越さんは、どんな時でも、「それは従業員にとって幸せになるのか」の軸で見ている。
トヨタネッツ南国の横田さんは、「それは社員が成長することか否か」の軸で見ている。
どんな思いを軸に、どんなことをやろうとしているのか。
そこにどんな深い情熱、思いがあるか。
これがあれば、厳しい経営状況においても大丈夫だ。

企業には二つの資産がある。
お客さまからの信頼/安心/ご満足と社員のやる気だ。

人は、居るだけで仕事をしている。
雰囲気は仕事力そのものだ。
「雰囲気がプラスの人」とは、空気清浄機のように空気を綺麗にする人だ。
「雰囲気がマイナスの人」とは、ばい菌や噴霧器のような人。
そうした人に共通している特徴は、「私がいないとだめだ」と思っていることだ。

「部下の見えるところをすぐ変えようとするのではなく、まず見えないところに自分の焦点を合わせること」が大切だ。
言うことを聞かない部下に対し、見えるところの動きだけを見ないで、その奥にあるその人の思いを見る。
そうすると、そうした動きをやっている理由がわかる。
それが理解できた時、その人は変わる。

ホンモノは、360度どこに対しても、輝くメッセージが出せる。
たとえば、ホテルなら、スタッフがお客さまに良い対応を取るのは当たり前。
だが、スタッフ同士で良い対応を取れないと、それは180度だ。
リッツカールトン(のスタッフ)は、360度だと思う。
結局、「お客さまの前でこうで、お客さま以外の前ではこうで・・・」というのは、ホンモノじゃない。


【千房(お好み焼き屋)/中井政嗣さん】

旨いモノを出しているつもりでも、そのお客さまの口に合わなければ意味が無い。
同じように、サービスをしているつもりでも、そのお客さまにサービスとして受けとめていただけなければ意味がない。

当社の従業員数は従業員数が824名だ。
800名強とか、900名弱とか言われることがあるが、当社には「弱」とか「強」という社員は居ない。

お客さまからすると、店の中ではアルバイトも社員も一緒だ。
だから、双方同じように教育しなければいけない。

船場吉兆の初代社長はこう言った。
「商売は人柄だ」、と。
飲食業で問われるのは、学歴ではなく人柄だ。

あいだみつおさんはこう言った。
「花を支えているのは枝。
枝を支えているのは幹。
幹を支えているのは根だ」、と。
根は、あなたの生き方、感じ方、人生観だ。
外からは見えない。
でも、それが行動になると、よく見える。
根が腐っていては、大成しない。
今こんな時代だからこそ、自分の根、原点、足元を見ることが大事だ。

面白くなくても、声を出して笑うと、面白くなるものだ。
今こんな時代だからこそ、鏡を見て、拍手して笑うといい。

過去二回、倒産しそうになったことがある。
その時、私は幹部にこう言った。
「やることをやって倒産したら、ええやん。
でも、やることをやらずに倒産したら、心残りだ。
今やることやっているか?」、と。

私は信心はない、
が、神や仏が言っていることが正しいのを、体験と経験で知っている。
コンサルタントが事業を行うと、たいがい失敗する。
なぜか。
経営は、頭で考えるようにいかないからだ。
その時その時が一瞬で、考えていられない。
経営に求められるのは感性であり、つまるところ生き様だ。
松下幸之助さんはこう言った。
「私は経営学は知らない。
が、経営は知っている」、と。

贅沢はしたいものだ。
だから、目標が無ければ、金は貯められない。
目標を持って努力をすると、結果は出る。
努力を目標にしてはいけない。

新たにオープンする店へ研修に行った。
店の主任にオープン日の目標を尋ねた。
すると、彼は「50万円です」と答えた。
私は、少し高い目標だなと思ったが、まあいいと思った。
店長に同じ質問をした。
すると、彼は「30万円です。50万円というのは主任が勝手に言っただけ」と答えた。
私は、「50万円を達成したら、個人的に大入りを出す」と言った。
結果は、65万円。
全員が目標に向かって努力したら、こんなにもいくのかとつくづく思った。
この店は、オープン以来、一日の売上が30万円を下っていない。
オープン日の目標を30万円にしていたら、あの日と今は共に無い。

迷子の原因は三つある。
一つ目は、「行き先が見つからない」。
二つ目は、「今どこに居るか(現状)がわからない」。
三つ目は、「脱出方法がわからない」。

「思い立つ」のは、うまくいく気がするからだ。
「気がすること」は従うのが賢明だ。
「思い立ったら吉日」とか「善は急げ」というではないか。
思い立った時は、パワーがあり、高確率で成功する。

人は環境で育つ。
だから、教師が、荷物が山積している職員室で子供を叱責しても無駄だ。

いわゆるお好み焼き屋というのは、油や何やらで薄汚れている。
私は、お好み焼き屋を始めた時、お好み焼き屋をカッコいい仕事だとは思えなかった。
だから、私は、従業員がカッコいいと思えるお好み焼き屋を作ろうと思った。

「好きこそものの上手なれ」と言う。
そもそもは好きではなくても、やっていくうちに好きになったり、打ち込めるようになったりするものだ。
私は社長をしているが、辞めたいことは過去何度もあった。
好きなことをやっていても、嫌なことは絶対出てくる。
「自分は好きなことだけやりたい!」と考えていると、死ぬまで「自分探し」になる。
自分のキャッチコピーは、「今日も元気だ、働こう」だ。

続けたらホンモノになる。
ホンモノになったら続く。

経営がうまく行かない元凶は、内部要因だ。
花には蝶が飛んでくるが、ウンコには蝿が飛んでくる。(笑)
経営がうまく行かないのは、企業のトップがウンコだからだ。(笑)

思いが伝わらないのは、うまくカタチにできていないからだ。
「日本人は思いをカタチにするのが不得意だ」で終わらしてはいけない。


【千房(お好み焼き屋)/中井政嗣さん】

私は、新入社員式でこう言う。
「あなたがたは、良い会社に入社した。
なぜなら、私が社長だからだ。
私はあなたを見捨てたりしない」、と。
当社の経営理念は「ファミリーの心」だ。


【リッツカールトン(ホテル)/高野登さん】

ピンチに陥った時こそ、「どういう姿勢で仕事をするか」が大事だ。
自分はよく自らへゲームを与える。
たとえば過去ハードな現場に勤務していた時、「長期滞在者の心理を読んで、朝食のオーダーメニューを当てる」なんてことをしていた。


【伊那食品工業(寒天製販)/塚越寛さん】

ピンチに陥った時と言えば、若い時分病気を患ったことが感慨深い。
働けることがいかに楽しいか、つくづく知った。
一日24時間というのは、誰でも一緒。
以来私は、寸暇や努力を惜しまず働くことが大事だと思うようになった。
何も持たずにトイレに入ることはない。(笑)
ものを読んでいると、便通が良い。(笑)
絶えず工夫を考え、実行してきた。
たとえば、調べたところ年賀状は外形を5ミリまで大きくできるのがわかり、大きくした。
「これで少しでも広告効果が高まればいい」と思った。


【千房(お好み焼き屋)/中井政嗣さん】

「ピンチはチャンス」と言うが、これは嘘だ。
ピンチに対し行うべきは、まずチェンジで、次はチャレンジだ。
これで初めて、「ピンチはチャンス」になる。


【バグジー(美容院)/久保華図八さん】

社員の目が輝いている会社は、同じことをしていない。
いつも新しいこと、イノベーションをしている。
ある社員が、印鑑を彫る学校へ通った。
そして、473人のお客さまの印鑑を彫り、(来店促進の)ダイレクトメールを送った。
473人のお客さまの内、472人のお客さまが来店してくださった。

採用で大事なのは、「いい人が『入りたい!』と思う状態をつくること」だ。
それには、「評判を味方にすること」がとりわけ有効だ。
たとえば、「福岡で美容師を目指すなら、バグジーがいいよ!」と言われることだ。

人の心は、常に動いている。
人は、「いい人」の時と「悪い人」の時がある。
「心のコンディション」は一定でない。
「いい職人」は、「いい人」の時だ。
「いい職人」になれるか否かは、その時の「心のコンディション」で決まる。
「心のコンディション」は、私生活や職場の人間関係で決まる。
私生活が良いか否かは、家族、とりわけ親とのコミュニケーションで決まる。
私は、社員に親を大事にするよう、アレコレ促している。
職場の人間関係が良いか否かは、とりわけ経営者とのコミュニケーションで決まる。
私は、朝礼では(いい人になる気持ちを醸成する)いい話をしたり、従業員を怒った時には長く怒らず、すぐ冷めるようにしている。
長く怒ったり、プレッシャーを過度にかけると、たいがい嫌われる。(笑)
経営者は、社員に嫌われてはいけない。
経営者は、社員を「いい人」にして仕事をさせてあげなくてはいけない。


【トヨタネッツ南国(自動車販売)/横田英毅さん】

私は、社員に問いかけに対し、「こうしなければいけない」と自分の意見を述べたり、指示をしたりしない。
社員が「結局あの人は何が言いたかったんだろう?」と考えるのが狙いだ。
社員のそういう考えは、その社員にとって有効な成長機会だ。
自分が正しいと思うことを社員に伝えても、その社員は、必ずしも同じように思わないし、「上司はこういうことを言っている」という知識や「こういう場合はこうすればいい」という結論が増えるだけで嬉しくない。
嬉しいのは、「あの時ああ言っていたのはこういうことか!」と後で気づいた時だ。
成長に欠かせないのは、「自分で気づくこと」だ。
「自分で気づいた」社員は、自分が良いと判断したことを主体的に行動するようになる。こういう社員の増加が、全社員の成長につながる。
リーダーは、コミュニケーションを、会社がつぶれない範囲で、社員のレベルアップに使うべきだ。


【伊那食品工業(寒天製販)/塚越寛さん】

「社員がどうしたら幸せになるか」を常に考えている。
この考えがあっての行動であれば、社員はわかってくれる。


【伊那食品工業(寒天製販)/社員有志】

■塚越会長は、「こうしてほしいな!」と思うことをみんな実現してくれる。
だから、信頼している。

■塚越会長は、オヤジのようです。(笑)
たしかに、「瞬間湯沸かし器」です。(笑)
でも、理由を腑に落ちるよう説明してくれるし、強制はしない。
時にはそうでもないこともあるが。(笑)

■塚越会長の信念は、「思ったことは言う」。(笑)
色々言うが、いずれも基準が同一で、ブレていない。
長い間怒られ続けていると、それが次第にわかってくる。

■塚越会長にあまり怒られないと、寂しくなる。(笑)
伊那食品という会社は、とても居心地がいい。
だから、私は60歳を過ぎているが、伊那食品という会社とそこに居る社員のみなさんにしがみついている。(笑)


【トヨタネッツ南国/横田英毅さん】

私は、「叱る」と「怒る」は別だと考えている。
相手のことを心底考えているのが「叱る」。
心情をぶつけるのが「怒る」、だ。
「叱る」ことは、相手のことを心底考えていることが前提であり、難しいことだ。
だから、私は「叱らない」。(笑)
私は、人を「叱る」ことができるほど暖かい人間ではないし、社員を家族だと思っていない。(笑)
それほど優秀でもないし、意欲もない。(笑)
仕事も好きでないし、苦労もしていない。(笑)
私は社員に慕われていない。(笑)
社員は、「会長は空気みたいなものだ」と言っている。(笑)


【伊那食品工業(寒天製販)/塚越寛さん】

先ほど当社の社員が「夢がすべて実現している」と言ったが、それは年輪経営をやり、安定成長を志向&実現しているからだ。




【リッツカールトン(ホテル)/高野登さん】

日本でいう教育はteachingだ。
Teachingとは、「一方的に教えること」だ。
私たちの教育はeducationだ。
Educationとは、「本人から能力を引き出すこと」だ。


【四国管財(ビルメンテナンス)/中澤清一さん】

採用の面接では、自分の会社の都合ではなく、相手の幸せを優先する。
他企業を薦めることもある。



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ザ・リッツ・カールトン・ホテル日本支社長、高野登さんの講話を聴くの巻
J・アート・レストランシステムズ、望月広愛社長の講話を聴くの巻


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今週の言葉−塚越寛−【中年サラリーマンお父さんの日記】at 2010年03月26日 21:57
この記事へのコメント
5
堀さま
 大変貴重で、示唆の多いセミナーの講演録をありがとうございます。じっくり読ませていただきました。
 リッツカールトンのレストランのエピソードは確かにすばらしいですが、このような伝説を次々と生み出す会社の神髄は、やはり働いている人のココロなんでしょうね。
 伊那食品の塚越会長の著書はメモをしておりましたが、ますます読んでみたくなりました。

 あと、いくら講師や話がすばらしくても、聴く人間によってその思いを受けとめられるかどうか、というご意見には同感しました。
Posted by snowtop at 2009年07月04日 23:08
snowtopさん

こんにちは、堀です。
初コメントをありがとうございます。(礼)
本記事がsnowtopさんのお役に立てたようで嬉しいです。

> やはり働いている人のココロなんでしょうね。
「顧客満足を達成するには、働いている人のココロが輝いていなければいけない。
働いている人のココロを輝かせるには、経営者が人のココロに精通し、かつ、自分の独自資質(=思考&行動習性/能力/価値観)に即したコミュニケーションを働いている人と交わし切ることが有効である」。
以上が、全登壇者の話の趣旨だと私は理解しました。

> 伊那食品の塚越会長の著書はメモをしておりましたが、ますます読んでみたくなりました。
同書のレビューを楽しみにしております!

> というご意見には同感しました。
良い会社には、「輝いている社員」さんと「(それを肯定評価する)輝いているお客さま」が共に必要です。
同様に、良い講演には、「思いを正確に教示する人」と「講演者の思いを正確に教示される人」が共に必要だと思います。
Posted by 堀 公夫 at 2009年07月05日 07:49
堀さん。改めまして、伊那来訪お疲れ様でした。

堀さんは悪者になれないので、私が悪者になりましょう。
是非コレを読んでいる読者さんがココまで読んでくださることを祈念して、高野さんのエピソードを聞いたときの参加者の皆さんの動きをレポートいたします。

堀さんのかかれたメニューの話。
実は本フォーラムの第1部の冒頭に高野さんが話されたエピソードです。
いきなりリッツの本質を突いた話に驚くとともに、これだぁ!とビックリしつつ、客席を見渡したのですが・・・・
皆さんメモを持っているのに書いていない。しかもポカーンとされている。
5分ほど高野さんと大久保さんが対談されて、大久保さんがいまの高野さんの話をまとめたところで皆さん真剣にメモを取り始めた。

これはダメだ。伝わっていない。と痛感したところです。
ほぼ最前席にいたため参加者の皆さんの顔が見えたのは好都合でした。

今回は多数の経営者の方が登壇されましたが、それぞれが独自の色として完成されているので、なかなか参考になりませんでした。
しかし、このエピソードが今回のフォーラム最大の”事件”であったことは間違いありません。

本フォーラムに参加しお聞きになっていた経営者の皆さんには今一度自分のメモをよく読み直し、登壇者の方が何を言いたかったのか自問していただければと思います。
Posted by Y at 2009年07月07日 21:57
Yさん

こんにちは、堀です。
当日はソースカツ丼等々(笑)大変お世話になりました。

> 高野さんのエピソードを聞いたときの参加者の皆さんの動きをレポートいたします。
悪者レポート(?・笑)をありがとうございます。(礼)
参加者さんの内、Yさんの直截的なレポート(笑)から気づきを得る人は少なくないと思います!
Posted by 堀 公夫 at 2009年07月07日 22:21
3
もえもえです。
遅まきながら、高野氏の例示を聞かされた際、
凡人は何を考えていたか、披露させていただきます。

まず頭に思い浮かべたのは、
「私にとっての"メニュー"とは何かなあ?」という事でした。
そして「そのメニューを"磨き続ける"とは、どんな行いかなあ?」
と続きました。

私もポカーンとしていたようにしか見えなかったと思いますが、
頭の中では「自分の仕事におけるメニューはxxxxだから、
それを磨くというのはyyyyだろう。でもそれって意味がある行為かな?
zzzzの方がより効果的かも」という風に、妄想を膨らませて楽しんでいました。


かような凡人からすると、
「これだあ!とビックリしつつ、客席を見渡した」
というYさんの行為こそ、驚愕に値します。

それは、Yさんが"自分にとってのメニュー"や、
それを"磨くという行為"を既に得心されているだけでなく、
他者に目を配るだけの余裕があった、と推察されるからです。
同時に、

> それぞれが独自の色として完成されているので、
> なかなか参考になりませんでした。

とコメントされている事にも、驚愕を覚えます。
そこまで言い切れてしまうのは、本当に凄い。
かなり深い部分まで洞察できる資質を、常に磨いておいでなのでしょう。

私なぞ、独自の色を完成されている方の話だから参考になると感じていましたし、
同時に、「その独自の色を醸すに至った源泉は何なのかな?」、
「自分にとっての色は何色で、どう色付けたらいいのかな?」と、
前述の高野氏の話と同様、己の心の中に遊ぶだけで精一杯でした。


以上、同じ講演を聞いても、
程度の低い知見しか得られない人間も存在するんですよ〜
という、多くの閲覧者への安心材料(!?)になれば幸いです。(苦笑)
では、また。
Posted by もえもえ at 2009年07月13日 23:07
もえもえさんことIさん

こんにちは、堀です。
当日は何から何までホントお世話になりました。(礼)

私は、「客席を見渡し」損ねましたので(笑)、僭越ですがYさんに成り代わり以下を補足させていただきます。
(※補足が不適切な場合は、ごめんなさい、です)
> それぞれが独自の色として完成されているので、
> なかなか参考になりませんでした。

経験上私は、他者から「成功のための知見」を授かるなら、誤解を恐れずに言うと、「独自の色として完成される少し前」が望ましい、と思っています。
理由をひと言で言うと、人には過去を美化する習性があり、「独自の色として完成されてしまう」と、それまでの試行錯誤が高確率で『成功への一本道/良い思い出』に収斂してしまうから、です。
たしかに、「プロジェクトX」が人気を博したように、『成功への一本道/良い思い出』は、話す方は楽しく、聞く方は共感し易いです。
ですが、概して、成功への道は最後は一本ではあるもののそれまでは複数本あり、かつ、私たちが本当に授かるべき「成功のための知見」は今のところ成功が確定しておらず将来振り返った際「最悪の思い出」になりかねないモノ/コト/考え/判断に潜んでいたりします。
Posted by 堀 公夫 at 2009年07月14日 18:36