2009年07月15日

「Microsoftが次期Officeの簡易版を自社のweb経由で無料提供する」旨の報道から顧客向けリピート販売に関する教示を得るの巻

昨日、私は、「Microsoft(マイクロソフト)が次期Office(Microsoft Office 2010)の内、簡易版については自社のweb(Windows Live)経由で無料提供する」旨の報道をゲットした。

Microsoftは、梅田望夫さんが言う「こちら側」の企業だ。
MicrosoftにとってOfficeは、長い間、「こちら側」では欠かせない“ドル箱サービス”だった。
だが、数年前「あちら側」の企業の親分と言うべきGoogleが、「あちら側」でほぼ同様のサービス(Google Docs)の無料提供を開始した。
以降、Officeは“ドル箱サービス”でなくなり始めた。
そこで、Microsoftは、本施策によりGoogleを牽制すると共に、「こちら側」から「あちら側」へ自らのビジネスドメインをシフトさせながら新しい収益モデルを開発する、という訳だ。

Microsoftが決断した本施策は、教示に富んでいる。
というのも、見方によって様々な教示が得られるからだ。
たとえば、過去の“ドル箱サービス”を自社サイトの撒き餌として「積極的に手放した」と見れば、「収益モデルを最適化するには、顧客と競合の動向を見計らい、経営判断を勇猛に下すことが有効である」となるし、「泣く泣く手放した」と見れば、「生き残るには、たとえ不本意/後手に回ったものでも、競合の成長を楽観&看過し過ぎたツケの対処が欠かせない」となる。

私が本施策からとりわけ得た教示は、「顧客に同じ商品/サービスをリピート購入いただくには、商品/サービスが提供する競合優位の量や質を持続的に高めると共に、それを顧客から評価いただくことが欠かせない」、ということだ。
顧客は、評価できる競合優位の量と質が不変だと、時間軸が進むにつれ、魅力的に感じる代替商品/サービスが次々出現することと相まって、同じ商品に同じ代金を支払う気が失せていくのだ。
たしかに、Microsoftは、数年置きに新版のOfficeをリリースしてきた。
新版のOfficeには、思わず「へぇボタン」を押してしまうような(笑)機能が追加されていた。
しかし、暴論を覚悟して言えば、それらの機能の多くというか殆ど全ては、「無くても困らない」&「有っても実際あまり助からない」機能であって、「この機能のお陰で・・・ができる!」とか「この機能のお陰で・・・という気持ちになれる!」といったベネフィットを提供するこの世で唯一無二の価値、即ち競合優位ではない。
私は、決してOfficeに精通してはいないが、Officeユーザーの中でとりわけヘタれでもない(と日常の仕事を通じて勝手に考えている)。
ユーザーの大半からすると、OfficeはXPあたりで既にお腹いっぱいになっているのではないか。(笑)

余談だが、「なぜ、MicrosoftはOfficeのバージョンアップ料金を高止まりさせてきたのか」、と思った。
多くても数千円に抑えていれば、ユーザーはもっと気軽にバージョンアップを行っていたのではないか。
そして、新版を実際に自分のPCで使うユーザーがもっと増えていれば、新機能が競合優位として評価される確率も高くなったのではないか。
今なおwindowsからブルースクリーンが無くならないのと同様、Microsoftには解せないことが多い。(笑)


★報道記事

Microsoft、「オンライン版Office」でGoogleに対抗

米Microsoftは現在市場を支配しているOfficeソフトウェアスイートの新版において、ユーザーがWeb経由で利用できるバージョンを3つ用意し、競合のGoogleが3年前にリリースした製品とようやく肩を並べる。

このニュースを受けて、Microsoftの株価は7月13日、正午までに2.7%上昇し、NASDAQ総合指数の上昇率の倍以上の上げ幅を記録した。

MicrosoftとGoogleの競争は激化の一途をたどっており、今回の動きはその最新の一撃だ。先週には、GoogleがWindowsに対抗する無料OSのリリース計画を発表し、先月には、Microsoftが新しい検索エンジン「Bing」を発表している。

「MicrosoftはようやくWebベースの世界への転換を図り始めた。最初はBingを通じてその意気込みを示し、今回はOfficeを通じてそれを示している」とJefferies & Coのアナリスト、キャサリン・エグバート氏は指摘する。

MicrosoftはOfficeスイートのWebベースのコンシューマー向けバージョンを無償で提供する方針だ。Officeスイートは、ワープロ、表計算、プレゼンテーションソフト、メモ作成ソフトなどのプログラムで構成されている。

またMicrosoftは自社のデータセンターでOfficeの企業向けオンライン版をホスティングし、企業に有償で提供する計画という。料金はまだ発表されていない。有料サービス契約を交わした企業には、各自のデータセンターでもう1つWebベースのOfficeを走らせるオプションが追加料金なしで提供される。

Microsoftはこうした無償ソフトウェアをきっかけに、ユーザーにBingをはじめとする各種の広告サポート型サイトを利用してもらうことで、利益につなげたい考えだ。アナリストによると、Bingが好調にシェアを伸ばしているのはおそらく、Microsoftが赤字のインターネット部門の立て直しを本格化させていることの表れという。

それでもOfficeの無償版は、Microsoftで最も収益性の高い部門の売り上げを減らす可能性もある。Officeで最も人気の高いバージョンの1つは、150ドルで販売されているホームエディションだが、このエディションにはMicrosoftが今後無償で提供予定の4つのプログラムが含まれている。

「Microsoftは困難な状況に置かれている。競争のために価格の引き下げを余儀なくされているだけではなく、競争力のある製品まで無償で提供せざるを得なくなっている」とForrester Researchのアナリスト、シェリ・マクリーシュ氏は指摘する。

現会計年度の最初の3四半期において、MicrosoftのOffice部門は143億ドルの売上高に対し、93億ドルの営業利益を計上している。

マクリーシュ氏はMicrosoftがこの市場でGoogleを追い抜くと見込んでいる。数億人のOfficeユーザーがこぞってインターネット版を試してみることが予想されるからだ。

MicrosoftはOfficeの次期バージョン「Office 2010」の発売に合わせて、Web版をリリースする計画だ。リリース時期は2010年上半期の見通し。現行版のOfficeは2007年1月にリリースされたものだ。

Microsoftは7月13日、ニューオリンズで開催したビジネスパートナー向けの年次カンファレンスにおいて、Office 2010のテクニカルプレビュー版のリリースを発表した。プレビュー版は数万人のテスターに提供される見通しだ。

同社の広報担当者ジャニス・カプナー氏は、「無償のWeb版は非常にリッチな体験を提供する。恐らく機能性もGoogleより優れているはずだ」と語った。

Microsoftは来年にかけて、Office 2010のほかにも、一連の製品アップグレードを計画している。世界中で広く使われているWindowsは10月に新版のリリースが予定されており、メールサーバとして一般に広く採用されているExchange Serverについても新版が完成間近だ。

同日、NASDAQ総合指数が1.2%高の1777.50となる中で、Microsoft株は2.7%値を上げ、23ドルで取引を終えた。

※2009年7月14日付ITmediaNEWSから転載
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0907/14/news039.html




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