2009年09月11日

武沢信行社長のメールマガジン「がんばれ社長!今日のポイント」を読み、「てんびんの詩」から学んだ営業のイロハを再認識すると共に、ビジネスマンとしての原点に立ち返るの巻

誰にも、忘れられない映画や書籍があります。
そうしたコンテンツは、高確率でその人にとって教科書や原点思考になったりします。

かくいう私にも、忘れられない映画があります。
その一つは、「てんびんの詩(うた)」という映画です。

私が「てんびんの詩」を初めて見たのは、約20年前です。
当時、新卒で某自動車メーカーに入社したばかりの私は、系列販売会社へセールス出向するまでの二ヶ月間、「てんびんの詩」を見て落涙しながら、営業とビジネスマンのイロハを学びました。
「てんびんの詩」は、私にとって「営業の教科書」であり、ビジネスマンとしての原点です。

今日、私は、有限会社がんばれ社長の武沢信行社長が発行くださっているメールマガジン「がんばれ社長!今日のポイント」の2009年9月8日号を拝読し、深い感慨を覚えました。
というのも、武沢さんが「てんびんの詩」のストーリーを回想してくださったからです。
私は、「てんびんの詩」を回想すると共に、「てんびんの詩」から学んだ「営業のイロハ」を再認識しました。
私が「てんびんの詩」から学んだ営業のイロハの最たるものは、「お客さまに売るべきは、モノよりも感動である」ということです。
お客さまが対価を喜んで支払ってくださるのは、モノに対してではなく、モノから授かれる価値/便益(ベネフィット)に対してであり、さらには、モノを購入する行為/体験から授かる価値/便益(=購入体験価値)に対してであり、つまるところは、それらから授かる感動に対してです。

たしかに、お客さまは、基本、自分のニーズを満たすモノを予算内で買おうとなさいます。
これはこれで間違いではありませんし、満足度の高い買い物をするには欠かせません。
でも、お客さまが本当に買いたいのは、心が快の方向へ動くこと。
そう、感動です。
仮に、“その”モノがニーズや予算から少し離れていても、“その”モノを買うことで“その”モノ以外からプライスレスな感動が授かれるなら、お客さまは“その”モノを買おうとなさいます。

なぜ、私は、「てんびんの詩」から「お客さまに売るべきは、モノよりも感動である」と学んだのでしょうか。
武沢さんの後で不遜ですが、改めて「てんびんの詩」を回想すると共に、その理由を解説申し上げます。

「てんびんの詩」の主人公は、後年名経営者となる近藤大作さん。
近藤さんは、小学校を卒業した日、商いを営む父親から鍋蓋を行商してくるよう突然命じられます。
近藤さんは、父の命に従い、すぐさまてんびんに鍋蓋を担いで家を出ます。

近藤さんは、鍋蓋を売ろうと、幼い知恵を使って試行錯誤します。
しかし、鍋蓋は、一枚も売れません。
近藤さんが、鍋蓋という商品とお客さまという買い手と営業という仕事を軽く考えているからです。
近藤さんは、予想外の展開に心身共々追い込まれ、疲弊していきます。

「もうダメか」と諦めようとしているその時。
川沿いにたたずんでいた近藤さんの目に、一枚の鍋蓋が映ります。
「これが無くなれば、持ち主は困って、自分の鍋蓋を買ってくれるかもしれない」。
近藤さんは、ふとこう考えます。
しかし、近藤さんは、すぐさま改心します。
そして、初めて抱いた鍋蓋への愛情とその鍋蓋を売った営業マンに対する敬意を表そうと、その鍋蓋を洗浄し始めます。

そのさまを、近くに住む農家の奥さんが見ていました。
奥さんは、最初、近藤さんの行動を怪訝に感じます。
でも、近藤さんからこれまでのてん末を聞いて感動し、近藤さんから鍋蓋を買ってしまいます。
また、近藤さんを、近所の奥さん友達に紹介します。
近藤さんを紹介された奥さん友達は、次々に「私にも鍋蓋を売ってくれ!」と言います。
近藤さんがてんびんに担いでいた鍋蓋は、この日で完売します。

奥さんだけでなく、奥さんの友達も、鍋蓋は既に持っていたはずです。
つまり、奥さん達からすると、鍋蓋の購入ニーズは基本ゼロなわけです。
しかも、奥さん達は、必ずしもお金が有り余っていないわけです。
それに、近藤さんが担いできた鍋蓋は、他の鍋蓋には無い独自価値(競合優位)を有しているわけでも、他の鍋蓋よりも格段に安くもないわけです(→これは推測です)。

でも、奥さん達は、近藤さんからこぞって鍋蓋を買いました。
なぜなら、近藤さんから鍋蓋を買うことで、近藤さんの試行錯誤が疑似体験&肯定評価でき、かつ、近藤さんの生き様がより深く感動できる&学べるに違いない、と思ったからです。
ある奥さんは、近藤さんの人的成長を我が子のように喜び、かつ、我が子の人的成長をより強く希求したことでしょう。
また、ある奥さんは、我が子と同年代の近藤さんが大変かつ有意義な苦労を経たことに感心し、我が子の教育方針/内容を見直そうと思ったことでしょう。

奥さん達が近藤さんから真に買ったのは、鍋蓋ではなく、近藤さんから鍋蓋を購入する行為/体験(→購入体験価値)です。
近藤さんが奥さん達に真に売ったのは、鍋蓋ではなく、感動です。

「お客さまに売るべきは、モノよりも感動である」。
私は、「てんびんの詩」から本事項を学び、以来実践してきました。
そして、モノの持続的な差別化が基本不可能になった現在、本事項の主要達成因子化した購入体験価値が人と店で創り易い小売業、飲食業、サービス業の企業向けに経営支援サービスを販売するに至りました。
二十年前、とある研修センターで「てんびんの詩」を見て落涙していなければ、今日の私はあり得ません。(笑)

私は、武沢さんのお陰で、私にとって「営業の教科書」である「てんびんの詩」を回想することができました。
また、「てんびんの詩」から学んだ「営業のイロハ」を再認識すると共に、ビジネスマンとしての原点に立ち返ることができました。
私は、以上の有意義な機会を提供くださった武沢さんに、この場を借りてお礼を申し上げたいと思います。(礼)

余談ですが、私は、奇遇なことに、数日前、「低価格志向が強まっている昨今、消費者にナショナルブランド商品を選好いただくには、競合商品であるプライベート商品には無い商品価値を創造することよりも、プライベート商品には無い購入体験価値を創造することに努力を傾ける方が、有効かつ可能性がある」旨の記事を、他のweb(NHK「クローズアップ現代」ほぼ毎回雑感)に書いています
該当記事のイイタイコトは本記事と同じ「お客さまに売るべきは、モノよりも感動である」ですが、その主要達成因子の購入体験価値を別角度から解説していますので、参考までにご一読いただけると嬉しいです。(礼)



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