2009年09月26日

「佐野元春のザ・ソングライターズ」を見て、矢野顕子さんの音楽が他の音楽家の音楽で代替できない理由を少しだけ知るの巻

私は、ラーメンが好きです。(笑)
「ラーメンたべたい!」と突然又は定期的に感じると、お気に入りのラーメン店へ駆け込みます。(笑)
その一番の理由は、ラーメンの味わいと食感が非常に独特かつ絶妙で、他のメニューで代替できないからです。
私は、ラーメンをすする度(笑)、ラーメンが持つメニューとしての競合優位の高さに感服してしまいます。(笑)

私は、「ラーメンたべたい(作詞・作曲/矢野顕子)」という曲も好きです。(笑)
「『ラーメンたべたい』が聴きたい!」と突然又は定期的に感じると、可能な限りすぐ身近なメディアで聴き始めます。(笑)
その一番の理由は、矢野さんが演じ歌うこの曲の旋律と詞が非常に独特かつ絶妙で、他の音楽家の曲で代替できないからです。
私は、「ラーメンたべたい」を聴く度、この曲が持つ音楽としての競合優位の高さに感服してしまいます。



オーエスオーエス
矢野顕子
ミディ
1993-09-21


「現代音楽は、過去の焼き直しだ」と言われて久しくなります。
そんな中、なぜ、「ラーメンたべたい」は、音楽としてかくも競合優位が高いのでしょうか。
また、なぜ、矢野さんは、かくも高い競合優位を持つ音楽を創ることができるのでしょうか。

私が初めて矢野さんのことを知ったのは、YMOの第一回ワールドツアーです。
当時、矢野さんは、キーボードのサポートメンバーとして参加し、同じキーボードの坂本龍一さんとは好対照に、ダンスしながらシンセサイザーを弾きまくっていました。



COMPLETE HURRAH [DVD]
イエロー・マジック・オーケストラ
EMIミュージック・ジャパン
2000-04-26


以来約30年の月日が経つものの、私は、矢野さんが自分の思考や行動を吐露しているメディアに遭遇できず、これらの問いの答えをつゆも知りませんでした。(汗)

でも、30年目にしてようやく(笑)、私は、答えらしきものを少しだけ知ることができました。
キッカケは、「佐野元春のザ・ソングライターズ」というテレビ番組です。
司会の佐野元春さんが、松本隆さんに続き、ゲストの矢野さんの思考と行動、そして、それらの本質とココロを引き出してくださいました。
私が少しだけ知った答らしきものの要約は、以下の通りです。
【1】松本隆さんと同様、普遍の真理の究明に励み、かつ、それを平生にしているから。
【2】音楽を創造する源泉を平生に限定しているから。
【3】他者(の音楽)から授かった触発の本質とココロを独自の想像力で解釈し、かつ、独自の創造力で新たなカタチへ転生しているから。

私は、矢野さんのこうした思考&行動習性に強く共感すると共に、感動しました。
キャリアと実績を十二分に備えてもなお、「本当のことを知りたい!」と平生に思考&行動し続けている矢野さんの音楽が、他の数多の音楽家の音楽で代替できないのは、当然のことだと思いました。

また、私は、「他者から授かった触発がいかに競合優位化できるか?」が問われる(=KPIになる)点において、音楽を創るのも、ビジネスを進めるのも、本質的に変わらないと思いました。
競合他社の業務プロセスや成果物を、本質やココロを解釈しないまま、焼き直し的に導入/採用した企業が、競合優位を創造しあぐね、お客さまに競合他社の商品を代替購入されてしまうのは、音楽と同様当然のことだと思いました。

私の心がとりわけ動いた矢野さんの生コメントを、以下に転載します。
あなたさまも、矢野さんから触発を授かり、かつ、それを競合優位化できるよう祈念いたします。(礼)


【佐野さん】
矢野さんのこれまでの曲を改めて聴かせていただいていくつか気がついたことがあったんですね。
まず素敵だなと思ったところは、同姓へのシンパシーですね。矢野さんの歌には同じ女性を励ます歌が何曲かあると思うんですけど、ソングライターとしてその同姓の目、耳というのはやはり気になりますか?

【矢野さん】
反響は気になりませんが、ていうのはそれは一番最初に考えることではないですけども、女性に、つまり自分の友達に語りかけるというか話しているような、たとえば、電話で仲のいい友達と「あーそうだよねー」とか言いながら言うのと、それでピアノに向かって「あーそうだよねー」というのと同じ気持ちかもしれませんね。

【佐野さん】
あー。
それは、ご自身の中では、日常の会話にもそのままメロディーが乗っかるという感覚ですか?

【矢野さん】
私、自分のことを作詞家と思ったことは生まれてから一度も無いので、自分の中から出てくる言葉が音楽と一体化しているぐらいに考えているんですね。
ですから、自分のその時の気持ちとか、考え方とか、それこそ体調とか、子供が熱出したとか、そういうものが全部相まって、その時の私が何を表現するだろうかっていうことが基本だと思うのね。
ですから、いつも特定の人に向けて「私さー」って電話していることではないんですけど基本的に私が普段言っていることと歌として歌われている内容は差異が無いと思っています。

【佐野さん】
それはよくわかります。
歌を聴けば、矢野さんの性格がそのまま(表れていると感じます)。
その意味では、とても正直なソングライティングだなって思うんですね。
だから、胸を打つところも多々あるんですけどね。
で、僕、「Go Girl」を聴いた時に、これを聴いた女性たちは矢野顕子さんという経験者から大きな励ましをもらうな」と思ったんだけれども、「Go Girl」の中にある「本当のことを知ったから、もう嘘には戻れない」というのは、とっても深いラインだと思うですけどもね。

【矢野さん】
私、世の中には二種類の人間が居る、と思っていて
一つは、本当のことを知りたいと思う人。
そして、知るまで、探し続ける人。
もう一つは、「(そんなこと)どうでもいいじゃない!」と本当のことに関心が無い人。

で、私は、自分はこっち(※前者)側の人間だと思ってますから、ですから、自分の友達にもそういう人を選ぶし、そういう人に聴いてもらいたいなって思う。
多分このラインに共鳴してくださる人って、全ての人が共鳴するわけではないと思っています。



【佐野さん】
矢野さんは色々な人のカバーをやられてますよね。
聞きたかったのは、矢野さんがご自身で他のアーチストの曲をカバーする時に、その選ぶ基準、あるんですか?

【矢野さん】
ここは、100%ではないですけど、私には珍しく言葉が大きな要素になっているんです。
その詞の中に私が普段の生活の中で口から出さない言葉がもし入っているならば、歌わないですね。
まずそういう振り分けが何かあって、ラジオで流れている曲で、「あーこれ何かいいかも!」と思ったら一番最初にするのは、その曲の歌詞をチェックすることなんです。
それで、歌詞を見て「OK!」っていったら、今度自分でそのCDを買って何回も聴いて、ピアノに向かって自分でやってみると何となくこうできると。

【佐野さん】
僕の曲も歌ってくださってますね、「SOMEDAY」という曲ですけども。
(矢野さんがカバーした「SOMEDAY」は)原曲とは全然違っているわけなんですけど、それはご自身で消化して、そして、自分の見える景色としてそれを歌う、こういう風に僕たちは解釈していいのかな。



SOMEDAY
佐野元春
ソニー・ミュージックダイレクト
2013-02-20


【矢野さん】
そういうことですね。



SUPER FOLK SONG
矢野顕子
ソニー・ミュージックダイレクト
2013-04-10


【佐野さん】
なるほど。
矢野さんに曲を歌ってもらうと、大抵のアーチストはこう言うんです。
あれはもう矢野さんの曲だ

【矢野さん】
申し訳ない(笑)。
でもさ、歌ってさ、本来そういうものじゃないの?
みんなが自分の歌を持っていて、自分の歌い方をし、自分の風景をその歌から見てれば、いいんじゃないかなって。

【佐野さん】
それが本来のいわゆるカバーということだと思うんですよ。



【佐野さん】
「Home」、「家」ということについてお伺いしたいんですけども。
矢野さんの曲にとてもよく出てくる言葉の一つに「Home」、「家」、もしくは、「Home」を思い起こさせるようなラインがあります。
たとえばね、「Home Sweet Home」では「壊した家を出たくせに、今私達は新しい家を作る」。
矢野さんがこの歌の中で「Home」と歌う時にどんな思いが込められているのかな。

【矢野さん】
それ、とってもいい質問ですね。
「Home Sweet Home」の中に「たとえひとりきりになったとしても、Home Sweet Home」、あれね、私の真髄かも。
真髄って言わない(笑)?
正直なとこかも。
つまり、「Home」っていうのは家族ではないんです。
ウチへ帰ったら誰かが待ってて、それでカレーの匂いがしてるっていうものに価値は見出してないです。
自分が自分であること、それを確立する場所っていうのかな。
人間としての私がちゃんと居られる場所。
全ての人がそれを一人ずつ持ってこそ、そういう人が集まりあったら家族になる。
理想はね。
でも、これ、私、日本人にはもっとも難しいコンセプトかなと思うんですよね。




【アオキヒトミさん(慶應大学の学生さん)】
矢野さんが、作品づくりをする際に、自分である程度思想を固めて作品を提出したのに、聞いてもらった人の中にちょっと違う解釈をした人がいらした時は、その作品を失敗だと思いますか?

【矢野さん】
いい質問ですね。
いや、むしろ成功ではないでしょうかね。
いい例が。私の「ラーメン食べたい」っていう曲があるんですけど、それを奥田民夫さんが歌ってくださってて、で、彼はギター一本でかきならして「ラーメン〜」って歌いだすとね、私が食べたいラーメンじゃないの。
なのにね、すごくいいんです。
そして、もうその時には私のラーメンじゃないところに湯気が上がっていて、旨そうなの。
それで、私ははこのラーメンを食べないけど、「あー、みんなこの美味しそうなラーメン食べられていいね。よかったね!」って言えるの。
だから、むしろ、他の人の創造(想像)力が、歌い手であろうが、聞く人であろうが、どんどん入ってくれた方がその曲は喜ぶんじゃないかなと思うんですけども

【法学部の女子学生さん】
私は、法学部で勉強しているんですけれども、大学に入ってから、女っていうことに関してすごく敏感に反応することが多くて、なんでかって言うと、「女だから」っていうことで制限されることが意外と多いことに大学に入ってから気づきました。
そこで、矢野さんは「女」ということにどうお考えを持っているかっていうのがお聞きしたいなって思って。

【矢野さん】
社会っていうのは不公平にできているんですよね。
絶対、公平になんないの。

だから、それを変えたいのは山々なんですが、恐らく変わらない。
ならば、できる手段として、こちら(※自分)が考え方を変えることはできるでしょ。
で、私自身が幸せであるためには何が必要かっていうと、私が私に誇りを持つ、そのこーいう(※胸を張って「オレは偉いんだぞー」)んじゃなくてよ、私が存在することに意義があるっていうことに対する認識ね、それをやっぱり高く持つっていうことが一番大事で、そうなると、女性であろうが、男であろうが、関係無いんで。
たとえば、アーチストの場合は、「自分が創るモノによって私を評価して!」っていう風に言えるわけです。
ですから、もし法律を扱う面で、仕事で自分の、自分にしかできないっていうか、自分のやり方、自分の満足するやり方を確立して「こうよ!」って出していくならば、たとえ負けることがあってもOKだから、それで。
そして、そういう姿をちゃんと認めてくれる人っていうのは、意外と居るもんです、と思います。



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