2009年10月23日
東京工業大学MOT特別セミナー「MOTとサービスイノベーション」に参加じ、小松製作所の坂根正弘会長の講演を拝聴するの巻
過日、私は、東京工業大学MOT特別セミナー「MOTとサービスイノベーション」に参加じ、小松製作所(コマツ/KOMATSU)の坂根正弘会長の講演「IT活用による新たな顧客価値創出〜製造業のサービス化」を拝聴しました。
内容の多くは、坂根さんが社長として2001年から2007年の間に断行なさった経営構造改革に関するもので、気づかされることが多々ありました。
とりわけ気づかされたのは、以下の五事項です。
(気づきをくださった坂根さんのお話は、末に付しておきます。)
内容の多くは、坂根さんが社長として2001年から2007年の間に断行なさった経営構造改革に関するもので、気づかされることが多々ありました。
とりわけ気づかされたのは、以下の五事項です。
(気づきをくださった坂根さんのお話は、末に付しておきます。)
【1】(特に所帯の大きな企業で)経営改革を完遂するには、トップが、社員に対し、現在苦戦している理由と脱却への方向性について説明責任を果たすことが不可欠。
【2】説明責任を果たすには、キーワードを使用すると共に、使用するキーワードを明確に定義することが不可欠かつ有効。
【3】競合優位を創造するには、トップが「勝つべきところ」と「負けていいところ」を英断し、「負けていいところ」を「勝つべきところ」の犠牲にすること、即ち、「負けていいところ」に充てていた経営資源を「勝つべきところ」へ転じる旨社員へ明示することが不可欠かつ有効。
【4】改革を完遂することは全体最適(⇔部分最適)を達成することであり、全体最適を達成するにはトップダウンを断行することが不可欠かつ有効。
【5】トップダウンを完遂するには、「ミドルアップ」、「ミドルダウン」(※)を殺してしまわないよう、自分の資質を理解した上でさじ加減することが不可欠。
(※)坂根さんの造語
ちなみに、これらの事項の内、最も強く気づかされたのは、【3】です。
なぜなら、「負けていいところ」というのは、換言すると、「捨てる/諦めるべきところ」であり、これを見つけ、実行するのは、生存の持続を希求し、生存確率の担保に安住してしまう私たち人間にとって、難事中の難事だからです。
戦略の要所は、たしかに、『やること』ではなく『やらないこと』を決めることです。
トップは、生存確率の減少を怖れず、生存確率の向上を志向しなければいけないのです。
末筆ですが、有意義な気づきを多々授けてくださった坂根さんにこの場から改めてお礼を申し上げると共に、本セミナーにお招きくださった久米繊維工業の久米信行社長にもこの場から改めてお礼を申し上げたいと思います。(敬礼)
★上記五事項を気づかせてくださった坂根正弘会長のお話
▼その他記事検索
トップページ < ご挨拶 < 会社概要(筆者と会社) < 年別投稿記事/2009年
【2】説明責任を果たすには、キーワードを使用すると共に、使用するキーワードを明確に定義することが不可欠かつ有効。
【3】競合優位を創造するには、トップが「勝つべきところ」と「負けていいところ」を英断し、「負けていいところ」を「勝つべきところ」の犠牲にすること、即ち、「負けていいところ」に充てていた経営資源を「勝つべきところ」へ転じる旨社員へ明示することが不可欠かつ有効。
【4】改革を完遂することは全体最適(⇔部分最適)を達成することであり、全体最適を達成するにはトップダウンを断行することが不可欠かつ有効。
【5】トップダウンを完遂するには、「ミドルアップ」、「ミドルダウン」(※)を殺してしまわないよう、自分の資質を理解した上でさじ加減することが不可欠。
(※)坂根さんの造語
ちなみに、これらの事項の内、最も強く気づかされたのは、【3】です。
なぜなら、「負けていいところ」というのは、換言すると、「捨てる/諦めるべきところ」であり、これを見つけ、実行するのは、生存の持続を希求し、生存確率の担保に安住してしまう私たち人間にとって、難事中の難事だからです。
戦略の要所は、たしかに、『やること』ではなく『やらないこと』を決めることです。
トップは、生存確率の減少を怖れず、生存確率の向上を志向しなければいけないのです。
末筆ですが、有意義な気づきを多々授けてくださった坂根さんにこの場から改めてお礼を申し上げると共に、本セミナーにお招きくださった久米繊維工業の久米信行社長にもこの場から改めてお礼を申し上げたいと思います。(敬礼)
★上記五事項を気づかせてくださった坂根正弘会長のお話
コマツは2001年に赤字に落ち込むんですけども、赤字に落ち込んだ理由が、コマツがモノづくり競争力を失って赤字に落ち込んだのなら、特に日本ですね、もうコマツの場合、海外13カ国に出ていましたから、もう思い切って日本を脱出しようと、そう決心すればいいんですが、私は、アメリカに8年居て、アメリカから日本を見ていましたから、「そうじゃない、日本のモノづくり競争力を失ったわけじゃない」。まあ色んなことをやって固定費に押しつぶされているんですね。だから、この国は固定費に押しつぶされて、本来の力を発揮できてないですよ。この国全体の官僚問題もそうです。道路、道路って言ってあんな無駄な道路って言ってますけど、道路に関わる固定費、どれだけ使っていますか?私なら、固定費をまず減らして、現場に使うお金はですね、決して無駄にならないわけですよ。現場に使うお金を最後削る前に、固定費の無駄なところはどこかと徹底して探す。それをコマツの場合もやろう。で、あとは、ダントツ商品、ダントツサービスにチャレンジしようというのが、2001年当時の私の社内に示した話でして・・・。
部分最適をさせるとピカイチのものをもっているんですけども、トップダウンが絶対に無いと全体最適にならない。ただ、トップダウンと、ミドルアップ、ミドルダウンと私は呼んでいるんですけども、このバランスを取るっていうのが経営者は本当に難しいところです。「これ以上言ったら、下は待ちの姿勢、受身になるだろうな」ということをいつも考えながら、「ここまでで言うのをやめておこう」と。日産のゴーンさんの講演会に出て、私、司会者から質問してくれと言われるからゴーンさんに聞いたのは、「あれだけ強力にトップダウンしていると、下は待ちの姿勢になりませんか?日産のミドルアップ、ミドルダウンはしっかりやっていますか?」って聞いたことがありますけど、トップダウンがあれだけ強力だと、人間はつい待っちゃいますよね。だから、本当に難しいところです、これ。
一般社会は、コマツがどう業績上げようがあまり関心無い。社会に迷惑かけないでくれ、ということですよね。で、株主はどうかというと、多少のコンプライアンスがあっても、それが株価に影響しない程度だったら許してやる、と。業績を上げて、株価を上げて、配当を増やしてくれ、というのが株主なわけです。でも、お客さまっていうのは唯一違うわけです。だから、(ブランドは)信頼度って言うんですけども、みんな立場が違う、信頼度とひと括りでなかなか説明し切れないなというのがあって、私がその後言い換えたのが、「コマツでないと困る度合いを高めること」。これならあらゆる人にあてはまる。たとえば、株主。コマツでないと困る株主、居ないですよ。そりゃ、社員で元々コマツの株を持っていた人は別ですけど、一般に売り買いしている人は、コマツの株を売って、他の株を買ったっていいんですから、いつでも離れられるわけですから、「コマツでないと困る度合い」っていうのは、この中では株主が一番強い絆は無い。ところが、社員とかですね、協力企業とか、販売店のみなさんは、コマツが倒産したら、アッという間に大変ですよね。だから、「コマツでないと困る度合い」はものすごく高くて、結局、我々が企業価値を創っているんだ。で、株主とか、社会とかっていうのは、コマツの企業価値を評価している人。ま、中でも株主は、企業価値を評価する尺度っていうのは殆ど無くて、たしかに株主価値、株式市場の時価総額というのが何となく全体を表しているわけですね。たとえば、コマツが、ものすごく世間を騒がす、信頼を一気に失うような不祥事を出したら、それで相当株価は下がりますから、たしかに、株っていうのは、相当な部分を色々カバーしていますから、株式市場以外に定量的な企業価値を表すものは何かあるかっていうと無いですから、そういう意味では、評価する意味では株主はものすごく大事ですが、企業価値を創る人じゃない。ただ、唯一の例外がお客さん。お客さんはコマツの企業価値を評価する人であり、コマツの企業価値を共に高めてくれる人だ。だから、アメリカ型の企業価値イコール株主価値のあの行き過ぎを打破するっていうか、そこからブレークするーする唯一の視点は、お客さんとの関係をもう一回、「コマツでないと困る度合い」という視点で考え直してみよう、というのが今日お話する主題です。
(略)
「全てのステークホルダーに社長自らが直接できる限り説明責任を果たそう」というのが私が社長になって、それまでの会社のスタイルを根本から変えて、自分で全てのステークホルダーに対して社長が発信源になろう、というふうにやってきました。
(略)
お客さんとの関係なんですが、よくブランドマネジメントってのは、化粧品なんかではわかりやすいんですけども、私たちのようなb to bですね、企業間同士でビジネスをやっていると、建設機械を買うのは殆ど会社ですから、一般消費者じゃないですから、なかなかブランドマネジメントってわかりにくいんですけど、「コマツでないと困る度合い」を高めることと定義すると、わかりやすくなるんですね。よくセールスっていうのは「出来上がったものを販売員が売る活動」、マーケッティングっていうのは「お客さんのニーズをよく調べてそれにあったものを売るんだ」と言うんですけども、ブランディングっていうのは何なんだと。結局、お客さんとの間ですね、取引から関係性にうつる、「コマツでないと自分たちはどうにもならない」というとこまで高めることがブランディングじゃないのか、ということが私たちが二年前から取り組んでいる基本の考え方です。
一つは、本質問題が何なのかというのをよくとらえて、繰り返し言う、と。本質問題であれば、どんなに言ってみても、それは絶対に守ってもらわなきゃいけないわけですよね。それで、ダントツ商品の話が一番いい例ですけども、ダントツ商品って、「他社が三年ないし五年(追いつけない)特色を持ったモノを創れ」、と。でも、それだけでは創れないですから、「犠牲にするところを先に決めろ」、と。要するに、私も(かつて)商品課の課長をやってますからよくわかるんですけども、マーケットインだとか言って営業の方に聞くと、「あそこも良くしろ、ここも良くしろ」とみんな言うんですよ。「どこは負けてていい」って全然言わないですね。社長は言えるんですよ。「負けていいところを先に営業と開発部門は合意しろ。で、そこで、10パーセントくらいの製造コストの余力を生み出して、その10パーセントをダントツに使え。で、ダントツのキーワードは、環境、安全、ITだ。この環境、安全、ITでは、絶対他社に負けるな」、と。私はそこまでです。それから先に行っちゃうと、(下は)待ちの姿勢に入りますよ。だから、社長の言ってる環境、安全、ITってのは何なのかっていうのは下が勝手に考えますよね。どこまでをトップが言うか。で、よくあるパターンですけども、頭のいい経営者で、色んな勉強をする人ほど、昨日こう言っていた、今日こう言う、と思いついたことを全部言う人が居るんですよ。それでは絶対下はついてこれないですね。周辺の人だけはついていくでしょうけど、ま、(社員が)四万人居たらついていけないですね。ですから、トップは、本質から外れないことをキーワードで明確に言い続ける。そのキーワードのブレークダウンは、いたずらに下に入り込んでいかない。ただ、社長っていっても、みんな性格が違いますからね。
(略)
ただ(私と現在の社長に)共通して言えることは、私も彼も、彼は私以上ですが、現場から絶対遊離しない。現場が本当にこういうことを言って大丈夫なのか、あるいはこういうことを言ったって現場と全く違ったことなんじゃないか、ということを彼は私以上にものすごく気にしていますから、現場の状況を把握するということについては、私もとてもじゃないけどできないですよ。
(略)
社長は、ステークホルダーに社長自ら、絶対に自分でやれと言った分は原本になっていますから、いま年に四回の決算ですよね、世半期決算ですから、決算が終わると社員を本社に全員集めて一時間くらい資料を使って説明をして、今日のような話ですけれど、それをビデオ撮りして、英文化したものを日本文と合わせてwebで全世界に発信するということを私が社長になってからずっとやってきて、今の社長、「絶対にそれだけはマストだ」と。コマツの社長になったからには、それだけは絶対やらなければいけないということが書いてあって、それから逃げるような人がもし社長になったとしたら、多分今のウチの雰囲気だとブーイングが出るでしょうね。「なんで今度の社長はアレやらないんだ」と。で、社員だけならともかく、協力企業さんにもそうやっていますから、社員と同じ話を、協力企業からブーイングが出ますね。「やらない社長が登場した」って。そこまで、やるべきことを決めて、引き継いでいけるかどうかが会社の実力なんだと思います。一代での社長の私の力なんか知れたものですよ。それをレベルアップしていって、どこまで高めていけるか。そういうものが何か残っていると高まっていくんですけど、よく二十年くらい社長をやって、「あの人は正しくあの会社を創り上げた」という経営者で、その人が居なくなってみたら何も残っていない。それはオーナー経営者の段階ではいいですけど、我々のような二兆円規模になってくると、なかなか長続きできないですね。
▼その他記事検索
カスタム検索
トップページ < ご挨拶 < 会社概要(筆者と会社) < 年別投稿記事/2009年
この記事へのトラックバックURL
この記事へのコメント
こんにちは!東工大セミナーでご一緒させていただいた明治大学荻山武士です!
ご連絡が遅くなり失礼しました。
先日はためになるお話をありがとうございました!
ご連絡が遅くなり失礼しました。
先日はためになるお話をありがとうございました!
Posted by 荻山武士 at 2009年11月20日 11:41
荻山さん
こんにちは、堀です。
当日はお疲れさまでございました。(礼)
当日は駄話に終始したにもかかわらず、お心遣いに富むコメントをありがとうございます。(礼)
該当のブログ記事に不肖の私の名前を記していただき、感謝に絶えません。(感涙)
ついては、該当のブログ記事にトラックバックさせていただくと共に、荻山さんと愛する彼女さんの輝ける未来を祈念申し上げます。(敬礼)
こんにちは、堀です。
当日はお疲れさまでございました。(礼)
当日は駄話に終始したにもかかわらず、お心遣いに富むコメントをありがとうございます。(礼)
該当のブログ記事に不肖の私の名前を記していただき、感謝に絶えません。(感涙)
ついては、該当のブログ記事にトラックバックさせていただくと共に、荻山さんと愛する彼女さんの輝ける未来を祈念申し上げます。(敬礼)
Posted by 堀 公夫 at 2009年11月21日 07:40