2010年10月26日

Mさんからバースデーメッセージを頂戴し、「月島慕情/浅田次郎さん(著)」を読むの巻

昨晩、私は、「月島慕情/浅田次郎さん(著)」を読みました。
先週、約20年の付き合いになるMさんから、以下のバースデーメッセージを頂戴したからです。
【Mさん】
お誕生日おめでとう
平穏無事もいいけど、波瀾万丈もいいね。
堀さんにとってよい1年になることを祈ってます。

【堀】
お心遣いありがとです。
波乱万丈なこと、なんで知ってるの?(笑)

【Mさん】
え?波瀾万丈なの??
いやはや、人って神社なんかでは平穏無事を祈ったりするけど、それって何かを得る機会(経験)も少ないってことだし、平穏無事も良し悪しだなって感じるからそう言ったんだよ。
私は努力はするようにしてるけど、たいして苦労もしないで要領の良さだけで生きてきたようなもんで、最近やっと人間になり始めたような気がするんだ。
と、そう感じた時に読んだ浅田次郎の本にもちょうど「あたしやっと人間になれたよ」ってセリフがあってね(笑)。
そういう悟りのようなことを君にも言ってみただけ(笑)

私は、Mさんが選好するのはもっぱら「平穏無事の人生」で、「波乱万丈の人生」はあり得ない、と思っていました。
なので、Mさんに「波乱万丈の人生もアリだ!」と悟らせた「月島慕情」に興味を抱いたのでした。

「月島慕情」の主人公は、ミノという女性です。
ミノは、幼くして女郎として買われ、東京に連れて行かれました。
ミノは、巳年生まれにちなんで命名された「ミノ」という名前が嫌いで、家を離れる時、牛や馬のそれと同じだと思いました。
ミノは、楼主から由緒ある「生駒」という源氏名を授かりました。
ミノは、やっと牛や馬ではなく人間になれたように感じ、有り難さから落涙しました。
ミノは、三十の齢を重ね、名実共に年増女郎になりました。
ある日、ミノは、御贔屓の一人である時次郎に見初められ、正妻としての身請け話を授かります。
時次郎は、月島界隈では一目置かれる人となりの持ち主で、ミノのことを心底愛していました。
ミノも、そんな時次郎のことを愛していましたが、それ以上に現状の苦界から這い上がれる幸運をとても嬉しく感じました。
ミノは、嫁入り修行中、ふと時次郎に会いたくなり、時次郎の家へ出向きました。
ミノは、この時、時次郎の事情を知ってしまいました。
時次郎には妻と育ち盛りの子供が居り、子供は経済的理由から食事が満足に与えられていないこと。
自分が時次郎と所帯を持った暁には、彼らは離縁させられ、実家の新潟へ戻らなければいけないこと。
ミノは、「世の中には、きれいごとなどひとつもない。だったら、自分がそのきれいごとをこしらえるってのも、悪くないかな」と思いました。
ミノは、殺しても殺しきれない女衒の卯吉に自分の宿替えを願い出て、時次郎に気づかれぬよう自らの手で身請け話をご破算にしました。
ミノは、「自分にふさわしい幸せは、奈落のそこの幸せなのだ」と思いました。
ミノは、次の源氏名を「美濃」に決めました。
身請け話を授かった後の唯一のデートで、時次郎から「ミノ」と呼ばれ、いい名前だと思えたからでした。
ミノは、時次郎が家族とやり直してくれることを祈念しながら、以下思いました。

ありがとね、時さん。
あたし、あんたのおかげで、やっとこさ人間になれたよ。
豚でも狐でもない人間になることができた。
大好きだよ、時さん。
あたしにお似合いなのはあんたじゃなくって、あんたの思い出です。

たしかに、ミノの人生は波乱万丈です。
しかし、ミノは波乱万丈の人生を全うする中、時次郎と出会い、借金を背負ってでも、家族を捨ててでも、自分と所帯を持ちたいと請われました。
ミノは、心身共に汚れ切り、家畜の呼称のような名前しかない自分が、衆人に一目置かれる人物から、生まれて初めて愛すべき女性として、人間として見られたのです。
ミノの波乱万丈の人生は、客観的に見れば不幸かもしれません。
けれど、かけがえの無い経験が一度できたミノからすると、さほど不幸ではないのかもしれません。
私は、今春の唯一真剣に視聴したテレビドラマ(笑)「mother」の中で、田中裕子さん扮する母親が死を前に松雪泰子さん扮する娘へ以下話しかけたシーンを思い出しました。

一日あればいいの、人生には一日あれば。
大事な大事な一日があれば、それで十分。

正直なところ、私は、時折、自分の波乱万丈の人生に懐疑を抱くことがあります。
しかし、波乱万丈の人生とはいえ、大半はミノとは異なり自分が積極選択したものです。
それに、もっと波乱万丈の人生を送っている人が、山のようにいらっしゃいます。
私は、「きれいごとをこしらえられること」や「かけがえの無い経験」や「大事な大事な一日」や「人間になれること」を信じ、波乱万丈の人生を今後益々積極選択したいと思います。
Mさん、有意義かつ励みになるバースデーメッセージを本当にありがとうございました。(敬礼)


※追伸
本記事をお読みくださったMさんから、以下のメールを頂戴しました。

浅田次郎としか言ってなかったのに『月島慕情』までよくたどり着いたね!
堀さんのブログ読んで、また泣いてしまった。
会ったら話すよ。


月島慕情 (文春文庫)
浅田 次郎
文藝春秋
2009-11-10




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